『天使の翼』第5章(85)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
ダイアンが、一瞬きょとんとした表情を見せるのが分かった。
そして、次の瞬間――
「た、助けて!」
ダイアンのかすれた悲鳴が、わたし達の耳に届いた。
ほとんど同時だった。
「――こちらは、レプゴウ男爵の首都警察。シャルルとデイテ……デイテとシャルルのお二人はいますか?」
悪魔の口腔の中でホバリングした3台のポリス・エアカーの1台から、拡声器ががなりたてた。
「――おられたら、腕を振り合図されよ!」
彼らは、地底から150標準メートルほどの地点でホバリングしており、ダイアンの危機には全く気付いていないようだ……
わたしとシャルルは、悪魔の口腔の真下に出て、溺れる者が藁をも掴むように、必死に腕を振り回した。暗視スコープで下を観察していればすぐ分かるはずだが――
可哀相なダイアンは、パニック状態で絶叫している――体を激しく揺らして……まずい状況だ……こんなことになるなら、ウインチなど……
幸い、男爵の首都警察は、――とても長く感じられたが――しばらくしてわたし達に気付いた。
「対象発見!竪抗基底部に急行せよ」
彼らは、あっという間に急降下して――再びダイアンには気付くことなく――、わたしとシャルルを囲むようにして、3台のエアカーをランディングさせた。赤黒いフェイクレザーのコスチュームをまとった武装警察官10名程が、車両がまだ空中にある間に、次々とドアを開け放って飛び降りると、まるでVIPを囲繞するようにして、わたしとシャルルの周りに円形陣を張った。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?