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『天使の翼』第11章(72)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 「SSIP……」
 ローラの顔は蒼白で、声は乾いてしゃがれていた。
 わたし達は、三人共、それぞれの事情からSSIPには関わりたくない。単に立場上の問題ではなく、その行動が既に危険を招いている――帝国宰相の死・フラージュ伯爵の死・フランク長官の誘拐事件、その全ての現場にわたしとシャルルがいたと云うことは、軽視していい問題ではない。今のところ何事もなく来ているが、現場にいた以上、わたし達の痕跡が敵を導いている可能性に警戒を怠らないことだ……
 「僕らには、後ろ指さされる所はいくらもある。ない影に怯えて、恐怖に萎縮しては、捕らえてくれとシグナルを送っているようなものだ。平然としているのが一番安全だよ」
 シャルルが、当は得ていても咄嗟にはできない精神のコントロールを語ってくれた。彼の落ち着いた声を聞くこと自体が、わたしの心の中の波を静めてくれる……。ふとローラを見ると、彼女も同じらしく、シャルルの顔を見詰めていた。

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