『天使の翼』第7章(10)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
「僕が歌ってもいいかい」
「!」
――これ以上はない解決策――わたしは、思わずシャルルの腕をひっぱたいた……彼の頭の回転の速さが、頼もしくもあり、憎らしくもあり、そして、……
その一方で、わたしは、なんだ、シャルルったら歌えるんじゃない、と思っていた。それどころか――
「あなた、本当は歌ってみたいのね!」
「いいや、でも仕方ないからな」
でも、その顔には、ありありと、歌うのが好きなこと、そして、自分の声に結構自信があるという表情が出ていた。そのことを追求しようとするわたしをかわして、シャルルが言った――
「これで、僕たちの変身計画も、一歩前進だ。なにしろ、姿を変え、名を変え、声も変えたんだから。変えたという事実を知っている者は、僕たちをぴたりと尾行していた者でもいない限り、誰もいない。僕たちを追跡するような者は、あの悪の手下の若い男女しかいないし、僕たちの足跡を辿るのは容易ではない。まさか、自分達の本拠地に僕たちがいるとは、裏の事情を知らない限り頭に浮かぶこともないだろう……自分達の本拠地で吟遊詩人狩りをしているとも思えないしね」
わたしは、ため息をついた。結局100%確実なことなど何もないし、それを求めていては一歩も先へ進めない。すべての行動は、リスクを覚悟の上でだ……
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