名作ラジオCM_313
■サントリー/企業
懐かしい酔い心地
男:「神戸ハイボール」という名のその店は、
元町の古いビルの地下にあった。
ここでハイボールを頼むと、小ぶりのグラスに3分目ほどの
サントリーホワイトが注がれる
SE:トクトクトク
男:ソーダ水をグラスのふちまで入れて
レモンピールをひと搾り
SE:シュワー
男:それだけで、飲むたびに明るい陽がさすような
飲み物ができあがる
不思議なことに、家でつくってみると、味が違う
同じサントリーホワイトとソーダ水を使って
レモンピールも搾っているのに
SE:(静かなバー)
男:ある日、マスターから、店をたたむと知らされた
M:BG〜
男:今夜が最後という日
思い切ってそのうまさのわけを聞いてみた
マスター:グラスですわ
男:グラス?
マスター:洗いざらしの麻布でトコトン磨いて使うんです
1杯ごとにね
男:ふーん
マスター:ソーダの泡立ちも、味も、全然違ごうてきよります
SE:キュッキュッ(麻布でグラスを磨く音)
男:その夜、思い出にもらったグラスで
さっそくためしてみた
SE:トクトクトク シュワーッ
グビッ(飲む)
男:この味だ
もう1杯つくろうとして気がついた
また、グラスを磨かなきゃならんのか
なくしたものの大きさが初めて胸にこたえた
M:BG〜
男:神戸の街も、すっかり変わったけれど
今でも心が風邪をひいた夜は
例のグラスをセッセと磨いてみる
1杯こっきりのハイボールを、1口ふくむたびに
震災前の、あの街の空気がよみがえる
そして、またあした、新しいにぎわいを取り戻しつつある
神戸の街へ、出かけていくのだ
SE:トクトクトク シュワーッ
男:これがオレ、河島英五のウィスキー
サントリー
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1998年 ACC年鑑 ACC賞
このCMの面白さは「発見」が2発あった点。
1杯ごとにとことん、グラスを磨くとソーダの泡立ちも味も変わる点。
そういえば、ドラマや漫画で見たバーテンダーはいつも、グラスを磨いていたと記憶を蘇らせた点。
そして、実際にマネをしたくなりました。
「お店の味」の再現したいというインサイトをうまくついているな〜と思いました。
家でも再現したくなるし、お店でしか味わえない味にはバーテンダーの手間がかかっていて、その手間ごと味わいに行きたくなる。
こういったCMを作れるようになりたいですね〜。
ちなみに余談ですが、河島英五さんは地元の先輩です!
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