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静かに読んでるはずなのに音が聴こえてくるような。

主人公が魅力的過ぎて本屋さんにあった試し読みの小冊子を読んだ後、第1部完結までの10巻を大人買いをした。

BLUE GIANT
たった一人でどこまでも行ってしまいそうな青年がどこまでも行く物語


久しぶりの感覚だった。
ページをめくる手が止まらない涙が止まらない。複雑でどうしようない感情が溢れて溢れて止めれなかった。
感動したことを簡単に、泣いた、泣けるという「涙」で表現したくないと常々思っているがどうしても涙が止まらなかったからしょうがないかと思い、半分諦め状態で悔しいなあと言いながら書いている。

僕はこの主人公の主人公っぷりは相当なもんだと思っている。何も知らずに友人に連れられたジャズのライブで心を打たれ、それからテナーサックスを手に取る。普通に楽器を学び始めるのは遅いと感じてしまう年齢から、世界1のジャズプレーヤーになるためにと学び始める。
色々な人と出会い、その出会いを大切にしながらもその人達に別れを告げ、次のステージへと脇目も振らずにまっすぐに進んでいく。
周りもそれ分かって、ただ、うなずく。
寂しさを感じつつも決して口にせず、応援していることだけを伝えられる強さには憧れてしまう。そして、別れの描写は実際に目の前で繰り広げられているようなリアルさがあって、それを演出する人間味全開の登場人物たち。魅力がたくさんの漫画だった。

ただ悔しい。

読み終わって、いや、最終巻はこの感情をもって読んでいた。
物語の中身でもそう思っていたのだろうけど、実際は帯からかな。
「奇跡のような音、奇跡のようなトリオだった。」
その帯はしっかりと物語の紹介するための文章。
その綺麗な文章からどんな物語を描けばこの紹介をされるのだろうと悔しくなった。
悔しい、嫉妬。どんな風に生きればこれを描けるようになれたのだろうか今までの自分を呪うほど激しいものだった。
第1部を描き上げた作者に悔しさを覚え、現実の厳しさを目の当たりにしながら折れず理想を体現していく主人公に悔しさを覚え、主人公に惹かれながらも反対に現実と折り合いをつけていくその周りに悔しさを覚えた。止まらない悔しさの連鎖だった。

この作品に僕がこのタイミングで出会えたのはとても大きいことだと感じている。努力をすればこの物語の主人公のようになれるとは思わない。実際描かれているのは大成した人物ばかりではない。ただ、でも僕にも努力する価値はまだまだあるのではないかと思わせてくれる物語の漫画だった。

「BLUE GIANT」 石塚真一

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