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現在の私に至るまでの話④配膳会の仕事

私は、3年間勤めた介護施設を辞めることになり、その後、アルバイトの張り紙を頼り、偶然受かったパン屋で働くこととなった。だが、収入面で、面接時に提示した額に届かす、極貧の状態で、1年半を乗り切った。

そんな時、以前にホテルで働いていた時のシフトを決める係の人からの着信を受けた。最初は、こんなに時間が経ったのに、何だろうと思ったが、折り返してみる事にした。

その人は男性なのだが、電話口に出たのは女性であった。私は間違えたのだと思い込み、その旨を伝えようとすると、その女性の口から語られたのは、その人の訃報であった。その女性は、彼の奥さんだった。

あまりに急な事に、親交のあった人に連絡を取る事ができずに、彼の携帯にあった名前に、片っ端から連絡を入れていたという。

「お線香だけでもあげに行きたい」

そう思い、告げるとその女性は、ある名前と電話番号を私に教えてきたのだった。私はその名前、その人を知っていた。かつて、配膳会としてホテルで働いていた時、一緒に働いていたが、途中から自ら配膳会社を立ち上げると話していた人だった。

お線香をあげに行くのに、この人に接触を取るのか。

私は少し躊躇った。
私が過去にトラウマを抱いた配膳会とまた接触し、また配膳会で働くことになるのではないかという不安が頭をよぎったからである。

それでもお線香を…と思った私は、連絡を取ってしまうのだった。

彼は、私の空いている日に、自らの事務所に来るようにと言ってきた。私は初めて、その人が経営する会社の事務所に行くことになった。

そのホテルを辞めてから、8年は経過していたくらいの事で、懐かしさから、その亡くなった人の話から始まり、今までの話などを時間をかけて話していたら、現在の収入面の話になってしまい、それだったら、ウチで働いた方がいいじゃんと、彼は言ってきたのだった。

私は結局、その亡くなった人にお線香を上げるという行為も仏壇に向かうこともないままに、彼の会社に入ることになってしまったのだった。

たしかに収入面だけで考えれば、配膳会の方が断然に待遇は良い。だが、以前の記事でもお話したように、配膳会というのは、人間関係に負荷がかかる事なども十分承知の上で、OKを出したのだった。

もちろん、病気の事も伝えたし、その点では、考慮して頂けるものと、最初は考えていたが、そんな考えも虚しく、散るのだった。

配膳会に入れば、給与はいいが、まず最初に来るオファーは土日の婚礼のサービスである。これは想定内であったものの、私の「宴会場恐怖症」は改善していないばかりか、むしろ悪くなっているのだった。

客入り前に、セッティングなどで、スタッフだけで仕事をしている時にはまだいいのだが、一旦、ゲストを入れてしまうと、私は一気に緊張がMAXになってしまい、周りが見えなくなってしまうのだった。

それが原因で、新婦のドレスの裾を踏みそうになったり、料理を運ぶ手が震えてしまうなどの症状が出て、婚礼はダメだと会社に伝えるのだが、まだ慣れていないからだろうと言われ、ナシになる事はないのだった。

また、私は1箇所で働くことの出来る常勤扱いではなく、スポットという毎日、人の足りない現場に行く事を命じられる扱いとなり、精神的な問題も考慮されてか、私の場合は、1日2箇所、ランチとディナーで、違うところに行くという事になった。これだけでも、相当な負担となる。人間関係の問題から、覚える仕事量、環境への適応などが、全てプレッシャーとなってのしかかってきたのだった。

だが、私の場合は2箇所だったが、1日に4箇所も行くような人もいたのだった。いつ寝ているのだろうと心配になるくらいであった。

また、各現場によって、捉え方も違うのだが、配膳会は仕事ができるものとして、受け入れられる事が多く、こちらから訊かない限り、いろいろな事を教えて頂けなかったり、また、年度が変わる頃になれば、新入社員や、直属アルバイトなども迎えることになり、彼らへの教育はとても熱心に行われるのだが、私たち配膳会には物の場所、化粧室の場所などの説明で終わってしまう。

私が配膳会に向いていないと思う事は他にもあり、その直営の社員は時間が経てば、オーダーを取ったり様々な事を覚えていくのだが、配膳会は、動きが制限されてしまうのも、ネックな部分である。例えば「オーダーが取れない」これは、非常に不安感を煽る大きな要因だと思う。オーダーを取れないとなると、教える側は、どんなメニューがあるのかなども説明しなくてもよいというような感覚に陥りやすくなるのだが、メニューが分からないというのは、私にとって、大きな不安要因なのだ。

コースなのか単品なのかとかも重要な事であり、単品であれば、フォークや箸なども提げても良いが、コースだ誤って下げてしまうと、次の料理が運ばれた際、それらがないがために、ゲストを待たせるという事が起きてしまうのだ。

これも現場によってまちまちなのだが、配膳会は配膳のプロ集団だと思われているところも大きく、細部に渡る説明が不要なように思われてしまうことが往々にしてあるようである。「基本的なところは分かっているので、説明しなくても分かるはずだ」これは、大きな勘違いで、たしかにそういう人もいるかもしれないが、入ったばかりだったりすると、なかなかそういう風なれないのは目に見えている。

そのプロ集団であるはずの配膳会だが、私が経験したレストランで、できる仕事というのは本当に限られていて、
●新規ゲストに水とおしぼりを持っていく。
●水がなくなったら、水を足しに行く。
●トイレを訊かれたらご案内する。
●ゲストに頼まれた下げ物をする。
●会計の終わったテーブルの後片付け〜新規へのセット
またホールに何箇所かある食器などのカトラリー補充庫が空にならないように補充を欠かさずに行うのも、配膳会の仕事であった。

また別の現場で、配膳会がよくする動きのひとつにランナーというのがある。ランナーとは、上記とあまり変わらないが、基本的にゲストと直接関わるという事がない。

ゲストと直接関わるのは社員であったり、直属のアルバイトだったりする。このような現場の主な仕事は
●ホールに数箇所あるカトラリーの補充庫も兼ねたコーナーテーブルに厨房から出た料理を持っていく。
●コーナーテーブルに置かれた下げ物を洗い場まで下げる。
●カトラリーやナプキンなどの補充
●(ゲストの少ない時)ナプキン折り、カトラリー磨き

などとなる。これにより、社員はずっとホールにいることができ、ゲストの傍を離れることがないようにできるのだが、私にとっては、なんとも屈辱的で、不快感が高まるのだった。

まとめると、配膳会はプロ集団だと思われている一方で、ヘルプ要員でしかないのに、時給が結構高い。スポット要員になると、行く現場も増え、1回行った現場では、2回目からは、もう仕事を覚えていると見なされ、野放し状態にされる。などといったところである。

今回は、配膳会の仕事について、まとめたが、次回はこの配膳会と私の実際の仕事内容などについて書いて行きたいと思う。
ここまで。読んでいただきありがとうございます。

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