営業時間を延長すると業績は悪化する

 記事にある「縮んで稼ぐ」発想、大賛成です。いい機会なので、私は、自分の考えを整理してみることにしました。

私は、前々から、営業時間を延長して売上を伸ばす、という手法は、本来の売上伸長策ではない、と思っていました。サービスの中身を変えずに、営業時間だけを延長しても、確実な売上増の期待できるのは延長した初年度だけ、従業員は徐々に疲弊し、現場課題は省みられることなく放置される。そういう状況に陥る確率が高いと思うのです。着実に売上の基盤となっていく施策は、営業時間延長ではなく、サービスそのものの変革、イノベーションにあるはずです。

●売上伸長策⇒営業時間を延長する場合⇒サービスの中身は変わらない⇒現場課題の放置⇒業績頭打ち

     ⇒営業時間を延長しない場合⇒サービスの変革が求められる⇒現場課題の解決⇒業績向上

そうは言っても、営業時間を短縮、元に戻しても大丈夫か、という声があるかも知れませんが、そもそも、営業時間を延長しているという事は、その分だけ、光熱費・人件費等がかさんでいるという事です。もし、営業時間を延長しているのに業績が低迷しているとすれば、その分の経費をペイできていない可能性があり、営業時間を元に戻した瞬間に無駄な経費がゼロとなって、垂れ流されていた分の赤字は止血できます。たとえそうではなく、営業時間延長によって多少なりとも稼げていたとしても、現在の人手不足・時給の上昇圧力が今後も強まっていくと想定すれば、赤転しないうちに早めに発想転換した方がいいのではないでしょうか。一定の営業時間のワクの中に、従業員一人一人の無形資産としてのスキルを含めた経営資源を集中した方が、より企業としての力が発揮できると思います。

●営業時間延長⇒現状維持⇒光熱費・人件費等の経費は(増えながら)掛かり続ける⇒損益分岐点は?

      ⇒元に戻す(または短縮)⇒延長時間分の経費はゼロとなる⇒経営資源を集中できる

では、実際にどうやってサービスの中身を変えていくのか?その第一歩は、サービスとは何か、という事を、もう一度原点に立ち返って再定義することだと思います(経済学上の意義とか、対価のあるなしとか、そういう難しい意味ではなく)。企業によって様々な捉え方があってしかるべきですが、私は、サービスとはお客様に満足を提供する事で、それには二つあると思っています。『お客様自身が求めているサービス』と『お客様が気付いていないサービス』です。そして、忘れてならないのは、同じサービスであっても、それを喜ぶお客様と無関心なお客様がいらっしゃる。お客様を『オンリーワン』として捉えないと、失敗するし、卓越したアイデアも浮かんでこないのではないでしょうか?

●サービス=お客様満足の提供⇒お客様ご自身が求めているサービス

             ⇒お客様も気付いていないサービス

●お客様の捉え方⇒オンリーワン発想なし⇒お客様を集合として捉える⇒マンネリ化したアイデアに堕す

       ⇒オンリーワン発想⇒お客様を個として捉える⇒個性的なアイデアが発現する可能性

このように、企業としてサービスの変革を推進する、サービスのイノベーションを進めていくことを確認できたら、次のステップは、どんどんアイデアが出てくるような風通しの良い企業風土を作ることだと思います。一番良くないのは、本部と現場の乖離。本部と現場の間に細々とした神経回路しか通っておらず、現場の声が届かない、イコールお客様に一番近い者の実感が情報化されていない、これは、非常にもったいない状態だと思うのです。例えば人工知能AI一つとっても、AIが力を発揮するには、質の良い情報をどれだけ集められるかにかかっている。企業という組織も全く同じだと思います。

●本部と現場の情報共有⇒本部と現場が乖離している⇒現場課題が埋もれて情報化しない

          ⇒本部と現場が融合している⇒現場課題が情報化して顕在化する

ここまで考えてきて、私は、再確認できたと思いました――営業時間延長は決して良策ではない、と。人手不足という形で半ば強制的に営業時間延長を考え直さざるを得なくなった今の状況は、チャンスです。

 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27492330Y8A220C1H11A00/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?