見出し画像

Jien Takahashi × Kelly SIMONZ MAJUSTICE 1st アルバム「Ancestral Recall」発売決定記念 12,000字超え対談インタビュー(後編)

(後編)

YG : 続いては「Ancestral Recall」にはJienとKellyさんに加えて、ティモ・トルキがソング・ライターとして参加していますが、ティモの楽曲に関するエピソードを教えてください。

J : 元々前身企画の段階からトルキは参加していてくれて、MAJUSTICEの初期段階まで関わってくれたんですが、彼の曲が必要だと強く感じてトルキへ楽曲制作を打診したところ、“Sonata Black”、“Dangerous”、“Infinite Visions”、“You Rock My World”という4曲を授けてくれたんですね。
僕はミュージシャンとしての彼を本当に尊敬しているし、これらの4曲は、ティモ・トルキという人物の作る音楽を知る人なら必ず共感出来る要素がありますよね。40年近いキャリアがあるにも関わらず、未だに一聴してトルキの楽曲だとわかる曲作りを続けられる彼の才能は本物だし、全く衰えてないですね。なによりティモ・トルキの楽曲を、Kellyさんやユーリやヴィタリとレコーディングするという機会を実現出来たことは、本当に良かったと思っています。

YG : ティモ・トルキのお話をJienから聞けたところで、今度はKellyさんから“Now Your Turn”と“Infinite Visions”に参加したマイク・ヴェセーラの印象をお伺いしたいと思います。

K : やっぱりLOUDNESS時代の衝撃ですよね。マイクが加入したときの感動は凄まじかったですね。LOUDNESSを脱退した後に、イングヴェイのバンドに加入して、今までイングヴェイが共演してきたシンガーとは違った、ヘヴィ・メタル然としたスタイルで“Never Die”を始めとした名演を生み出してきて…。だから最初にマイクとの共演の話をJienから頂いたときは、マーク・ボールズとのツアーから日も浅かったし、このままイングヴェイのシンガーを制覇出来るんじゃないかと。(笑) そんなマイクに自分の曲を歌ってもらえるというのは、本当に嬉しかったですよね。
実は“Now Your Turn”という楽曲は、2000年にMARQUEE AVALONからヴィタリ・クープリとの活動を打診された際に書き下ろした楽曲だったんです。23年もの歳月を経て同じ話が、マイク・ヴェセーラという強力なシンガーを得て、よりゴージャスなサウンドになって実現した…それも23年前と同じMARQUEE AVALONからリリースできるとは、続けてこないと実現出来なかったことだよね。

だから僕は30年近くかかりましたから、Jienもここからの30年…そのとき僕はこの世にいないかもしれないけど。(笑) 30年後も僕ら二人とも同じようにギターを弾いていたら、未来のメタバース・メタルフェスにMAJUSTICEとして出ましょう… AIケリー・サイモンとして(笑)

YG : (笑) そういうキャラクターの個性が立ってるギタリストだからこそ受け継がれていくわけですよね!

K : やっぱりオンリーワンの個性だよね。“Temple of the Divided World”や“Now Your Turn”という名曲の存在自体も大事だけど、それを誰が演奏するかが重要なんですよね。僕らより上手にこの2曲を弾く人は、これから沢山現れますよ。でも、そこじゃないんだよね。

“Now Your Turn”に関しては、一番最初に出した僕自身が歌ってるものや、マーク・ボールズが歌ったものもあるけど、今回はヴィタリ・クープリに加えてマイクもいる。そこにJienの7弦ギターが加わって名曲に新たなる命が、吹き込まれたなと感じています。

YG : “Now Your Turn”は大好きな楽曲なので、ケリーさんの思いを聞けて嬉しく思います。こちらのアルバムではKelly SIMONZ's BLIND FAITHのメンバー陣の他に、ヴィタリ・クープリがメンバーとして全曲参加していますが、加入への経緯と印象を教えてください。

J : 田中康太郎君と僕が元々活動していたバンドがありまして、2020年頃にEPを制作していたんですが、レコーディングの最中にキーボーディストが脱退してしまったんですね。レコーディングしていた曲は難易度の高い曲ばかりだったので、レコーディングの途中から合流して高難度の楽曲を弾きこなせる人が思い当たらず凄く困っていたんです。

そんな時にバンドのシンガーとの談話でヴィタリ・クープリの名前が挙がりまして、僕もヴィタリのソロ・アルバムはよく聴いていたので妙案だと考えて、ダメ元でデモ曲を添付して加入の打診をしてみたところ直ぐに返信があり、それから直ぐにヴィタリ本人から電話を頂きまして。(笑) 電話で話してみたらヴィタリは僕の楽曲やギターに凄く共感をしてくれたようで、二人で意気投合して活動を続けていたんですね。

そんなある日MAJUSTICEの母体になるバンド化計画が浮上した際に、彼へ「Kelly SIMONZとか知ってる?」ってかまをかけたんです。(笑) そしたらヴィタリは興奮した様子で「おい!Kelly SIMONZがいるのか!?俺は彼の大ファンなんだよ!!お前とKellyが一緒にやるなら俺がいないのはおかしい!!」と、答えを聞くまでもなく即答で加入が決まりました…。(笑)

K : 僕に関しては先程も話したように“Now Your Turn”という楽曲はヴィタリと演奏するということで、初めてピアノに重きを於いて作曲したんです…が、23年の歳月を経たヴィタリはそのイメージをぶち壊すように…。(笑) 彼もまた超絶な進化を遂げていて、23年前より圧倒的に芸術的なプレイヤーになっていて物凄くびっくりしました。狂気に満ちたあのニュアンスは、ヴィタリにしか出せない空気感だよね。

J : 特に日本盤ボーナス・トラックであるユーリ・サンソン版 “Now Your Turn”には彼からのメッセージも込められていますからね…。(笑)

そして特筆すべき話としては、ヴィタリのレコーディング初日当日の現地時間早朝に彼から電話があって、出てみたら今までにないほどナーバスな様子だったので話を聞いたら、実母が亡くなったと告げられて。それを聞いた僕はレコーディングの延期を強く勧めたのですが、ヴィタリは 「この数年間はJienも大変な思いを沢山してきたし、お前は死ぬ気でこの作品を作ってるだろ!俺もお前と同じようにこの作品に命をかけて取り組むんだ!」と言い残してその日のレコーディングを決行したんですよね。その熱意って…本当の意味で心が通い合っていて、音楽への愛がないと絶対に出来ない行動だと、感動と感謝の気持ちでいっぱいになりました。ヴィタリ・クープリは、今回の作品に於いて絶対的に必要な存在だったと強く思っています。

MAJUSTICEのキーボーディストを務めるヴィタリ・クープリ

YG : ヴィタリの人柄に触れられる貴重なお話をありがとうございます。続いては今回のレコーディングで苦労した点、もしくは一番力を注いだポイントをお伺いしても宜しいでしょうか?

K : 僕は考えれば考えるほど煮詰まるタイプで、聴いた瞬間にすぐレコーディングを開始するタイプで、あまり録り直しをしないようにしています。だけど今回Jienの曲に関しては、彼のプレイがかなりキッチリしてるので、僕もある程度タイトになるように務めました。

僕らは速弾きギタリストとしてカテゴライズされる事が多いけど、真髄はリズム・ギターにありますからね。“Dangerous”のギター・ソロでは、僕には珍しくワウペダルを用いたハーモニーのあるギター・ソロを弾いたり、楽曲を活かすような、コンパクトだけど印象深いアプローチを残すという部分にはかなり気を遣って取り組みました。

YG : それではJienが苦労した点などはありますか?

J : 康太郎君とヴィタリ以外のメンバーは全員初めて音を出すミュージシャンだったので、レコーディングを進めながらそれぞれの雰囲気を推し計って、ドラムのYosukeさんやベースのKazさんが送ってくるトラックに順応するように、自身のサウンドやギター・プレイのアプローチを工夫したことをよく覚えています。そういったYosukeさんやKazさんから受けた印象は、自分のレコーディングを経て、ヴィタリやユーリにレコーディングを始めてもらう時にも、解釈は丁寧に擦り合わせをしていましたね。

メンバー皆、人種も国籍も違うし、年齢差もかなりある面々が揃っている中で、一体感を生み出す為にコミュニケーションをマメに取りながら、自身のギタリストとしての職務を全うするという役割をやってみると、刺激や発見も多く制作中は苦労に感じませんでしたが、今思うとかなり過酷な作業をやってきたんだと我ながら思います。

YG : MAJUSTICEは参加者全員の個々の色が凄く強いし、メンバー・リストを見ると圧巻に感じますが、Jienの話を聞くとかなり過酷な制作だったんだなと理解しました。続いては、そんな作品に彩りを齎したお二人がギタリストとして、影響を受けたギタリストを教えてもらえますか?

J : 5人好きなギタリストを挙げるとするならば…まず僕はマーティ・フリードマンさんがとにかく好きで。今回のレコーディングでも、マーティさんが実際に使われていた機材をメインに使用するほど熱狂的に崇拝をしています。高校時代は四六時中イングヴェイ・マルムスティーンを研究していたので、今でもピッキングの方法や左手の使い方など身体の使い方は、イングヴェイを参考にしている部分はかなりあります。ここ数年だと音使いや速弾きのアプローチなどは、ジェイソン・ベッカーの要素を取り入れられるように工夫をしていました。

後はご本人を前にして述べるのも恐縮ですが… チョーキングとビブラートや一本弦の速弾きなどは、どう考えてもKellyさんから影響を受けまくってますよね。その他にも多弦ギターやモダンなプレイに関しては、SCAR SYMMETRYやNOCTURNAL RITESのペア・ニルソンからの影響は非常に大きいですね。

YG : 影響を受けたギタリスト群としてKellyさんが挙がるというのが興味深いですよね!

J : どう考えても受けた影響は絶大ですからね!

K : そこまで僕の事を言ってくれるギタリストはADAGIOのステファン・フォルテ以来ですよ…。(笑) でもJienのギターを聴くまではルーツをよく知らなかったから、最初に聴いたときは「あれ、なんだこのコブシの効いたギターは…」と感じて、レコーディングが終わった後に話を聞いて納得したよね。

YG : SCAR SYMMETRYの名前が挙がったのは凄く意外に感じました。続いてKellyさんは如何でしょうか?

K : 僕の世代は本当に好きなギタリストを言わない世代なんですよ。(笑) でも、僕の世代はもれなくYOUNG GUITARの表紙を飾るようなギタリスト達に影響を受けているんだよね。中でも僕はある雑誌の取材では、愛機としてイングヴェイ・マルムスティーン・モデルを紹介してしまうほど、彼からの影響は露骨なほど公言してきましたね。

それと僕は、実兄がLOUDNESSの曲を練習している姿に憧れた事がギターを始めるキッカケになったので、高崎晃さんからの影響は絶対外せないですね。イングヴェイに関しては、彼のソング・ライティング能力の高さやトーンの良さに強く影響されたし、高崎さんからはリフ・ワークやソリッドなニュアンスはかなりインスパイアされました。

渡米後はブルース・ギターばかり弾いていたので、スティービー・レイ・ボーンからの影響も強いし、その流れで言うならシンガーとしてもギタリストとしてもソングライターとしても、ゲイリー・ムーアからの影響は凄く受けました。

しかし今までは良くも悪くもイングヴェイからの影響を露骨にアピールしすぎたからね…。Jienやマーク・ボールズと活動するにあたって、今年からはイングヴェイを連想させる要素は見直しています。やはりJienはいくらマーティが好きだって言っても独自のスタイルを築く大切さに早くから気づいて取り組んでいたからね。でもイングヴェイのやってきた事は素晴らしいし、彼の楽曲はこれからも演奏し続けます。これはクラシックの世界でパガニーニの楽曲が演奏され続けるように、後世へ伝承していかないといけない音楽だと僕は思いますから。

YG : やはりミュージシャンとして独自のキャラクターを確立する事は、芸術を継承する目的でもとても大切ですよね。

K : 個性が際立つ事はなによりも一番大切ですよ。これから2,30年後に現われるAIケリー・サイモンもいますから…。(笑)

YG : それでは改めて、お二人がソングライターとして影響を受けたミュージシャンを教えてもらえますか?

J : これもまた5人に絞ったほうが、話がしやすいんですが…。

YG : ギタリストの5人からまた変わるんですね⁉

J : はい、一人も被らないと思います。作曲面でいうなら、やっぱり僕の場合はティモ・トルキからの影響抜きには語れないですね。今回のアルバムでも“New Horizon”、“Temple of the Divided World”、“Ancestral Recall”の3曲では、トルキから伝授された方法で作曲をしているし、自分の音楽の骨格となっているのは間違いなく彼が確立した音楽性ですね。

メロディやコードワークに関しては、ロマンシング サ・ガ シリーズの作曲を長年務められている伊藤賢治さんからも影響を受けましたし、同人音楽サークルのlove solfege というグループから受けた影響は計り知れないほど大きいです。

ティモ・トルキの音楽への自己解釈やアレンジの面では、MARQUEE AVALONのレーベル・メイトでもあるTIME REQUIEMのリチャード・アンダーソンと、IRON MASKのギタリストを務めるダッシャン・ペトロッシの二人はかなり参考にしています。

K : まさに今の時代を象徴するようなルーツですね…同人音楽時代ですよ。やはりUnlucky Morpheusの活躍以降は、オタク・カルチャーとヘヴィ・メタルの融合は当たり前になっていったからね。僕が活動を共にしていたシンガーのYAMA-Bも同人音楽には誰よりも早く進出していましたね。その彼は僕が自主制作でリリースした「Sign of the Time」に触発されてGUNBRIDGEでの活動を初めてコミック・マーケットへ参加を始めたんだよね。

YG : ケリーさんからは先程ゲイリー・ムーアからのソング・ライティング面での影響もお伺いしましたが…。

K : ゲイリーは、自分で歌っても他の人に歌わせても良い曲を書けるし、メタル・バンドはバラードで売れる事もよくあった時代に良い曲を作り続けられたゲイリーからは、かなり影響を受けました。

そして僕は、ネオクラシカル・メタルという意味ではイングヴェイからの影響は作曲面でも凄く色濃いんですが、ある時にイングヴェイはキーボーディストに恵まれていたということに気づいたんですよ。特にマッツ・オラウソンが在籍した時期のイングヴェイのアルバムは、めちゃくちゃゴージャスなんですよね。それに気づいてからは、イングヴェイとゲイリーは別格として、キーボーディストをよく聴くようになりました。JOURNEYのジョナサン・ケインとかCHICAGOとか…。

ロスに行ってからは、デビット・フォスターの曲作りやアレンジをかなり研究したし、アメリカ時代は、ジェイク・レドンというスタジオ・ミュージシャンに凄く影響を受けました。“Silent Scream”は彼にインスパイアされて書き上げた楽曲なんです。その他にも僕は、元々STINGやPOLICEも大好きだったし、シンガーでいうなら今でもスティービー・ワンダーとスティングは圧倒的に好きですね。

そういう側面があるからメタルじゃないアレンジも僕は出来るし、それこそが僕というミュージシャンの強みだよね。それに加えて本物のクラシック音楽からの影響もあります。高校の頃にバロック音楽はほぼ全部聴きました。バッハの楽曲は聴けば聴くほど理解が深まるし、その点ではイングヴェイが聴いていないようなマニアックなクラシック音楽もかなり聴いて研究して、自分の音楽にも取り入れています。

YG : なるほど…そうだったんですね。Kellyさんのルーツは、ギタリスト由来のものかと今まで考えていました。

K : ギタリスト由来の影響はイングヴェイだけで十分なんですよ。(笑) 僕が目指したのは、スタジオ・ミュージシャン的な側面をイングヴェイに加えた存在でしたからね。

YG : 貴重なお話を本当にありがとうございました。いよいよインタビューも終盤となりましたが、リリースに向けた今後のMAJUSTICEの予定についてお聞かせください。

J : 先日1stシングルとしてリリースされた“Temple of the Divided World”に続いて、発売までに後2曲ほどシングルを発表する予定です。2月には多くの人が早く聴きたいと待ち望んでいるであろう楽曲を、先駆けて公開したいと考えております。アルバム発売までに後数ヶ月(2023年1月11日)ありますが、飽きさせないように色んなコンテンツを発信していく予定なので、楽しみに待っていてください。

K : 僕も今回思い入れのある楽曲をいくつか提供させてもらったし、なにより豪華なメンバーが揃っていますからね。ヴォーカルだけでも3人いるし、ソングライターも3人いますから。一切無駄な曲はないという仕上がりになっていますから、アルバムは勿論シングル・リリースなど今後の展開を期待していてください。

YG : ありがとうございました! 最後にファンへメッセージをお願いします!

J : 長きに渡るヘヴィ・メタルの歴史の中でも相見える事のなかったメンバー陣を、日本主導で揃えて作品を作り上げることができました。今後パワー・メタルの歴史が紡がれていく中でも、こういった内容の作品が作られる事は無いんじゃないかと確信しております。バンドの1stアルバムがリリースされるということは、一生に一度しかないことだし、皆様もこのアルバムが発売されるまでの時間を、この歴史的な出来事の参加者として"歴史の証人"として楽しんで頂けたらな…と思っています。

K : 僕が自主制作で、「Sign of the Time」を発売してから2023年が25年目になります。

僕もまたお待たせしすぎたかもしれませんが…。(笑) 今が一番大事だし常に全力でやってきましたから、後少しの間だけ待って頂けたら僕も"歴史の証人"として参加をしたアルバムが発売されますので、これは寝ないで待てとは言いませんが、耳をクリアにして発売まで楽しみにしていてください…!

対談取材中のKelly SIMONZとJien Takahashi




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?