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お、目が合ったね(脚本家 島川柊)

連載も第三回目となりましたが、原稿の締め切りを延長してもらう情けのない事態が起こりました。
頂いた今月のテーマに慄いているうちに、幾千もの夜を超えてしまったのです。綺麗っぽく言ってごめんなさい。単に、のろのろと考え込んだだけです。
シンプルなように見えて、創作の根本に触れる話題だったもんで。

その苦戦したテーマというのは、「演劇と観客」です。

なぜそんなに難しく感じるのか、理由を考えるところから始めました。

「演劇 “と” 観客」と二項関係で表すのにも違和感を覚えるほど、観客あっての演劇だと信じているからでしょうか。
「演劇」という大きな丸の中に、「観客」も含まれているイメージです。いや、「演劇」と書いて「観客」と読む、くらいの勢いすらあります。
それは演劇に関わる人間なら、もはや演劇を一度でも観たことさえあれば、誰しもが感じるごく当たり前な事実。そう思い込んでいました。います、今も。

演劇をやってます、舞台の脚本を書いています、と言うと、映画やドラマの本は書かないんですか?小説は書かないんですか?と訊かれます。
あー、今のところは演劇に夢中でー、と不甲斐無い雰囲気で答えます。
答えながらいつも、それはなんでなのさ、と自問してみます。

その問いに、去年出会ったある言葉が、明確な答えをくれたと感じています。

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