『天使の翼』第7章(41)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
「……そして、『少なからずや、ご返事だけでも』……駄目な場合でも返事だけは欲しい……一見しただけでは、切実な思いを読む者の心に訴えかけようとしているようだけど、返事をするには、待ち合わせの場所に行かなくてはならない訳で、胡散臭さがにじみ出ている――」
わたしは、この手紙に隠されているものが見えてくるような気がしてきた。
シャルルが、突然目を見張って、わたしの顔を見た。
「キリヤック伯爵というのは、確かに架空のタイトルかも知れない。でも――」
「『でも』?」
「でも、キリヤックという、おそらく地名は、実在するかも知れない!」
シャルルは、今度は、ワーム・ホール・ネット上で帝国全植民惑星系地図集成の地名索引を開いた。
『キリヤック』と打ち込む……
――『該当ナシ』
もう一度……
――『該当ナシ』
新しい事実が次々と明るみに出てきた中で、この小さな挫折は、心に大きく響いた。
シャルルは、諦め切れずに、考えられる限りスペルを変えて『キリヤック』と打ち込んでみたが、どれもヒットしなかった――もっとも、その程度のファジーな部分は、コンピューターが自動検索してくれるので、やる前から結果は分かっていた様なものなのだけれど……
「残念……もしかしたら、『キリヤック』というのは、俗称か、物語の中の架空の地名のようなものなのかも知れない……それだと、公式の索引には載っていようがない」
「ちょっと残念だけど、キリヤック伯爵イコール、スカルラッティ公爵、という事に疑いの余地はないわ――」
「でも、何故『キリヤック』なのか?大きなヒントが得られたかも知れないよ」
……確かにその通りだった……
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