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『天使の翼』第7章(15)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 ジェーンは、初めて会ったときの硬い表情が嘘のように、生き生きとした顔で、わたしの方を見てきた……彼女は、わたしのことをシャルル=チャールズの姉だと思っている訳だし、シャルルは、単に無邪気なだけだ……でも、ジェーンの顔の表情は、わたしには訳もなく『翻訳』できた――突然目の前に現れた『シャルル』という、女性にとっての奇跡に、恋心という名の生き物の尻尾をわしづかみにされた、のだと……
 わたしは、諦め、という名の笑顔を作って、肩をすくめた――
 「それで?」
 言ってしまってから、わたしはちょっと慌てた――余りにも無情すぎる響きがしたから……
 幸い(?)なことに、シャルルのことで頭のいっぱいのジェーンは、全く無頓着だった。
 (――シャルルは、一体何の目的でジェーンを呼び止めたのかしら。まさか意気投合することが目的でもあるまいし……)
 シャルルは、夢から醒めたように目をぱちぱちさせた。
 「ジェーン、と呼んでいいですか?」
 ジェーンは、とても気のせいとは思えない、明白な歓喜の表情で頷いた。
 「ジェーン、今日の君のお勤めは?大学の授業はあるのですか?」
 ジェーンは、顔を赤くして答えた。
 「私の聖堂係りとしての勤めは、もう間もなく一時間位で終わります……大学は、冬期休暇でお休みだわ……」
 僅かの時間の間に、『わたくし』から『わたし(私)』に変身したジェーンは、シャルルの顔をまともに見ることができずに下を俯いている。
 (まあ、大変!)
 わたしとシャルルが、実は姉弟ではなく、相思相愛だということを、早く教えてあげなくては……
 「――僕らは、ここアクィレイアは初めてなのです。知り合いも、誰もいません――」
 ジェーンは、再び顔を上げて、シャルルの顔を見詰めた。
 「――良かったら、一緒に食事でも。そして、今日でなくてもかまいません、この星のことを色々教えてくれませんか?」

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