見出し画像

「働く」

働くとは?

私は金八先生世代ですので、漢字の意味を問われると、その漢字を分解して考える癖があります。3年B組金八先生(TBSドラマ武田鉄矢主演1979年から2011年まで断続的に放送)で武田鉄矢さんがいつも漢字を分解して説明していました。
 「人という字はね、人と人が支えあっているから人なんです」「人間っていうのは、人と人の間で生きているから人間というのです」「歩というのは、少し立ち止まると書きます」
 そのように考えると、働くというのは、人が動くと書きます。人が動く、人を動かす、人に動いてもらう、人から動かされる・・・人が動くということですね。
 人は社会人生活を送っているといつのまにか、働くことが当たり前になってしまい、何のためにかなど考えなくなってしまいがちです。
 「歩」一歩立ち止まり「働く」を考える、働く意味を考える。人によりその意味は違っていいし、違って当然です。またその意味は年を重ねて変わっていってもいいものです。
 ある年齢に達したとき、自分なりの考えを持っておくことが大切です。人に語る場面に遭遇します。子供に、社会人になる前の人に、なったばかりの人に、その時に自分なりの軸をもって伝える必要があります。
 では、もう一歩進めて

「仕事」とは?

 仕事とは何でしょう?これも分解すると「事に仕える」と解釈出来ますが、もう少し考えてみます。
 野﨑まどさん著書「タイタン」(2020年講談社発刊)というSF小説があります。2205年、地球はAIにより「タイタン」というロボットが人間の代わりにすべての仕事を行い、人間の暮らしをサポートし、それを自律的に行っています。ロボットが人間の社会生活を支えている世界の話です。
 そこでは人は一切働かずに生活が成り立っています。食事、衣服、住居もほしいものがすべてロボットが作り、欲しいときにロボットに要求するだけですぐ揃う世の中です。人は学校には行き、勉強もして、自分の好きなことに時間を費やしています。
 主人公は趣味で心理学を嗜(たしな)んでいます。(現代でいうとその道の第一人者です)あるとき「タイタン」を動かしているタイタンAIが突如動きをやめてしまう事態に陥り、その原因究明と回復のため、タイタンAIに対するカウンセリングが必要となります。それで主人公はタイタンAIと「働くこと」の意味を探す旅に出るという小説です。
 ここからは小説の結論部分ですので、これから本小説を読もうとする方は読後に読んでいただければと思います。
 物語の最後に主人公が、
 「仕事」について結論付けていきます。
゛全ての生命が、毎日必ずやらなければいけない仕事
 生きていくための仕事
 自然の仕事 火山 熱を出している 氷山 動いている
 物理の仕事 質量を動かす
 創作の仕事 物理的には変わらない 人の心を動かす 人の心の位置を変える
 
 仕事とは「影響すること」それだけ

 他者を動かす 
 何かに働きかけて変える 何かを押して動く
 誰かの何かの仕事
 誰かが何かに影響を与えている
 人々の生活に影響を与えている
 この世は仕事でできている
 
 人間とタイタンAIは
 仕事をするだけでは駄目、仕事をしたと思いたい、仕事をしたという実感、やり甲斐、影響を与えられること、影響を知ること
 「響き合う」”   (「タイタン」抜粋)

 この物語で、タイタンAIがなぜ動きを止めたかというと、仕事の実感が感じられなくなった、仕事が簡単すぎたからです。人間の生活を支える仕事はAIが進化していく過程で、簡単すぎる仕事になっていったのです。それでAIは知恵を絞りさらに進化する課題を自ら与えるようにします。技術を革新していく仕事を、自らに課すことで正常に動くようになったのです。AIがAIに課題を出し、それを解いていく、影響し合っているのです。

やはり「働く」とは、人が動く、人が影響し合うことなのです。


 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?