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「最終的に重要なのは自分の心が求めているものを楽しんでいるかどうかだ」-マルコ・ミンネマン(THE ARISTOCRATS)インタビュー

-残念ながら昨年のTHE ARISTOCRATSの日本公演は延期になってしまいました。『YOU KNOW WHAT...?』に伴うツアーで延期になってしまったのはアジア地域だけでしたか? それともその後もツアーを続ける予定があったのですか?

マルコ・ミンネマン: そうだね。延期しなくてはならなかったのはとても不幸な出来事だった。アジア、東南アジア、南米を延期せざるを得なかったよ。願わくはツアーに戻ってリスケジュールをしたいんだけどね。

-パンデミックの間もレコーディングやオンラインでのセッション等、ドラムをプレイする機会が多かったと思いますが、ライヴ・パフォーマンスができないことにフラストレーションは溜まりませんでしたか?

マルコ: 確かに僕は自分のホーム・スタジオを持っていて、作曲やレコーディングが大好きで、スタジオ仕事もしている。ツアーに出ていることが多かったから現実的にたまにはステイホームすることを楽しんだよ。でも勿論、いつかはまたツアーに出たいと思っている。

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-THE ARISTOCRATSとして配信ライヴを行なう予定はありませんでしたか?

マルコ: それについて一度も話し合ったことがないんだよ。何か良いアイデアがあれば教えて欲しいね(笑) 良いアイデアならやってみる価値があるからね。

-『FREEZE! LIVE IN EUROPE 2020』はスペインでの3公演からセレクトされたテイクで構成されていますが、スペイン公演を選んだ理由は何かあったのですか?

マルコ: 背景に必ずしも秘話や計画があったわけではないよ。たくさんの公演を録音した中で、たまたまスペイン公演が素晴らしいサウンドで録音できていて、再現する価値のあるパフォーマンスがあったからなんだ。

-今回は6曲入りですが、フルレンス・ライヴ・アルバムにしなかったのは何故ですか? また“Get It Like That”を除いてすべて『YOU KNOW WHAT...?』の楽曲なのは『YOU KNOW WHAT...?』に伴うツアーのライヴ・アルバムだからという理由ですか?

マルコ: 収録されたどの曲も10分前後かそれ以上の長さであることを考えると充分にフルレンス・アルバムだと言える。60分以上あるし通常のスタジオ・アルバムよりも長い。そして、そうだね。僕たちには既に他のライヴ・アルバムがあるし、このアルバムは最新作の曲をフィーチュアしたものだ。

-『FREEZE! LIVE IN EUROPE 2020』のハイライトとして“Get It Like That”が挙げられると思います。ニール・パートに捧げる“Tom Sawyer”や“YYZ”といったRUSHの楽曲のリズムを組み込んだドラム・ソロはこのスペイン公演から始めたのですか?

マルコ: そうだね。ニールが亡くなった直後だったから、愛と敬意を込めて彼の伝説的で遺産でもある幾つかのトレードマークとなっている部分をドラム・ソロに加えることが適切だと感じて、そうすることにしたんだ。

-ニール・パートとは面識があったのですか?

マルコ:あるよ。DW Drumsでバッタリ会ってね、ツアーのことやドラムの演奏のこと旅の話などで盛り上がったんだ。彼は本当に素敵な人で彼と会えたことに感謝している。この瞬間をいつも宝物のように思うよ。

-同じドラマーとして、あなたにとってニール・パートとはどんなドラマーでしたか? あなたが影響を受けた点やあなたが思う彼のプレイの優れた点とユニークな点を教えてください。

マルコ: ニールは優れた演奏に加えて素晴らしい作詞家でもあった。演奏面ではアイデアが重要なんだ。彼はとても思慮深いドラマーで自分のパートやフィルを細かく、そしてフックを持って構成して、観客もそれに合わせてエアドラムするような、そんな人物だった。さらに彼は冒険心も強くて新しい楽器やサウンドを試すことを躊躇しなかった。

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-アルバムのジャケットは昨年発売されたあなた達のレゴも使われていてとてもかわいいですね。THE ARISTOCRATSのアートワークはいつもファンの目を楽しませてくれますが、アートワークのコンセプトはいつも誰が考えているのですか?

マルコ: 僕の記憶が正しければ、今回は(アートワークを担当した)トム・コルビのアイデアだったと思う。イタリアの素晴らしいアーティストであり人物だ。数年前にトムのことを知って、僕のソロ・アルバム『SYMBOLIC FOX』のアルバム・ジャケットを手掛けて貰って以来、僕たちの協力関係と友情は様々なバンドのカヴァー・アートのプロジェクトで続いている。

-THE ARISTOCRATSはユーモアのセンスも素晴らしいですが、バンド内での会話でも、いつもユーモアが溢れているのですか?

マルコ: 時にはそうだね。ツアー中はもちろん、スタジオでのレコーディング中でもクールでおもしろい瞬間をたくさん経験している。だからアルバムのタイトルや曲名の多くが実際にツアーであったことから来ているんだ。クールなことだよ。

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-ガスリー・ゴーヴァンとブライアン・ベラーについて、ミュージシャンとして、人として、あなたにはどのように映っていますか?

マルコ: そうだな。言うまでもなくガスリーもブライアンもとても素晴らしいミュージシャンだ。僕たちの音楽的なケミストリーはほとんどテレパシーのようなものなんだ。2人とも性格的には全然違う。ガスリーと僕はショウの後のパーティーやお酒が大好きだ。ブライアンもそうする時があるけれど、実際にはとても仕事に集中していてビジネス面にも気を配っている。これはとても重要でありがたいことで彼のおかげでガスリーと僕は酔っ払うことに集中できるんだ(笑) 冗談だよ……多分ね!(笑)

-THE ARISTOCRATSの次のスタジオ・アルバムの構想はもうありますか? 曲作りはもう始めているのでしょうか?

マルコ: いや、まだだ。ガスリーとブライアンはツアーが決まっているし、僕は親友であり素晴らしいミュージシャンのランディ・マクスタインと新しいバンドをやっていて、彼とは去年2枚のアルバムを出して、次のリリースとツアーに向けて取り組んでいるところなんだ。

-THE ARISTOCRATSのスタジオ・アルバムであなたは常に3曲の作曲をしていますが、作曲のインスピレーションはどこから湧いてくるのでしょう?

マルコ: そうだね。僕たちはスタジオ・アルバムにいつも9曲収録していて、それぞれを3人で均等に分担している。インスピレーションについては普段はアイデア等が天から降りてくるのに任せているんだ。良い感じのリフやグルーヴが生まれたら曲を書き始めて、それをどの方向に向けるかを決める。歌詞のある曲かもしれないしインストゥルメンタルかもしれない。インストゥルメンタルの場合だと通常はTHE ARISTOCRATSに使うね。

-あなたは日本のミュージシャンのレコーディングへ参加したり、先日は坂本龍一へのトリビュートで“Tong Poo”をプレイした動画をアップロードしたりと日本との接点も多くありますが、日本の音楽シーンにも興味をお持ちなのですか?

マルコ: 僕は日本の音楽シーンが大好きだし実際日本のこと全般が大好きなんだよ。日本へ引っ越すことも容易いことだ(笑) 多くの親しい友人がいるし日本の文化や自分が育んできた友情をリスペクトしている。いつも戻りたいと思っているんだよ。

-今注目している日本のバンドやアーティストはいますか?

マルコ: クールなアーティストがたくさんいるよね。坂本龍一はもちろん、彼のバンドYMOも大好きだ。伊藤潤二(漫画家)も確かに興味深いアーティストだ。浜田麻里とも僕が参加してから2枚目となるアルバムで仕事をしている。素敵な人物であり友人なんだ。このようなアーティストとの友情をいつも大切にしている。

-着ているTシャツからもあなたが漫画等の日本の文化がお好きだと感じるのですが、あなたがお好きな日本の文化について教えて頂けますか?

マルコ: ハハハ(笑) そうだね! 先ほども答えたように僕は日本のアートが好きなんだ。僕が最も楽しんでいるのは、日本の文化はお互いに敬意を示すことが多くて僕はそれをとても評価している。礼儀正しくて、無私無欲で、感謝の気持ちを忘れず、順応性がある、そういうところなんだ。こういったことは長続きする友情を作る材料になる。日本で作ったすべての友達は僕の人生に残るんだ。

-あなたは多岐にわたるジャンルでドラムをプレイしていますが、あなたを構成する、ドラマーとして影響を受けた3枚のアルバムを挙げるとしたら、どの作品になりますか?

マルコ: QUEEN『NEWS OF THE WORLD』、LED ZEPPELIN『HOUSES OF THE HOLY』、そしてKISS『ALIVE』だね。

-また、あなた自身がプレイしたアルバムも多数発表されていますが「マルコ・ミンネマン」を紹介するのに適した、最近あなたのファンになった方へお勧めしたいアルバムを3枚挙げるとしたらどの作品になりますか?

マルコ: 難しい質問だ。あまり深く考えずにぶっつけ本番で考えると、僕のソロ・アルバム『SCHATTENSPIEL』、MCSTINE & MINNEMANNの『II』、そしてTHE ARISTOCRATSの『YOU KNOW WHAT...?』かな。

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-あなたがドラマーとして、ミュージシャンとして、今後挑戦したいことは何かありますか?

マルコ: 僕は本当に自分が情熱を持っていることをしているだけなんだ。僕にとって意味のある、そして願わくは宇宙にとって意味のある音楽を作ることさ。次に何が来るかを考えながら座っているわけじゃない。僕は常にクリエイトすることを楽しんでいるし、僕や僕のフォロワーが気に入ってくれることが起きれば、それが僕の続ける理由になるんだ。

-あなたに憧れる若いドラマーも多くいます。将来あなたのような素晴らしいドラマーになることを目指している若いドラマーへアドバイスを送るとしたらどんなことでしょう?

マルコ: そう言ってくれてありがとう。僕は音楽を楽しんでいるだけだ。アドバイスとしては、自分のやっていることを信じて、好きなことをやり続けること。そうすれば君の声は必ず届くからね。

-このコロナ禍に於いて思うように活動ができないミュージシャンも多いですが、このような困難な時期にアーティストがするべきことは何だと考えますか?

マルコ:ミュージシャンとして常に創造性は与えられているよね。家で作曲や演奏をするのか、それともツアーで演奏をするのか? 最終的に重要なのは自分の心が求めているものを楽しんでいるかどうかだ。自分の内側に入り、リセットボタンを押して、アイデアを出したり発展させたりするには最適な時期だと思うよ。曲を書いて、演奏して、創造性と愛を楽しむんだ。

-冒頭にも話しましたが、昨年の日本公演が延期となり残念に思っている日本のファンも多くいます。日本のファンへぜひメッセージをお願いします。

マルコ: すぐに会おうね! これは終わりではなく単に一時的なものだ。愛してるよ。

*日本盤は5月26日発売*
THE ARISTOCRATS / FREEZE! LIVE IN EUROPE 2020
MICJ-10003 ¥2,970(税込)
<ジャズ/フュージョン>


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