『天使の翼』第7章(40)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
わたしとシャルルは、しばし文面と睨めっこをした。
「この文面は――」
シャルルが先に切り出した。
「――男爵の言っていた他の吟遊詩人宛の招待状と内容の特徴が一致する。
第一に、待ち合わせ……と言うか、誘拐の日時・場所に、何の変哲もない手近のランドマークを選んでいる。
第二に、この招待状の差出人を特定するのに役立ちそうな固有名詞・天候等も含めた時事的な内容は、一切含まれていない――」
「『キリヤック伯爵』は?」
「間違いなく架空のタイトルだね――」
そう言って、シャルルは、ワーム・ホール・ネット上の帝国貴族名鑑を開いた。――『キリヤック伯爵』という打ち込みに対して、すぐさま『該当なし』と表示が出た。
わたしは、肩をすくめた。
「これが犯罪者の書いたものでなければ、心に響く、と言っても良い位の文章だわ……」
「『歌う戦士』……『貴女の勇姿』……吟遊詩人の形容としては、なかなか個性的……というか、書き手の、吟遊詩人に対する特別な思い入れが顕れている……」
そう言われると、ちょっと不気味だった。
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