『天使の翼』第11章（89）～吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー～

　対するＳＳＩＰの兵らは、ニードル・ガンを乱射して追いすがろうとしていた。銃身が異様に膨れているところを見ると、どうやら麻酔矢のようだ。皆しゃにむに追い付こうとするが、足下の石くれが崩れて簡単には登っていけない。
　そうこうするうちに、わたし達の視野に、慌てて飛び出していった指揮官の姿が駆けてきた。腕を振り回して何か怒鳴っている。
　その後に続いた光景から、その「何か」は、簡単に読み取れた――実弾（ニードル）の使用を許可したのだ。
　一斉射撃とは、まさにこのことだった。
　たちまちデビル・ハンターの一人が倒れた。倒れ方で女性だと分かる。恐ろしいニードルが体のどこに食い込んだのか、狂おしくもがく姿は見ていられない。
　視界が俄かに暗くなり、首をひねって窓越しに見上げると、灰色の濃い絶壁のような雨雲が行進してきていた……