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「母性」 母を求めて三軒目

 僕は母でも娘でもないので本質的な部分を理解出来ていない気がする。そんな前提。



 原作は未読。湊かなえ原作映画も全部を観れてるわけではないけど「告白」と「白ゆき姫殺人事件」はすごく好きな映画。だから観た、というわけでもないが予告で面白そうだったので鑑賞。想像していた内容とは別ベクトルの生々しさが怖かった


理想を求めること

 映画にはいくつかの”家”が登場する。映画冒頭の”祖母の家”、映画中盤、結婚したあと家族3人で過ごす”理想の家”、終盤の”田所の家”。
それぞれの”家”を移り住む度に”田所”が徐々に増えていき、ルミ子の環境は変化していく。その中でも彼女は”母”を想い自分の理想を守ろうとする。問題はその理想を娘からも守ろうとする様がとても悍ましい
 また父は田所の家から逃げ出す為に祖母の家で不倫を行っていた事実が終盤明らかになる。良い家をつくること、を彼は追い求めていた。ただルミ子とは別の”家”を彼は創っていた。
 義理の妹であるりっちゃんこと律子はそんな”田所の家”から逃げ出す。途中、このエピソードが挟まることで、より登場人物の心情が解りやすく描かれる装置となっていると感じた。
 すなわち、この映画での”家”はそれぞれ、登場人物を縛り付ける装置だ。もっというと登場人物はそれぞれ理想を求め、そして守ることが生きることに繋がっている。


戸田恵梨香が怖い

 また、ダイレクトにフィジカルというよりは、精神的にキツい映画だと思った。細かな要素が絶妙にリアル。食事シーンがそれぞれ印象的。そのリアルさを産んでいるのが演者たちの鬼気迫る演技や演出。戸田恵梨香演じる”母”ルミ子の歳を取る様、ないしは環境が変わり同じく姿も変わる。そして永野芽郁演じる”娘”からの視点もまた異なる。これは予告や宣伝のミステリーさを押した感じは原作小説と重なる部分もあるのでおそらく映画と小説の差もあると思う。
 特に印象的だったのはお弁当を落とす2つのシーン。母の視点からでは手から溢れ落ちたように見えるが、娘の視点では叩きつけているように見える。終盤の「愛してる」というセリフのシーンもあるが、このシーンの戸田恵梨香の演技の差が本当に怖い
 またルミ子が終始固執していた”母”を演じていた大地真央と、終始ずっと最悪な”義母”を演じた高畑淳子、二人の”母”がこの映画の説得力を作り出していた。


まとめ

 女には2種類ある、”母”と”娘”です、というセリフで映画が終わる。この映画のテーマの一つでもありつつ、僕個人は息子でもあるが、母も祖母もいる為、感じる部分はあった。人それぞれの”母”がある。この映画から様々な感想も生まれるのだろうと自分の感想をまとめながら思った。


おわり。

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