『天使の翼』第7章(12)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
「シスター」
何を思ったか、シャルルが呼び止めた。
――いくら神と結婚した身でも、シャルルの美しさは分かるであろう、彼女は、少しばかし自意識過剰の状態でシャルルの方を顧みた。
「シスター、自分でこんなことを言ってもしょうがないけれど、僕らは決してあやしい者ではありません」
そう言って、シャルルは、彼のしっとりとした肌の熱気が伝わってくるような真剣な様子で、ジェーンと顔を見合わせるのだ……
「――外見で人を判断することはできないけれど……」
ジェーンの顔の表情の下を、いくつかの感情が横切ったように見えた――
「いいえ。わたくしは、外見は非常に大切だと思います――」
意外な答えが返ってきた。声も幾分大きくなったようだ。
「――人の内面は、必ず、外に、顔の表情や、しゃべる言葉に表れると思うのです。何か暗いもの、良くないもの、邪なものがあると、それは、必ず、その人の仕種の片鱗となって表に出てきます。敏感に心を研ぎ澄ましていれば、必ず察知することができるのです。――わたしは、外見には何も意味がない、中身の実態とは切り離されている、という考えには与しません」
シャルルは、感銘を受けたようにジェーンの顔を見詰めていた。
わたしもだ。――これ程はっきりと、しかも、初対面の相手に、明確な自分の考えを伝えることは、なかなか出来る事ではない……
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