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『天使の翼』第5章(82)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 ぶらん、ぶらん……
 気味の悪いような浮遊感覚。体の動きは、ワイヤー1本だけに支えられている。クレーンで宙吊りにされる荷物は、いつもこんな感覚を味わっているのだろう……
 そして、生暖かい風が、スーッと足先から吹き上がってきた。
 わたしは、宙吊りになったままグルっとワイヤーのひねりの力で360度回転し、再びダイアンと視線が合った。あっけに取られているダイアンに早くボタンを押せと合図を送った――ダイアンはすぐ目の前にいるのに、声に出さずに合図を送るというのも妙なのだが……
 ――スルスル、スルスル……
 少し間を置いて降下が始まった。
 わたしは、ぎゅっと目をつむった。――まるで大嫌いな注射をする時みたいに……まるで、目をつむって見ないでいれば、何事もなく事が済んでしまう、とでも言うように……
 ……どのくらい時間が経った頃かは分からないけれど、ぴんと張ったワイヤーを通して着実に降下している感覚に、ようやく気持ちが落ち着いてきて、わたしは、目を開いた。思い切って下を見てみる――
 (!)
 地底は、あっけないくらい間近に迫っていた――50標準メートル位だろうか。
 シャルルと視線が合うと、彼は、愛嬌たっぷりに敬礼を送ってきた。
 ……スルスル、スルスル。
 わたしの地底着地とほとんど同時に、絶妙のタイミングで、ダイアンがワイヤーの降下をストップした。
 シャルルが、わたしの上半身を抱くようにして、優しく受け止めてくれた。一瞬二人の視線が絡み合った。

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