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『天使の翼』第11章(54)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 「……その高原は、空白地帯とか、無人地帯と呼ばれている。遥か太古のフロンティア時代に付いた地名が、そのまま残ったのね。……行くには、山岳鉄道を使うしかないわ」
 わたしは、シャルルと顔を見合わせた。また、新たな冒険が始まろうとしている。
 
 わたしとシャルルのミッションは、二人組みの吟遊詩人に扮して、通常の――そんなものがあるとしてだが――諜報活動とは、全く違う次元で流れていく……。そんな中、身近に知り合った人々とどう距離を置くかが、難題の一つだ。都合が悪くなったからといって、口封じに殺してしまう訳にはいかない――もとより、シャルルも、わたしも、そんなつもりは全くない。でも、わたし達と近付きになることは、その人物にとって命の危険を伴う、と云う事実は、動かしようもない……
 ローラをどうするのか?
 兄ケインをどうするのか?
 ……せいぜい、常に一定の距離を保ち、逃げ場のない状況になる前に別れる、位のことしか言えないが、人と人との関係なんてどう転ぶか分からず、何の保証もない……どんなに細心の注意を払っても、どこにどんな落とし穴が待ち構えているか……シャルル流に言えば、予測不可能だ……

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