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『天使の翼』第5章(93)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 「これは、私としたことが――」
 指揮官が言っていた。
 「まずは、エアカーにお乗りください。真直ぐお城までお届けします」
 わたしとシャルルは、ほっとため息を吐いてパトロール・エアカーの後部座席に腰を下ろした。すぐにドアが閉まって、エアカーは、ふわりと宙に浮かび上がり、滑らかにすべりだした。
 今までいたのが無法地帯だとすれば、わたし達は、実に久しぶりに、ありがたい法の下の保護に与っていた。ただし……
 ただし、わたしは、一つの事実に思い至って愕然とした。――謎の有力者の手下二人は、当然、わたし達がレプゴウ男爵の前で歌の披露に及ぶことを知っている。当座は、彼らの追跡をかわすことができたけれど、彼らは、どこに行けばわたし達を見付けられるか知っているのだ……
 「……私達は、あなた方が北の洞窟隊商路に入ったことを、関守の話などからつかみました。そして、なんと、洞窟内でニードル・ガンを乱射する輩がいたと言う――」
 「宇宙賊の残党です」
 シャルルが、わたしの方を見て、わたしの懸念していることは分かっているよ、という風に頷いた。
 「なんですと!」
 「僕たちを襲ってうまくいかなかったのを、逆恨みしているのです。奴等は、僕たちが吟遊詩人だと知っているから、お城まで追ってくるかも知れない」
 指揮官は、事態が予想以上に悪いと知って、衝撃を受けていた。
 「――すぐに緊急手配します」

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