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【Appleの特許から想像する未来 第1回】血圧モニタリング


iPhoneやApple Watchなどのスマートデバイスは、コミュニケーションやエンターテインメント、ビジネスやヘルスケア管理などさまざまな快適さを提供し、今や私たちの生活に欠かせないものとなっています。
現在も新機能の開発が進められて、Appleは日々さまざまな特許を出願しています。

この連載では、そうした特許の中から、今後Apple Watchに搭載される可能性がある機能と、それらの機能が私たちの生活にもたらす影響を探ります。
初回は、今後の搭載が期待される「血圧モニタリング」について、Techチームマネージャーの早川 輝が考察します。



今回取り上げる特許:米国特許商標庁(USPTO)で2021年11月26日に公開された「血圧モニタリング」に関する特許
※本記事で取り上げるAppleの特許は公開情報に基づいていますが、実際の製品に搭載されることを保証するものではありません。技術的な可能性を検討するための参考情報としてお役立てください。

着けているだけで血圧が測定できるようになる?

2020年11月にApple Watchを用いた「血圧モニタリング」に関する最初の特許を取得した後も、Appleは米国特許商標庁(USPTO)にいくつかの関連特許を出願しています。

2021年1月5日に公開された特許では、超音波や圧力センサーを搭載したバンドを使用して血圧を測定する方法についての記載がありました。

しかし、おそらくこの方法が実際に採用される可能性は低いと考えられ、その代わりにApple Watch本体に新たなセンサー類を組み込んで測定するのではないかと考えられます。

そのように考える理由として、Appleが過去に一度もバンドで機能を拡張する製品を発表していないことが挙げられます。特に、血圧測定のためだけに専用バンドを製品化する可能性は低いのではないでしょうか。

また、この方法はApple Watch Series 9やApple Watch Ultra2以降のカーボンニュートラルへの取り組みにも反すると考えられます。

もちろん、血圧モニタリングに対するユーザーの期待は高く、例えば、睡眠中や起床時など通常は計測しづらい時間帯でも、Apple Watchを装着しているだけで継続的に血圧を計測できるようになる可能性は十分に考えられます。

すでに2022年のwatchOS 8からは、レム睡眠や深い睡眠といった睡眠ステージを測定できるようになり、睡眠時の呼吸数や手首の皮膚温度も計測できるようになっています。

このような流れを踏まえると、睡眠データの活用による質の高い睡眠の支援に加え、血圧の変化の測定が加わることも期待されます。

一方で、ユーザーが自発的に血圧を測定する機能の導入も予想されます。毎日決まった時間に血圧を測定するニーズは高く、私たちの身の回りでも、毎日朝と夕方に簡易血圧計で記録している人も多いのではないでしょうか。

このようなニーズに応えるため、「心電図」アプリのような「血圧」測定アプリが登場するかもしれません。あるいは、心電図アプリで心電図と一緒に計測された血圧のデータが表示されることも考えられるでしょう。


血圧データを介したコミュニケーションは「Wellness Aile」にも応用できる?

もし、将来的に何らかの形でApple Watchに血圧モニタリング機能が搭載され、「HealthKit Framework」を通じてサードパーティアプリでも血圧データが取得できるようになった場合、「Wellness Aile」や「 Personal Aile」でのデータ活用も可能になると考えられます。

例えば、Wellness Aileと Personal Aileのアプリには「ドクターコメント」機能がありますが、弊社独自のロジックで血圧データを考慮した新たなコメントを生成することが検討できそうです。

Wellness Aile アプリ

さらに、Personal Aileでは一定期間の血圧変化をトレンドとして分析し、管理画面から各利用者の血圧変化の状態をわかりやすく表示することもできるでしょう。これはより管理者と利用者の会話のきっかけにしていただくなど、コミュニケーションの促進に寄与できると期待しています。

血圧測定の歴史は100年以上もあるとされています。現在では持ち運びできる血圧計も家電量販店などで販売されていますが、多くの場合、計測データは血圧手帳やノートに手書き、または手動でアプリに記録されています。

しかし、今後AppleWatchに血圧モニタリング機能が追加されることがあれば、計測は自動化されて、データはiPhoneの「ヘルスケア」アプリにも自動で記録・保存されるようになると予想されます。

また、ヘルスケアアプリで家族とデータを共有する機能を利用することで、離れて暮らしている家族間でも、さまざまなヘルスケアデータを簡単に共有でき、お互いの健康を気遣ったり、大切な家族の時間を過ごしやすくなるのではないかと考えます。

「お母さん、最近血圧が少し高いみたいだから、お医者さんに行ってきたら?」というiMessageでの会話が、iPhoneとAppleWatchのヘルスケア機能で行われる日も近いかもしれません。