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”エスプーマ”がブームの立役者。 空前のかき氷ブームを解明する

異常な暑さだった平成最後の夏
気温が29℃を超えるとかき氷が売れ始めるとされていますが、今年の東京の最高気温の平均は32℃。かき氷が話題になって当然ですね。
テレビをつければかき氷特集、SNSのタイムラインはかき氷に埋め尽くされておりました。

それにしても、イマドキのかき氷は、なぜこんなに大きなブームになったのでしょうか?仮説もふくめて、ご紹介したいと思います。

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・今のかき氷ブームの”きっかけ”は何だったのか?
・ドメスティックな天然氷店も2014年にオープン。
・エスプーマかき氷こそ、大きなブームへ押し上げた立役者。
・食の流行において、食感のイノベーションは欠かせない。
・ラーメンとかき氷の共通点は、早く食べることだけではない。
・スタンプラリー的欲求の中で、かき氷は消費され続ける。

今のかき氷ブームの”きっかけ”は何だったのか?

今のようなふわふわ食感のかき氷がフューチャーされ始めたのは2015年。
原宿にアイスモンスターという台湾かき氷店がオープンしたことがきっかけでした。このかき氷の特徴はジューシーなマンゴーの味がついた氷と、その氷の絹のような削り方。オープン初日には500人が列をなして最大で7時間の待ち時間という大盛況具合になりました。

上から撮るパンケーキに飽きはじめ、横から撮るかき氷に新さを感じた頃。

かき氷が登場した2015年は原宿からパンケーキ臭が漂ってくるぐらい、街中にパンケーキが溢れ返っていました。みんながパンケーキを食べて、同じように上から(ドローンのように)撮った写真を投稿していた頃。



そんな時に登場した断面や高さを見せるかき氷は、とても新鮮に真新しく感じたことも背景のひとつでしょう。
人は注目を浴びようと(いいね!をもらおうと)すると、当然のように新しいもの(まだ知られていないもの)に飛びつきます。人は潜在的にかき氷に心が揺れ動いたのかもしれません。



事実、このあとに流行りだすのは全て横からの撮影スイーツ。断面を見せるわんぱくサンドパフェなどがこれに該当します。

上陸系だけじゃない、ドメスティックな天然氷店も2014年にオープン。

アイスモンスターが「かき氷の社会的ブーム」を巻き起こし、新生かき氷に注目をが浴びるようになったのは事実ですが、ドメスティックな天然氷専門店も前年の2014年オープンしています。巣鴨の「雪菓」、池袋「しんじろう」、桜新町「雪うさぎ」によって天然氷が大きく注目されました。
ちなみに、埼玉県秩父の阿左美冷蔵は1992年からかき氷を開始しています。


”天然かき氷”だけなら、こんなブームにはなっていない?

ブームのきっかけは台湾かき氷や天然氷店かもしれませんが、その2つの出現のみだったら現在のような社会現象までにはならず、一過性のブームで終わっていたように思います。

社会的ブームを巻き起こすには、日本人の大多数が実体験できることと、長期スパンで飽きられないことが求められます。
その視点で言うと、天然氷店は店舗数も限られていて都内で19店舗程度。ブームを巻き起こすほどの接触者を作ることは難しく、事実足を運んでいるのはかき氷への愛が深いマニアの方が多いのだとか。
また、台湾かき氷のような1パターンしかなくて、バリエーション展開が難しいスイーツが飽きられずに毎年人気になるというのも、考えにくいでしょう。

エスプーマかき氷こそ、大きなブームへ押し上げた立役者。

あくまで私の仮説ですが、かき氷ブームの重要な立役者となるのは「エスプーマ」と呼ばれるシロップをムース状にして提供するスタイルのかき氷の発明ではないかと思います。
開発したのは、下北沢にある「しもきた茶苑大山」さん。

ムース状にすることで氷への負荷を軽減させて、ムースと氷の口どけという新食感を体験できるようになりました。調理手法としてのエスプーマは一気に広がり、かき氷人気は全国に拡大していきます。

エスプーマによって変わったのは食感だけではありません。味付けも変わりました。カスタードや抹茶、チーズやアボカド、チョコなどが登場することで、より現代人の女性が好きな濃くて馴染みのある味をかき氷に付与することができるようになったのもひとつの要因ではないでしょうか。


食の流行において、食感のイノベーションは欠かせない。

昭和の時代は、真新しい食べ物が「発見」されればブームになりましたが、平成以降はそうはいきません。平成以降は、愛された既存のお菓子に何か食感のイノベーションを与えたもの(スイーツ2.0と私は呼んでいる)したものがブームとして生き残りやすいです。

例えば、生キャラメルや生チョコ。これは《柔らかしっとり食感》が《既に愛されているお菓子》にプラスされたもの。
このイノベーションが進むと、《人気お菓子×人気お菓子》の最強の掛け合わせが一般的となってハイブリットスイーツと呼ばれるようになりましたマカロンアイス(マカロン×アイス)や、クロワッサンたい焼き(クロワッサン×たい焼き)などがその好事例です。


ラーメンとかき氷の共通点は「早く食べること」だけではない。

2014年に「マツコの知らない世界」でかき氷が特集された時、マツコさんが「かき氷屋さんはラーメン屋さんだと思え」と名言を放っていた通り、かき氷もラーメンも速攻で食べることが求められますことから似ていると言われていますが、今回調べてみると「早く食べる」こと以外にも共通項が見えてきました。

かき氷は、ラーメンと同様にご当地感が出るグルメ

かき氷に欠かせない”氷”。
水源の近くだったり、管理しやすいところで専門店を営業する方も多いため、お店が都心に集中する都市型グルメというよりは、各地域で生息するご当地専門店が多いのも、かき氷の特徴。これはラーメンのご当地ラーメンとも似ていますよね。

スタンプラリー的欲求の中で、かき氷は消費され続ける。

速水健朗氏の「ラーメンと愛国(講談社現代新書)」の中で、ジロリアンによる「ラーメン二郎」のゲーム的な消費という一節があります。

1990年代半ば以降のラーメンブームには、インターネットの台頭が分かちがたく結びついている。(中略)インターネットとラーメンの相性のいい関係の中でも、特に「ラーメン二郎」とネットユーザーの相性のよさは抜群だったのだろう。それぞれの店舗の味が違うことなどがネットによって可視化されていった時期と重なる。客はまるでスタンプラリーに参加するかのように、二郎巡りが行われているのだ。

このスタンプラリー感かき氷にもありませんか?
(まぁ、ブームとなった多くのものがその要素を含んでいると思いますが)シルエットや大きさ、味やお店の物語をリサーチして転々とかき氷店へ足を運ぶお客さんたちは、自身のスタンプラリー表(インスタ)にスタンプを押したい欲求の中で、かき氷を消費しているようにも思います。


いかがでしたでしょうか?
すぐに食べないと消えてしまう儚きスイーツの「かき氷」。季節限定やインスタ映えだけでは括れない背景がレイヤーのように重なって、ブームを大きくしてきたのかもしれませんね。

それでは、また。

あつみ



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