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BUMP OF CHICKENが「PATHFINDER」の中で探したものと見つけたもの

BUMP OF CHICKENはライブで歌詞変えをよくする。
私はてっきり他のアーティストもライブでは歌詞変えをしていると思いこんでいたが、調べてみたところどうやらそうでもないらしい。

BUMP OF CHICKENは、2017年9月から2018年3月という長期間にわたって「PATHFINDER」というライブツアーを行った。このツアーは彼らの歴史上はじめてのアルバムをひっさげないツアーであったことから、新旧織り交ぜた楽曲群からメンバー4人が最もやりたい曲を披露していくという特別なツアーとなった。また、長期間のツアーであったことから歌詞変えの内容が徐々に変化していくという興味深い現象も見られた。今回、この歌詞変えの内容の変化に注目し、「PATHFINDER(探求者)」を通して彼らが何を探して、何を見つけたのか考察してみた。

ここはどこなんだろうね

本編ラストに置かれた”リボン”では以下のように歌われている。

"リボン"
ここはどこなんだろうね
どこに行くんだろうね
誰一人わかっていないけど
側にいる事を選んで 今側にいるから
迷子じゃないんだ

文字通り「ここがどこかはわからないけど、4人で側にいる事を選んで今側にいるから迷子じゃない」という彼らの過去と今と未来を歌った唄である。しかし、この歌詞がツアーの途中で以下のように変化した。

"リボン"
ここはどこなんだろうね
どこに行くんだろうね
誰一人わかっていないけど
側にいる事を選んで 今君の前にいるから
迷子じゃないんだ

そう、4人の唄に「君」が加わったのだ。文字で表すと少しの変化だが「4人で側にいる事を選んで今側にいるから迷子じゃない」という唄に「君」が加わった事で「4人で側にいる事を選んで今君の前にいるから迷子じゃない」という唄に大きく変化した。そして、この視点で他の歌詞変えを見てみると同じテーマを含んでいることがわかった。

探したものと見つけたもの

3月17日と18日にマリンメッセ福岡で開催された公演の2日目のアンコールで披露された”流星群”において以下のような歌詞変えがあった。なお、この公演は1月に藤原がインフルエンザを発症したために延期となった振替公演で、2月10日と11日のさいたまスーパーアリーナで行われたツアーファイナルの続きの公演である。

"流星群"
こんな魔法のような夜に ようやく君を見つけた
たとえ君を傷付けても 探したかった

今日の唄が君に会いたがっていたんだよ
今日の唄が君を探していたんだよ
知らなかったでしょう
ようやく君と出会えた 君に見つけてもらえた
いかなきゃ いかなきゃ

この歌詞変えを聴いた時に、最初に述べた「PATHFINDER」を通して彼らが探したものと見つけたものの答えが歌われたのではないかと感じた。端的に言えば前述の“リボン”で歌われた「君」である。ここであらためて同日の”花の名”の歌詞変えや別の公演の”流星群”の追加歌詞を見てみるとやはり同じ事が歌われている事に気づいた。

"花の名"
顔をあげて 僕らを見て
君に会いに来た 音がある
ここにも


あなただけに 歌える唄がある
あなただけに 救える唄がある
あなただけに 会いたい人がいる
あなただけに 会いたい音がある
"流星群"
忘れないで 君に会いに来た唄があった事 声があった夜

どこからだって帰って来られる

最後に以下の歌詞変え(”Spica”はオリジナル)を見ていただきたい。

"You were here"
そこから伸びた時間の上を歩くよ
全て越えて会いに来るよ
"流星群"
今日の唄が君に会いたがっていたんだよ
今日の唄が君を探していたんだよ
知らなかったでしょう
ようやく君と出会えた 君に見つけてもらえた
いかなきゃ いかなきゃ
"Spica"
どこからだって帰って来られる
いってきます

ツアーの終盤にかけて<会いに来るよ><いかなきゃ><いってきます>という特徴的で繋がりがありそうな歌詞変えが登場した。これらの繋がりから「PATHFINDER」の中で藤原にとってのライブ会場が「行く場所」から「帰って来る場所」に変化したのではという事が想像される。この前提を置いて前述の”リボン”の歌詞変え、そしてツアー後に発表された”望遠のマーチ”を聴くと少し違って聴こえてこないだろうか?

"リボン"
ここはどこなんだろうね
どこに行くんだろうね
誰一人わかっていないけど
側にいる事を選んで 今君の前にいるから
迷子じゃないんだ
“望遠のマーチ”
いこうよ いこうよ
その声頼りに 探すから見つけてほしい
いこう いこう

おわりに

"リボン"の歌詞にあるように<嵐の中をここまで来たんだ><ここはどこなんだろうね>というモードの中、「PATHFINDER」を経て、彼らは<ここ>を見つけたと考察した。そうなると必然的に<嵐の中をどこまでも行くんだ>というのが今のモードと考えられる。今はまだどこに行くのかわからないから<いこう>や<望遠><絶望の最果て 希望の底>など距離を感じる言葉が現れているとも想像でき、これから彼らがどこへ向かっていくのか楽しみである。

そして、もしあらためて再会できた日には心の中で声をかけたい。
最新曲”シリウス”のように<ただいま おかえり>と。

おまけ

“GO”のイントロにおいて、宮城、神戸2日目、福岡1日目では”Danny Boy”のメロディーが歌われたが、埼玉(Blu-ray/DVD収録)や福岡2日目ではBilly Joelの”Piano Man”が歌われているように聴こえる。

“Piano Man”
Sing us a song, you're the piano man
Sing us a song tonight
Well, we're all in the mood for a melody
And you've got us feelin' alright

英語が苦手な人も意味をぜひ自分で調べてみてほしい。
この曲を「PATHFINDER」の締めくくりに引用したセンスに脱帽。

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