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絵描きの口腔内事情は複雑怪奇

友人と歯医者さんの話をしながら描いたいたずら描き。
丸めてポイ!と思ったのですが、何だか建設中の歯の内部に見えてきました。
強いてテーマを設けるなら……

「建設中の歯?」


親不知コンプリートとがんばる乳歯

誰しも他人の、しかも口腔内事情など、知りたくもないとは思いますが、聞いてやって下さい。

「先生、親不知が悪さをしているらしく、手前の奥歯が浮いて痛むのです」

ここしばらくこの症状が続いて、疼きのためか、毎夜歯がメリメリと砕ける悪夢を見るという、切羽詰まった状況になってきたので、勤め先の病院に隣接する歯医者さんに、とびこみで診ていただきました。
親不知が、隣の奥歯目がけて真横から突撃しているのは、以前から、かかりつけの歯医者さんに指摘されていたので知ってはいたのですが、どうやら、その隣の奥歯の根を支える骨が消滅しているため、根っこのよりどころを失った歯が、今は必死に親不知の攻撃にたえて、ぐらついている状況、ということでした。奥歯くん、健気だ……
そんなグラグラ奥歯は、いずれ困るだけなので、「抜いちゃいますか!」というレベルらしいのですが、痛みが強い時は麻酔が効き辛いということで、応急処置で様子見になりました。

「先生、私、今まで親不知4本全部抜いたのですけど、親不知って何度も生えてきて厄介ですね、悪さしかしないし」
「?? どういうことですか?」

私は10代後半から20代始めにかけて、全ての親不知をコンプリートし、その後全て抜いたと記憶していました。
当時通っていた歯医者さんで抜かれたそのうちの1本は、根深き親不知のビジュアルが想像できる、ミリミリミリ……と耳の奥に振動する嫌な音と共に、力任せに押し出され、隣で横になっている患者さんの上をマンガのように通過して、とんで行きました。歯科助手さんが慌てて拾いに行ったのを憶えています。ウソのような本当の話。

「親不知は各奥歯に1本ずつ、計4本です。再び生えるということはありません」
「でも、確かに抜いた記憶があるのですが……」
「抜いた跡があるのは、ほら、この歯です」

レントゲンを見ると、問題のグラグラ奥歯のさらに手前の歯が、確かに存在しません。その寄りかかるべき歯が存在しないため、なおさら親不知の横槍攻撃にたえられない奥歯くん。ますます健気だ……
その無い歯を補うため、ブリッジと呼ばれる処置が施されていたのでした。
今まで、「珍しいだろ」と周囲に自慢していた「親不知の再生」は、ただの恥ずかしい勘違いでした。

「ほかに気になるところはありますか?」
「先生、もう一か所ブリッジしたところが時々痛みます」

私の腹にムスコちゃんが生息している時に、一本の歯がグラグラしてきました。
よく、妊娠中は歯が悪くなることがある、なんて聞かされたものですが、グラつくほど?
かかりつけの歯医者さんで、それが乳歯であることがわかりました。乳歯だから抜けるべくしてグラグラするのだから心配ない、と言われたものの、「え? 今さら〜!?」
しかも、永久歯が控えていないため抜けると歯っ欠けに……。
で、出産後まもなく、歯の抜け跡にブリッジを施した、というわけでした。

「弘生さん、承知してますか? 実はここにも乳歯があるんですよ」
「へ?」
「頑張ってるんですねえ。でも、こちらもいつ抜けるかわからないし、虫歯になりやすいので、よく歯磨きして下さいね。大事にしていきましょう」

なんてこと!いらない親不知が4本も生えてきたのに、足りない歯が2本……。しかも、乳歯くんが現在も頑張っていてくれているとは……。
大事にするからね、乳歯くん。君も健気だ……


いきなり、いたずら描きをもう一点、これは歯の戦い?
こちらも無理矢理テーマを設けるならば、

「親不知と根のよりどころを失った歯の攻防戦」


そして、こちらも個人的主観により、歯の根っこに見えてきたので強引に紹介します。

「発生ー蜘蛛の糸シリーズより」

87.5×58.3  板に油彩、紙など、なんかいろいろ
都美術館で発表済み


歯は大切に!ですね。




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