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《連続投稿500日まであと8日!》プロダクトの新バージョン戦略~新型iPhoneSEに学ぶ~
日経電子版の記事【中国スマホキラーか 新型iPhoneSE 安さの秘密を分解】は、米アップルが4月に発表した廉価版スマートフォン「iPhone SE」を分解し、その部品の選択状況の観察から、「SE」というバージョンの商品戦略を読み解く、という興味深いリポートです。
そもそも、プロダクトの新しいバージョンを開発しようという時、その開発のコンセプト、戦略が最も端的に表れるのは、そこで使われる具体的な部品の選択に違いありません。そして、それは、その部品が『低コスト化』を追求したものか、『高性能化』を追求したものか、という形で表れるのです。
さっそく、記事から、「iPhone SE」の部品の状況と中国勢の格安スマホとの比較を整理してみると――
▶「iPhone SE」の部品
(1)『低コスト化』を追求
① 液晶ディスプレー・・・旧世代の16:9
② バッテリー・・・上位モデルの6割以下の容量
③ 背面カメラ・・・単眼・小さいセンサー
〔註〕人物撮影の「ぼけ」表現などカメラ機能の向上は、部品では
なく画像処理技術で対応か。
④ 内部基盤・・・iPhone8とほぼ共通
⑤ 外装・・・従来機種と変わらず
(2)『高性能化』を追求
① スマホの頭脳である半導体(プロセッサー)・・・
iPhone11シリーズと同じ最新の「A13」チップ
② 通信部品・・・5G非対応だがiPhone8より高速
▶中国勢などの格安スマホとの比較
部品・・・・・・・・・・・・競合の廉価版・・・・・・・・・・・・・・・・・・iPhone SE
ディスプレー・・・・有機ELパネルの搭載に積極的・・・・旧世代
バッテリー・・・・・・3000ミリアンペア時以上の・・・・・・上位モデルに劣る
バッテリーが一般的
カメラ・・・・・・・・・複眼・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・単眼
プロセッサー・・・安いものが多い・・・・・・・・・・・・・・・・・・高性能プロセッサー
記事でも推測されているように、「iPhone SE」は、ディスプレー・バッテリー・カメラといった部分は『そこそこのレベル』に留め、その代わり、アップルが最も力を入れるAI・ARに対応できるポテンシャル、そして、アプリ配信などのサービスに対応できる(=複雑なアプリを滑らかに動かせる)ポテンシャルを重視し、高性能プロセッサーを選択したと考えられます。
この明確なバージョン戦略では、ディスプレー・バッテリー・カメラにはさほどこだわらないユーザーに、AI・AR・アプリによって体現されるUX(ユーザーエクスペリエンス)を低価格のスマホで提供することが目論まれているのではないでしょうか。そういったユーザーは少なからずいるはずで、そのようなユーザーをアップルのサービス経済圏に囲い込むことの意義は、どんなに強調しても強調しすぎることはないと思われます。
どの部品を『低コスト化』路線にし、どの部品を『高性能化』路線にするか、その選択によってプロダクトのコンセプトが体現され、競合するプロダクトとの差別化が達成される。部品から紐解くプロダクトの新バージョン戦略、大変勉強になりました。
《連続投稿492日目。
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