『天使の翼』第11章(93)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
「こちらは、SSIP特捜部――」
先刻の指揮官だ。彼は、乗客に無用の混乱を与えず統制するには、最低限の情報を随時流した方が良い、と心得ている――
「――本件の捜査は終了した。繰り返す。本件の捜査は終了したが、本列車は、証拠として、始発駅アンコーナに戻ります。乗客の皆様には深くお詫びする。重大事案解決の為、と思っていただきたい……。なお、このハイ・アンコーナ本線は、本列車が上り線路に入り次第、直ちに運転再開されます」
アナウンスは、唐突かつ一方的に終わった。
……わたし達、そういえば一本も下りの列車とすれ違わなかったな、と今にして思った。
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