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Well Jiing !! 第4章、お葬式のニーズ(4)

前章に続き、寺がお葬式で与えられることを考察していきたいと思います。
お葬式ニーズで遺族がワカラナイ不安を大きく4つに分けています。
(1)今、何をしておけばよいのか
(2)いざというとき、どうしたらよいのか
(3)結局、何をどう考えればよいのか
(4)そして、いくら用意すればよいのか←今回の考察
 
第4章、お葬式のニーズ(4)
~そして、いくら用意すればよいのか~

◎お葬式に必要な項目

近しい人のご逝去を受け、用意する必要がある事柄を、大まかに(1)ご安置関係、(2)火葬関係、(3)供養関係、の3つに分けて考えてみたいと思います。
(概算の料金はあくまで私の経験値からの経験値に基づきますので、地域や依頼先により差があると思います)

(1)ご安置関係

まず、病院等で臨終を迎えられた場合、病院等から安置先までの
①寝台車:約2万5千円(距離等による)

ご安置を霊安室等にお願いする場合、
②霊安室:約1万円/泊

ご遺体の保善のための、
③ドライアイス:約1万円/日
④防水シーツ:約5千円
が想定されます。

ご自宅で安置なさる場合、
⑤お線香等の枕飾りセット:約1万円
も手配されるかもしれません。

ご安置関係をまとめますと、

【霊安室で1泊2日ご安置なさる場合】小計5万円~
(①寝台車:2万5千円+②霊安室:1万円+②ドライアイス:1万円+④防水シーツ:5千円)

【ご自宅で1泊2日の安置をなさる場合も】小計5万円~
(①寝台車:2万5千円+③ドライアイス:1万円+④防水シーツ:5千円+⑤お線香等の枕飾りセット:1万円)

が想定されます。

『墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)』上、死後24時間経過以降での火葬が求められていますので、基本的に1泊2日以上のご安置、つまり5万円~は、必須項目といえます。
 

(2)火葬関係

火葬場で荼毘にふして頂くにあたり、火葬場の利用規約により、「お棺に納めた状況で」「火葬場まで搬送する」必要があります。お棺は一般的には葬儀社から購入することが多いと思います。
 
各社様々ですが、
①一般的なお棺:約3~5万円(上等なお棺:10万円~上は200万円超)

お棺それ自体は、「モノ」ですから、誰でもインターネット等を介して購入できます。その場合、2万円~という相場感かと思います。

市民の葬送支援をされている長野県の松本市では、「松本市営葬祭センター」にて、葬具販売を一般に提供しています。例えば「寝棺大(内張あり)」が松本市民の場合26,400円、松本市に住所を有する者以外の者は39,600円で購入できます(2019年10月1日よりの価格)。http://www.matsumotosousaijo.jp/siyouryou-20191001

「モノ」は個々に用意できなくはない。本来でいえば、葬儀社にしかできないことは皆無です。葬送が地域の行事だった昔は地域の皆で準備した。

1から10までを葬儀社に依頼する感覚が一般的になった現在では、「えー?自分達で…?」と思う感覚かもしれませんが、「地域の力」があったともいえるのかもしれません。

(葬送において専門家に期待することは何か?ここではそのテーマは割愛し、話を続けます。)
 
火葬料は、市区町村や火葬場により明確に定められています。
②火葬料:無料~1万円という市町村もありますし、東京都内であれば利用の多い民間火葬場で7万5千円~
 
火葬料の他に、
③火葬場控室:無料~3万円前後
④お骨壺:1万円前後~(火葬場が用意する場合と、葬儀社等で手配する場合があります)

火葬関係をまとめますと、

【火葬料や控室が無料地域の場合】小計4万円
(①お棺:3万+②火葬料:無料+③火葬場控室:無料+④お骨壺:1万円)
 
【東京都内の場合】小計14万5千円
(①お棺:3万+②火葬料:7万5千円+③火葬場控室:3万円+④お骨壺:1万円)

約10万円の差が生じますが、地域ごとに試算しやすい項目ではあります。
 
そして、火葬料の相当額は、健康保険制度により「葬祭費」という名目で申告により後日還付されます(健康保険の被保険者が亡くなった場合)。

(3)供養関係

寺院による供養を求められる場合、ご遺族はお布施を考える必要があるのが一般的です。通夜、葬儀、戒名など、寺院ごとに明確にされていることもあるかもしれません。ところによってはお衣代やお車代まで明確になされている場合もあると存じます。

布施は対価?金銭だけが布施?という議論はここでは割愛させていただきますが、経験からは10万円~100万円以上と定めづらい項目であり、寺院や故人様との関係などによっても様々かと思います。

(志であり「対価ではない」という性質上、市民感覚からは「ワカラナイ」領域かもしれません。それゆえ、寺院の姿勢やご遺族との関係値が表出される項目といえます。)

(1)~(3)をまとめると

1)ご安置関係=5万円~
2)火葬関係=火葬料無料地域で4万円〜、都内で14万5千円〜
3)供養関係=個々の志や寺院による

お布施を割愛した合計は、
火葬料無料地域で9万円~、都内で19万5千円〜

それが必要最小限。

そこに葬儀社等の人件費を10万円ほど加味すると、火葬式プランの相場20万円前後都内での火葬式プランの相場30万円前後、という現実は納得しうる価格といえるでしょうか。

◎会葬者の対応に必要な項目

産まれ、生きた時間を有する人には関係者がたくさんいます。出会った全員が旅立ちに立ち会うことは難しいですが、最終的に近しい関係を持っていた方々は、お葬式や弔問で対話をもちたい。故人様ともご遺族とも。

そういった方々に対して、会食や接待の場を設けることや、夜通し線香をたやさないための時間を過ごすために飲食を提供する習しはかけがえのないものです。

会食等の接待費をおよそ5千円×計20名分とすると10万円ほどになります。
そうすると、都内での火葬式プランの相場30万円前後+接待費10万円=40万円前後。また、火葬料無料地域が多い地方ではつきあいも大切にする傾向があるため火葬式プランの相場20万円前後+接待費20万円と考えると=40万円前後。
都内でも地方でも変わらず、40万円前後が現実的な必要予算と考えられます。

ここでふと、出産にあたり「出産育児一時金」として42万円が支給されることを思い出します。

人が産まれるときにも、死んだ時にも、同じくらいは必要。

何より、誰かが負担してくれる「生死の現場」があることに、「ひとりで生きているのではない」というありがたみも感じます。
(命の話は寺院様方に期待します)

なお、お香典は頂いたご厚意。通常その中からのお礼返しなので、今回は割愛します。

◎お布施は「別途」

必要予算で40万円という試算をさせて頂きました。
割愛した「お布施」は市民にとって「ワカラナイ」大きな項目です。
「お布施」をどう伝え、いかに理解して頂くか。
 
葬儀布施が成り立つのは、
・志納行為を行う「ご遺族」が仏教を理解している
・「故人様」が自分のために価値を感じ布施を重ねてきた(あるいは生前に用意している)
・布施する貨幣が在る

 
この3つ全てが欠けると、葬儀布施は成り立たなくなるかもしれません。
貨幣の視点を除くと、お布施の基盤は「仏教への理解」「お寺に感じる価値」に要点があるのではないかとも思います。
 

◎お寺は「何のため?」「誰のため?」

生前からのつきあい、納得、理解。その結果として「ありがたい」という周りも含めた感謝。それを今どうもたらしているか。そこに挑むお寺こそ、存在意義を有し続けるのではないか?と思う今日この頃です。

市民感覚でいえば、産まれたときと同等の喜びを死に際してもたらしてくれたら…とても有難い存在です。

「生きたことで積み重ねた価値」
を讃え、
「人生の昇華」

をしてくれる。
 
(あなたの菩提寺は人が亡くなることに際して、どう伝えてくれるでしょうか?)

お寺と市民の関係は、突き詰めれば、「生きる人」との関わりが重要だと思うのです。
供養を志すのも、生きている人、あるいは生きるご遺族なのだと思うので。

まさにお寺と今生きる人の関係次第、と思います。

「いくら用意すればよいのか」という不安に対して、生きる人へのアプローチで答えられるお寺の在り方に、期待したいとも願います。

長文お読みいただきありがとうございました!

次章からは「お墓」をキーワードに考察をさせて頂きたいと思います。

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