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『天使の翼』第7章(36)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 ……良いことが立て続けに起きる、とはどういうことだろう?
 良い結果を得ようとして努力するのだが、なかなか結果が出ず、半ば忘れかけていた時に、干天の慈雨のごとく、それが実りだす……あるいは、一つ一つ打っていた手に対する結果が、たまたま、時系列上の一点に集中したということか……
 待ち望んでいた知らせがもたらされた時、わたしは、考えるべきことの二つ目、『公爵への接近法』に関してあれこれと思い巡らしていた。接近法といっても、もちろん、それは、吟遊詩人として接近するのであって、その意味では、計画の中の計画――シャルルとデイテ、二人組みの吟遊詩人としての実績を積み重ねて、サンス大公国への切符を手にすることが本来の目的であって、わたしの両親に関することは、大局的見地から言えば寄り道でしかない……
 シャルルは、政府高官用の携帯端末のプログラムを開いて、薄暗いホテルの部屋に光の浮遊体のようなバーチャル・コンピューター・モニターを浮かび上がらせた。そして、スカルラッティの政庁への進入を図っている時、暗号化された公用メールが着信した。
 「デイテ――」
 わたしは、その声の重みにハッとして顔を上げた。
 「アケルナルの本庁からだ」
 「……」
 「POPSの支配人室から君宛の白い封書の招待状が回収された」
 わたしは、食い入るようにしてシャルルの目を見た。

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