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「ブラックアダム」ただの"アンチヒーロー"ではない

 「THE BATMAN -ザ・バットマン-」や「ジョーカー」といった路線が好きな人も分かるけど、僕はこういうマッチョイズムなDC映画も好き。どんどんやってほしい。



 ザ・ロック様ことドウェイン・ジョンソンによる筋肉映画(いつもの)。ついにはアメコミ界に参入…と言いたいけど実はドウェイン・ジョンソンがブラックアダムを演じるというのは何年も前からニュースに上がっていた。いつからかは覚えてないけど、最低でも「シャザム!」(2019年公開)より数年前から話題はあったはず。詳しい人に聞いてみてください。



”アンチヒーロー”ということ

 ヒーロー映画の一作目というのは、"なぜその力を得たのか=HOW"、”何を信条としているのか=WHY”、”何と闘うのか=WHO”といった、それぞれそのヒーローのアイデンティティがどういったものなのか、の自己紹介がある程度必要とされる。
 ブラックアダムは5000年前のカーンダックという国で魔術師のシャザムから力を授けられヒーローになる。実は本当に授けられていたのは息子の方であり、本人は息子の力を受け継ぎ、その力を復讐のために使い、魔術師から封印されていたということが明らかになる。息子は奴隷解放の先導者として描かれ真のヒーロー(現代にも残る像として)であり、自分は異なると言う。”アンチヒーロー”という言葉はアメコミのみで用いられる用語ではないが、アメコミの中では純粋に人助けを行うだけでなく、復讐や社会通念とは外れた自分の信念のみで動くヒーローのことを指す場合が多い。アメコミ映画としては、近年でいうと「デッドプール」や「スーサイド・スクワッド」などが挙げられるだろうか。ある意味で食傷気味ではあったが「自分はヒーローではない」という言葉の裏を知ることでブラックアダムがただの”アンチヒーロー”でないことを観客は気づく。


”支配”について

 また、現代のカーンダックは何かよく分からない集団に支配されている(表向きはあの石を搾取したりして兵器とか作ってたんだろう)。自国や近隣の国、というよりは白人による支配のため、また特に「ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結」の筋書きと繋げると、「またアメリカか…」と思ってしまった。アマンダ・ウォラーも出てくる為、あながち間違いもなさそうだ。そんな未来の故郷からブラックアダムは支配者を追い出し、国民は彼を大歓迎する。具体的にどれほど悪いことをしていたか(異常なまでにもたもたした検問くらいしか描かれてなかった)よく分からない為、若干違和感を感じつつも、自由を求めていたことが分かる。特にその現代のカーンダックを現してる存在として、息子のアモンがセリフを発し、ブラックアダムと繋げる役割を持つ。
 また、カーダックにおけるブラックアダムの英雄視の対岸に位置する存在としてJSAが登場する。JSAとはジャスティス・ソサエティ・オブ・アメリカというアメリカを拠点とするヒーローチームである。(似た名前でジャスティス・リーグがあるがこちらはスーパーマンやバットマンたちを主軸としてヒーローチームで、映画にもなっている)彼らは名前の通り”アメリカ”だ。上述の通りカーンダックの人々は"アメリカ"を非難し、アモンも「スーパーマンたちは来てくれない」と言う。やはり明らかに意識された設定のようだ。やや「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」と繋がる部分があった。


”DCユニバース”として

 前述のオリジンと繋がるが、今作はブラックアダムのお披露目会だ。しかしJSAというヒーローチームないしはメンバーであるドクター・フェイト、ホークマン、アトム・スマッシャー、サイクロンというヒーローたちのお披露目会も兼ねていた。個人的にはJSA(を映画で観ることができて満足だが、正直DCは詳しくない為、自己紹介をしてもらわないと困る。その自己紹介がブラックアダムも含めて多い為、お腹いっぱいになってしまったが、ブラックアダムという"アンチヒーロー"に対抗した”ど”ストレートかつクラシカル(屋敷の地下から専用の飛行機が出てくるところとか)なヒーローをぶつけることでお互いそれぞれの魅力は伝わった。特にドクター・フェイトの闘い方はすごく絵になるしカッコよかった。また彼の最期はなかなかエモーショナルで良かったと思う。若干、初めて出てきたのに死ぬんか…とは思ったけども。
 JSAという存在に満足も不満もあるのは、昨今のユニバース化に慣れてしまった影響かもしれないと感じた。そもそもが二時間前後といった枠組みで完結するべき、という話もある。MCUはユニバース化として成功したシリーズなのは間違いない。他映画制作スタジオも倣って一時期ユニバース化するという前提の元、何作品か作られてきたがどれも続きには至っていない。そもそもアメコミという題材の(日本の漫画とは異なり)各作の主人公が共通した世界観に存在するという設定がある。同じアメコミ会社のDCもスーパーマン等をユニバース化するのは必ずしも「真似をした」という訳ではない。大々的にユニバースとして映画になったのは「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」(2016年)と「ジャスティス・リーグ」(2017年)のみか。他にも同じ世界を前提とした作品は作られてきたが、大きくお互いにヒーローが関わっている、というよりは個々の作品としてあくまで独立している傾向にある。MCUはもちろん独立を前提にしつつ、ユニバース性はとても濃い。その濃さによる影響を受けすぎているのかもしれない

 しかし、JSAだけでなく既出のヒーロー(エンドクレジットのスーパーマンや似た起源を持つシャザムなど)とブラックアダムの絡みも見てみたい。あくまでも個人の感想ではあるが、そんなことを思った。2022年からジェームズ・ガンがDCスタジオの代表に就任した。今までDCにおけるユニバース作品のことをDCEU(DC Extended Universe)と呼称していたが、正式に”DCU”という名が付いた。2013年の「マン・オブ・スティール」から始まったDCUだが、まもなく10年が経つ。今作のエンドクレジットシーンでもヘンリー・カヴィル演じるスーパーマンが登場した。再び彼が演じるというニュースも最近耳にしたので、ジェームズ・ガン指揮の元、ブラックアダム含めて今後が楽しみである。


まとめ

 ブラックアダムを”アンチヒーロー”としてトレーラーでは告知していたが、しっかりとその裏に”アンチヒーロー”たる理由があり、それが物語の演出や感情と繋がる、ただのドウェイン・ジョンソンの筋肉を楽しむ映画、だけで終わっていない作品であり、またDCUとしても楽しめる故、想像以上に多角的に楽しめる映画であったと思う。



おわり。


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