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『天使の翼』第5章(92)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 「――かわいそうではあるが、おろかな事です。洞窟でウインチを使うとは」
 指揮官がシャルルに話していた。
 「――上昇している人間が、ゴツゴツした岩に挟まってしまった時、そのままウインチが動いていて、無理に引っ張ってしまったらどうなります?」
 指揮官は、両手を広げて見せた。
 実際には、ダイアンは降下していたのだけど……そんなことより、わたしは、安易にウインチに飛び付いたことが、やはり愚の骨頂であったことを明確な形で指摘されて、その衝撃に、心をさいなまれた。
 (ああ、ダイアン、なんて申し訳ないことを……)
 そして、わたし達自身……シャルルを命の危険に晒してしまった。
 よく考えもせずに、廃品業者の口車に乗って衝動的にウインチを購入してしまったのは、シャルルのことで、感情的に大人気ない状態にあったからだ……
 (こんなわたしに、天使が務まるの……)
 わたしは、心の中で、激しく自分を叱責した。このウインチの一件は、いろいろな意味で長く心に残る教訓としなくてはならない。


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