八月三十日・三十一日・九月一日@ブダペスト、ウィーン

八月三十日

今日は引っ越しの日。朝ご飯を食べて用意を開始する。後はでかいリュックにパッキングをして洗濯を済ませるだけだ。ほとんど準備は終わっているので洗濯を待っている間麻雀をする。全然勝てない。

麻雀をしてたら新しい入居者がくる。ヨルダンから来たらしい。何だかハンガリーにいると日本であまり聞かない国からの留学生がいて面白い(これまでにもカザフスタン、レバノン、グルジアなど)。挨拶をして色々教えてあげる。お礼に可愛いマグネットをくれる。

荷物はまとめたら合計百リットルのバックパック+紙袋に入れた植物になった。一人でかろうじて運べる。かろうじて運べてよかった。五時半に退去して鍵を返す。一年住んだがまあまあ良いところだった(昔住んでたアパートに比べたら狭いし共同だし辛かったが、その分家賃が三分の二ぐらいで立地(ブダペスト第一区)はよかった)。

最後に近所の猫が遊びに来て我が部屋で寛ぐ。すっかり住みつかせてしまったが次の居住者に迷惑がかからないことを願う(もちろん窓を開けなければ勝手に入ってはこれない)。

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ブダペストには三年住んで、でもまだ三年しか住んでいないんだな、もっと居たかったなと思う。すぐに帰ってこれるといつでも思っていたけど、やはりこのご時世ではどうなるのかわからない。

六時四十分発のウィーン中央駅(終点)の電車に乗る。すごく荷物が多かったので、最終到着地が目的地でよかったなと思う(ゆっくり荷物を下ろせるので)。移動中、特に国境間際が不安すぎてSNSなどをして不安を紛らわせるが、特に何もなく移動できた。ハンガリー政府が二日前に突然九月から国境を締めるという発表をしたばかりだったので、もしかしたら私も何か影響を受けるのではないかとよくない想像ばかりをしていた。

渡ってしまった今となっては何をそんなに心配していたのかと思うほどだが、しかし何が起こるかわからない。なるべく不安な気持ちにならないようにあれやこれや事前に準備しておく方なのだが(本当に必要なことに関しては)、このパンデミック下ではあまりにも予測できないことが多すぎて準備しようもなく困る。

十時前に中央駅について今日泊まる宿の人に連絡するがすぐ連絡がつかない。これまで悪いこと続きだったので、もしかして連絡付かないままお金を取られたのではという気持ちにすらなる(※Airbnbを介しているので何かあればそんなことがあれば金は返ってくるが)。三十分後ぐらいに連絡が来て(大家さんはあまりレスポンスがそもそも早くない模様)、家に入れてもらう。

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昔ハンガリーで住んでいたような19世紀に建てられた古い建物の一室を借りた。想像以上に部屋が良くて広かったのと、大家さんのセンスがとても素敵で初めて暮らしについての「学び」を得るような気持ちになり、これからの生活が楽しみだ(大家さんのキャラクターも少し癖があり面白い)。

八月三十一日

2017年に博士課程を始める前に買ったMacBook Proだが、これまでにすでに二回修理してもらったがまた同じ症状(ディスプレイの変色)が発生したのとバッテリーに問題があるので、アップルストアに行く。ウィーンのいいところはアップルストアがあるところだ(どの国にも正規店があるわけではない)。

バッテリーに関しては外出規制中でアップルストア全店が閉まっているときに発覚して、既にチャットで相談してあった。その時はかろうじてAppleCare+の有効期間内だったので、できればタダで交換して欲しいなと思いつつ、ディスプレイとバッテリーの問題を説明し、保険の話をすると相談の上今回限りはタダにしてくれるという。とても嬉しい(総額十万円ほどである)。二週間ぐらいかかるらしいので、パソコンを預ける。

アップルストアは第一区(繁華街)にあるので、ついでに百貨店ユリウス・マインル(オーストリア人の先輩に聞いたら、マインルというよりはメンドルという発音のようだが)に寄っていろいろ物色した後、ソーセージ、チーズ、ジャムを買う(お高い百貨店なのであれやこれや買えない)。

夕方に大学に行ってサボテンを運んでおく。このサボテンはハンガリーで買ってもう三年ほど一緒にいるが雑に扱っても今のところ死んでいない(今回ハンガリーから運ぶときも根っこから落ちたが生き残って欲しい)。

九月一日

今日から一応新学期なので、自分用の鍵がもらえる。鍵を取りにラボに行くとラボマネージャーがいて、ハンガリーの国境閉鎖の話などをする。ラボマネはハンガリー人だが私と一緒で帰れるけど帰ったら十四日間の隔離か陰性結果を二回出す(実費)という条件なので、なかなか帰りにくくなるなぁと話す。

新しいオフィスは既に二週間前に来ていて、あらかたセットアップしておいた。ラボのMacBookを借りているので、それをモニターに繋いで必要なアプリを入れたり環境構築をする。それだけで一日終わる。

オフィスで作業したりぼーっとしたりしてると、カナダ人の先輩が部屋を訪ねてくれる。先輩も国境が閉まるギリギリにブダペストを出発したようで、私と同じぐらいに着いて今はAirbnbに泊まってるらしい。白人だが(というのも変だが)、同じ第三国からなのでビザのことなどを聞いてみるが、どうも先輩はあまり急に申請するつもりがなさそうである。というのは私たちは一応ハンガリーの滞在許可証を持っているので、90日間は何もせずにウィーンに滞在できるのだが、正直ヨーロッパ内にいればどの国に90日いるのかを正確にカウントすることはできないので、多少長めにいても大丈夫だろうと思っているようだ。

家に帰って料理を作る。ラジオが置いてあって、つけるとオペラが流れてくる。ミサの音楽が流れてくる。オーケストラのコンサートが流れてくる。なんだか身体がゾクゾクしてちょっと感動する。引っ越すまでに何度もウィーンに来たことがあった、知ってるつもりだったし特に何の期待もしてなかったが(医療機関はハンガリーより良いぐらいか)、どうも私はウィーンが好きなようである。そしてこのアパートメントが特別私のテイストであることは間違いない。