『天使の翼』第7章(45)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
「ウラール大修道院、という名前には昨日ちょっと触れたかしら――」
ジェーンが説明を始めた。
「――大司教様のタイトルがいかに多岐に渡っているかを話した時に……」
わたしとシャルルは、すぐに思い出して頷いた。
「ウラール大修道院院長としての大司教様は、必ずこの行事に参加なさるのよ……何故だかはよく分からない。宗教上の重要なカリキュラムは他にいくらもあって、この感謝祭は、修道院の地元との友好関係が主眼なのだから……確かにウラール地方は美しい森林地帯で、大司教様は、保養目的でよく行かれているのだけど……」
何はともあれ、よくぞスカルラッティの臨席するイベントを見付けてきてくれた……
「この日付は?」
シャルルが、ビラを指差してジェーンの方を見た――考えてみれば、わたし達には、この惑星、アクィレイアの歴に関する知識がまるでなかった――
「それが、明日なのよ――」
ジェーンが両腕を広げてみせる。
「――年次感謝祭は、明日から三日間の日程。歌合戦はトーナメント方式と書いてあるから、すぐに出発しないと手遅れになるわ」
わたしは、シャルルと顔を見合わせた。望み通りの展開だけど、何か心の準備ができていない……
「シャンタルさん――」
突然偽名で呼ばれて、わたしは、ハッと顔を上げた。
「――チャールズ?お二人のどちらか、エアバイクの免許をお持ち?」
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