『天使の翼』第7章(44)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
「――年末のこの時期は、催し物の少ない時期だから、あまり選択の余地はなかったわ。大司教様がご臨席なさる催し物となるとなおさらね」
わたしとシャルルは、この言葉に思わず体を震わせた。ジェーンは、わたし達の期待をはるかに超えたビッグなイベントを探して、わたし達を喜ばせようとしたに違いない……
「――それに、旅人であるあなた方がいつまでもアクィレイアにいれる訳でもないのだし……」
そう言って、ジェーンは、シャルルに絡みつくような視線を向けた。
シャルルは、そわそわと身じろぎして、ジェスチャーで「それで?」と先を促した。
ジェーンは、ぎゅっと、でも口元に優しい笑みを浮かべてシャルルを睨んでから、コートのポケットをまさぐった。
どこかの壁からちぎり取ったと思しいビラをテーブルの上に差し出す――その時、彼女の小指と薬指がそっとシャルルの指をなぞるようにしたのに、わたしは、知らぬ振りを決め込んだ。
シャルルと二人して、ビラを広げ、のぞき込んだ。
――『アクィレイア=ウラール大修道院年次感謝祭』と大書されていた。
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