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3. 学校を辞めることで失うものは?

私は日本語学校を退職したのと同時に、フリーランス、それもオンライン専門のノマド日本語教師に転向しました。「日本語教師」という肩書は変わりませんが、やっていることや生活スタイルはかなり違います。

前回の記事で、ノマド日本語教師の魅力について書きましたが、当然“学校で教えるからこそ得られるもの”もあり、ノマドを選ぶなら、それらを手放す覚悟がなければなりません。

今回の記事は、私が学校を辞めたことで失ったものを並べてみます。

①教え方を教えてもらう

私が勤務していた学校ではチームティーチング制をとっていたので、毎週ミーティングを開き、教える内容のすり合わせをしていました。教え方のコツ以外にも、例えば、この単語はまだ教科書に出てこないけど、この課の文法とよく一緒に使うから紹介しよう、などといったことを話し合いました。

これは私にとって、とても助かることでした。他の学校でも勤務経験がある先生が、「自分で何時間もかけて調べなければいけないことを、この学校では最初から教えてもらえる」と言ったのを聞いて、自分は恵まれた学校に就職できたなーと思いました。

このままこの学校で働いていれば、上級まで自信を持って教えるようになれたのかもしれません。でも、あまりにも忙しかったので、私は3年が限度でした。中級のテキストは1学期(3ヶ月)しか扱わず、他は「みんなの日本語」だけでした。

「こんなに経験が浅いのに、辞めてしまったらもったいないんじゃないか?」迷いもありましたが、私は初級専門でもいいから、自由に働ける方の道を選びました。

②日本語教師とのリアルな接触

オンライン専門だと、他の日本語教師どころか、丸一日他人とのリアルな接触がない、なんてこともあり得ます。私はそれが嫌なので、ほとんど毎日どこかしらに出かけて人と会話しますが、日本語教師と話すのは、以前勤務していた学校に立ち寄ったときだけです。

学校で働いていたとき、同僚との会話で得られる情報は日本語の教え方だけではありませんでした。タイ生活に役に立つ情報の多くは同僚から得ていました。

学校を辞めてからは、情報収集の手段としてTwitterを使うようになりました。これでタイの最新情報を入手したり、いろいろな国で活躍する日本語教師の方達とつながれるようになりました。

③大勢の前に立って話す

私は子どもの頃から、人前で発表するのが好きでした。ピアノやバイオリンはあまり上手じゃなかったので緊張しましたが、歌うのや踊るのは大好きでした。日本語教師になってからは、毎日教室の前に立って、生徒さん達の注目を浴びながら授業ができるので、とても気持ちよかったです。(もちろん教師になりたての頃は緊張で手が震えていましたが…)

フリーランスになってからは、レッスンはすべてプライベートですから、大勢の注目を集めることも、リピート練習で大勢の声が跳ね返ってくることもありません。その点はちょっと寂しいです。

④授業以外の業務経験

学校で働いていたときは、授業準備以外にも山ほど業務がありました。宿題の添削、試験や名簿の作成、成績処理、イベントの企画、ミーティング、プレイスメントテストなど、一人前の教師になる上で不可欠なものばかりですが、やはりとても大変でした。

今は、レッスン以外の業務と言えば、一旦教案と教材さえ準備してしまえば、あとは一部の生徒さんの宿題の添削と、スケジュール管理、フィードバックの入力ぐらいです。それだけじゃ物足りない!という方は、学校の教師の方が向いていると思います。

逆に、最初からフリーランスとしてプライベートレッスンばかりしていたら、日本語学校が一体どんなことをしているのかを知ることができないので、ちょっともったいないと思います。大変ではありましたが、私はとても良い経験ができたと思っています。

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いかがでしたか。

これらの「失うもの」と、前の記事で紹介した「得られるもの」を、自分にとっての優先度で天秤にかけて、「失うもの」の比重の方が大きいと感じたら、学校で働く方が合っていると思います。

私にとっては「得られるもの」の方が大きいと感じたので、ノマドに転向しました。その結果は、「得られるもの」が想像していたよりもずっと、ずーっと大きかったです。

ノマド日本語教師になろうかな、と思っている方は、この記事と前の記事をご参考に、シミュレーションしてみてくださいね!

最後に、とても大切なこと。

”学校を辞めることで失うもの”の中に「安定」も含まれると考える方が多いのではないかと思います。自分が実際フリーランスになってみて、それは違う!!と確信しました。

2020年3月から、コロナウイルスの影響で、タイでは7月まで教室で授業ができなくなりました。4月からの新学期、日本語学校の学生は激減しました。7月、教室で授業ができるようになっても、学生数はそれほど大きく増えませんでした。当然、元同僚の教師達のお給料は減ったはずです。

日本の日本語学校でも、留学生達が来日できず、同様の問題を抱えているのではないかと思います。学校に頼っていると、このようなリスクがあります。

一方、私はというと、4月は世界中で"Stay at home"でしたので、オンラインの生徒さん数が激増し、月収が一気に倍になりました。今はもうそこまでの勢いはありませんが、新しい生徒さんは簡単に増えます。

ノマド日本語教師とは、自分で稼ぐスキル、つまり「生きる力」そのものだと思います。そして、それこそが本当の「安定」ではないでしょうか。

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