armchair theorist





「あの大きな"モノ"は、なに?」
「あれは建物だよ。」
「何をするもの?」
「外の空気に触れないようにするものだよ。」
「へー。おや、"ヒト"が入っていくよ。」
「疲れたんだね。」
「建物の中は、疲れた人でいっぱい?」
「中には、疲れるために入っていく人もいるよ。」
「何のため?」
「疲れたときのためだよ。」
「どういうこと?」
「人はそうして生き延びているんだよ。ちなみに、」
「ちなみに?」
「"マド"というのを開けると、外気が入ってくるよ。」
「マドって、あの四角の?」
「そうだよ。僕たちはあそこから中に入るんだ。」
「人が入っていくところからじゃダメなの?」
「すり抜けることはできるけど、それは好きじゃないな。」
「それじゃあ、マドからだね。」
(ガタ、パカ。)
「あ!開いたよ!」
「よし。入ろうか。」
「ちょっと待って。緊張するなぁ。こんな姿で入って、怖がられないかな。」
「大丈夫。誰も拒みはしないさ。」
「どうしてわかるの?」
「誰にも僕たちのことは見えていない。」
「もし、見られたら?」
「見える人は、怖がらないよ。」
「そういうもの?」
「そういうものだよ。」
(ガタ、パタン。)
「あ、閉じちゃった。ごめんね。」
「いいんだよ。建物には色んな形や大きさがあるからね。」
「あ、あそこの建物にはたくさんの風が集まっているよ。」
「あれはみんな隙間を吹く風だよ。」
「いけないような言い振りだね?」
「僕たちは、堂々としてなくちゃいけない。」
「あの風も、堂々としているみたいだよ?」
「あそこではね。大きな道に出れば、吹けやしないよ。」
「そういうこと?」
「そういうことだよ」
「君は今までに建物へ入ったことがあるのかい?」
「ないよ。」
「どうして?」
「この大きな頭がつっかかって、入れないんだ。」
「生まれつき?」
「そうじゃないけど。」
「じゃあどうして?」
「見るマドが大きくなるにつれて、頭が大きくなるんだよ。」
「何が入っているの?」
「何も。」
「変だね。」
「そうなりなさんな」

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