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『天使の翼』第5章(90)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 「……我々は、宇宙賊が、故意に彼らの乗船を爆破したものと考えています」
 わたしは、再び指揮官の言葉に意識を集中した。
 「何も手掛かりは残っていなかったのですか?」
 「ええ……」
 わたしは、指揮官の瞳の中を何かが横切ったのを感じた。
 「乗員の遺体、フライト・レコーダー、スペース・エンジンのシリアル・ナンバー……そういったものは、何も確認できませんでした。最初からそんなものはなかったのか、それとも、これは私の勘ですが……科学捜査の結果が出れば分かることですが……何か相当強力な、そして特異な、なんと言うか、すべてを焼き尽くしてしまう特殊な軍事用の爆薬が使われたと思う。……そして……」
 「『そして』?」
 「妙なものが見付かったのです」
 わたしとシャルルは、ごくりと唾を飲み込んだ。
 「未使用の白い封書が、数十通分も、周囲に散乱していたのです」
 わたしは、衝撃を受けた。
 何もかも、シャルルの読み通り、宇宙賊は、単なる宇宙賊ではなく、白い封書の有力者の手下であって、心に暗い洞窟を穿った、邪悪な、白い封書の有力者が、現実にこの宇宙のどこかにいる。――その者は、わたしの両親の失踪に係わっている可能性が高い……
 「――爆風で吹き飛ばされたので、引火せずにすんだのです」
 「どんな封書だったか、もう少し詳しく分かりませんか?」


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