見出し画像

あのとき17歳「劇場とマダムと味噌煮込みうどん」

audiobook.jp運営のハガです。あのとき17歳、2013年に17歳だった社員がリレーコラムの4回目を担当します。

2013年

どんな年かというとスーパーには恋するフォーチュンクッキーが流れ、ぐるぐると皆が歌い踊り、もはや幻と化した東京五輪2020の開催が決定した年...のはず。

指原莉乃さんは飛ぶ鳥を落とす勢いで現在も活躍中ですし、東京五輪の開催については混乱の渦中にあるといった具合。
まだそんなに昔ではない気でいたのですが、もう7年前だそうです。
時の流れが速すぎてもう無理。

前任の方々のように、特段エモくもなければ個性的でもない、17歳の記憶を掘り返して記事にするのは、非常に辛いが書くことにします。だってお仕事だもの。頑張ってアンカーへこのリレーを届けるのが私の使命。気休め程度に読んで頂ければ幸いです。

観劇に傾倒した17歳

17歳の多感な時期。皆様は何をしていらっしゃったでしょうか。
部活動や勉強に勤しむでもなく、恋をするでもなく、
しゃがれたブルースをききながらセンチな溜息をつくわけでもなく。

当時の私が熱中していたのはお芝居です。

名古屋出身の私が足しげく通ったのは今は亡き、栄・中日劇場。

中日劇場の興行スケジュールは全て把握していたし、当日券の販売状況のチェックを怠らなかったあの頃。
アルバイトが一切禁止の学校のため、観劇費用を捻出するべく、とにかく親のすねをかじり倒そうと奮闘していました。

困ったときはとりあえず本

金欠で芝居を見に行けない時は、芝居人でもある小説家の本を読み漁ることで誤魔化していました。元々本は好きでしたが、この時期は文芸作品への熱が一気に加速しました。

井上ひさしとか(吉里吉里人がすき)

三島由紀夫とか(春の雪は宝塚版も見てほしい)

遠藤周作とか(一時期よく模試の問題に使われてた)。

このあたりをループしつつ、お金がたまったら中日劇場へ。ミュージカルが特に好きで宝塚歌劇はほぼ確実に円盤化するので、気に入った作品は芝居に興味のない母親が歌えるようになるほど、繰り返し見ていました。(ファントムごっこ選手権があったら入賞は確実)

画像1

マダムにまぎれて

当時の中日劇場はどちらかというと40代、50代以上のマダムの主戦場という印象。東京ほど劇場がいっぱいあるわけではないので、年に数度、おしゃれをしてお出かけする場所が劇場のイメージでした。

みんなヴィトン(パンフレットが入るA4サイズ)を持ってたし、名古屋のおばちゃんは我が強い。あの役者は歌が下手だ、とか芝居がいまいち、だとか大声で話す人も結構いるので、開演前の客席はちょっとピリピリしがちだった気がします。

客席でひとり制服でいることになんとなく居心地の悪さを感じていたこと。狭い劇場の席で赤本をぶち込んだスクールバックを持て余したこと。幕間の30分、せめてもの抵抗で参考書を引っ張り出し、受験生ぶっていたこと。全部あの時期のならではだったなあ、と今さら思い返します。

当時の自分に教えてあげたい、大きな荷物はクロークに預ければいいんだよ。

観劇後はエレベーター待ちの列を作るマダムを横目に、9階にある劇場から階段を使って、地下まで降りたこと。

現在はありませんが、当時は中日ビルの地下2階に山本屋本店が入っていたので、観劇前後にかしわ入りの味噌煮込みうどんを食べるのもお約束でした。

画像2

劇場と芝居

当時の私は地元への進学→就職を思い描いていました。稚拙なライフプランでは就職をしても、還暦を迎えても、変わらず中日劇場へ通う予定だったのです。そして見知らぬ高校生が客席にいても暖かい目で見守ってやるんだ、と勝手に思っていました。

思い出深い劇場がもう存在しないことに、帰省する度にざらっとした複雑な気持ちになります。劇場へ向かう度に、「この作品は最前列で見たなあ」とか「あの作品はとなりのおじさん寝てたな」とか。劇場に今までの観劇の記憶がすべて詰まっていました。芝居は形に残りませんが、劇場は変わらずに、そこに存在するものだと思い込んでいたのです。

そんな複雑な感情であっても、忘れてしまうことの方がずっと淋しく、勿体ないなと最近は方向転換をしました。ポジティブに物事を捉えようと。大人になりましたね。
つまりは何が言いたいかというと、これからもざらざらした感情を抱えたまま、芝居への気持ちを拗らせていきたいと思います。
....……何の宣言だろう。

==================================================

思わぬ決意表明へ着地してしまったリレーコラム。アンカーは2012年に17歳だったIzakiさんが務めてくださいます。きっと鮮やかに締めてくれるはずなので、お楽しみに!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?