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#31 ボリビア・ラパスの交通グラフィック−滞在外国人向けに情報をシンプルに伝えるデザインプロジェクトがまもなく完成(のよてい)

2022年9月25日 dómingo
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配属先のグラフィックデザインコースで進めている活動のひとつで、「ラパスの公共交通の情報を滞在外国人向けに整える」というテーマで動かしているデザインプロジェクトがある。なにより私がまったく公共交通を使いこなせていなく、どこで情報を手にできるのか、もわからない、という状況だった。ラパスに着いてすぐの頃は。

3月からプロジェクトをはじめ、最初7人ほど参加していた生徒は、現在4人まで、減った。

ワイワイしてたあの頃・・・なつかしい。

そしてプロジェクトに参加してくれていた担当教員は二人ともこの7月で学校を退職。それぞれに、エンジニア、警察官、と勤めながら非常勤で授業を持っていたような形なので、しかたない。
なので、オーガナイズが少し複雑になり、顔を合わせられる頻度も格段に減ったいま、プロジェクトが形になるのか見えないような状況が続いていた、このところ。しかし昨日、各グループの仕事の進捗を確認する定期ミーティングをオンラインで実施し、そこで、おもったよりも形になってきていることが確認できたので、ほっとしている。
そこで今日は、ラパスの交通事情含め交通情報のデザインの現状と、ここまで私たちが、たどったプロジェクトの経緯をお伝えしようとおもう。今後、ラパスを訪れることがあれば、ぜひ私たちの作ったウェブサイトで交通手段の利用に関しての基本情報をゲットしていただきたい。(実用化されれば!)

まず、基本的な情報として、ラパスの公共交通機関は、
空の移動の「テレフェリコ」

たまに、気分転換するためだけにも乗る。

通常わたしたちがイメージするバスの「プーマカタリ」

とにかく車体のデザインが目を引く

地元の人が日常的に一番よく使う乗合バス「ミニブス」

私も今では、一番よく使う交通手段

あと、ボリビア人の友達もあまり使わない、、と言っていた、
「マイクロバス」(ビジュアル的にはそそられるものがある)

坂道を上がる際、超低速になり、後続車にクラクションを鳴らされまくるマイクロ

あとはタクシーになるが、割高になるのであまり頻繁には使わない。
と、こんな感じ。
私はミニブス、テレフェリコ、プーマカタリの順番で頻度高く使っている。いまは。
最初はテレフェリコ以外、使い方(ルート、価格、運行時刻など)がよくわからなく、人から教えてもらったり、ミニブスに関しては現地の友人知人と一緒にしか乗らなかったくらい、そのシステムがよくわからなかった。
例えば、テレフェリコ、プーマカタリは、ルートマップ(乗り換えの地点含め)が存在するので、独力でも理解が可能。それぞれにWEBサイトも存在するので、使いやすさは別として、探せば基本の情報は手に入る。

テレフェリコの駅にあった路線図
市内中心地にて。プーマカタリの路線図
テレフェリコとプーマカタリの乗り継ぎを含めたルートマップ

テレフェリコは時刻表などなくとも、始発と最終の時刻が決まっており、ずっと動いている。一番確実なので、外国人にとっては最も安心して使える移動手段である。
プーマカタリは、路線図もあり、バス停もちゃんとあるので時刻さえわかれば、というところだが、この「時刻表」があってない、というか機能していないのが一番の難点。プロジェクトの最初の段階で、滞在外国人にアンケート調査、聞き取りを行なった時も、Horario(運行時刻)をどうにかしてほしい、という意見が目立った。

アンケートの中から「何に一番困っているか」の回答を書き出し、どこに問題があるか検証。

ラパスの交通事情に慣れている人、と、そうでない人との、情報源や、何の情報を一番必要としているか、の違いをみると、慣れていない人はやはり「ルート」を一番知りたい。そして、そもそもどこで基本的な情報を入手できるのかがわからない、という意見。大半が「人からの情報」で慣れていっているという状況だった。(それはそれですごいことだな、と思うが・・・)
生徒たちにしても「ミニブスの使い方どうやって覚えたの?」と聞くと、「家族に教えてもらった。」とか、新しい場所に行くときは「友達とか、知り合いに教えてもらう」と、言う。おー、口づたえ。

アンケートの結果を見ると、交通事情に慣れていて、より広範囲を動いている外国人はミニブスの利用率が高かった。ので、個人的にはミニブスの基本のき、をガイドブックなりに整えるのもおもしろいな、とおもったのだが、「ミニブスの情報を扱うなんて、無理無理無理〜〜〜!!!」と、みんな口をそろえて言うのだ。「なんで?」と聞くと、ルートが200以上はあって、全部の情報を伝えるなんて到底無理。とのこと。ほう。
実はミニブスの車体の上にはそれぞれルートの番号がふってあって(と、そんなことどこで知るの?)、さらにフロントに並べられている行き先を示す文字表示もその背景の色がエリアを示している、とか。。。私にしてみれば、プロジェクトミーティングでいつも「そんなルールがあったの?!」の連続。

車体の上に番号あるわー。。。全体の情報量多くて逆に気づかなかった。

私としてはしかし、ミニブスを使いこなせるかどうかが、街中を動ける自由度に比例するよなー、とおもいつつ。
まあ、それもあるが、一番の問題点は「どこで基本的な交通情報が手に入るかわからない」というところ。観光案内所もあるにはあるが、交通情報は提供していなく、しかも土日は閉まっている。おいっ!
市内のそういった環境、あと、現状使われている交通情報に関するグラフィックなどを集めてリサーチをした。

項目をシートにまとめ、生徒、教員にリサーチを依頼。

リサーチの前には、私が以前住んでいたロンドンの交通グラフィックを参考資料としてプレゼンし、ラパスとどういった点が違うのか、ロンドンで私がどう公共交通を使いこなせるようになったかのプロセスを交えて説明した。

なぜロンドンの交通情報デザインがわかりやすいのかのポイントを、伝える。
これらのポイント。ラパスとは違うよねー、と。

こんな感じのプロセスを踏んで、滞在外国人が容易にアクセスでき、基本の交通情報を提供するウェブサイトをデザインすることになった。(というか、、、した!)
エンジニアの同僚がいたので、システムはつくれる、ということもあり。そして、市内中心部のマップグラフィックも、現状はごちゃついているものしかなかったので、「公共交通を使いやすく」に特化した、新たなマップをデザイン。これは警察官でありグラフィックデザイナーでもある同僚が担当。私はビジュアル・アイデンティティと、全体のプロジェクト進行を担当。3チームに分かれ、それぞれに生徒が1〜2名ついての作業を進めていた。この2ヶ月ほど。

私はサイトの名前とロゴタイプ、イメージカラーなどを生徒一人と共にデザイン。名前は二人で考えた案の中から、他のメンバーの投票で、「La Paso」に決定した。La Paz[ラパス]を Paso(歩く)の造語。ロゴは細かい調整の末、こんな感じに落ち着いた。

デザイン by Melissa Alvarez Perez

昨日のミーティングで、他のチームの進捗も確認。
市内のマップデザインもデジタルバージョンの基本ができてきていた。ウェブサイトの方は、他のチームの制作待ちのところがあり、構成だけできている段階。当初の予定では10月末には完成予定だが、ちょっと押すかな。それでも、途中、存続の危機にあったような(人が減っていく、ミーティングに来ない、、という)状況を振り返れば、よくここまでこれた、とおもっている。
最後、実用化に向けて、外部へのプレゼンテーションまで持っていければ、とおもっているので、なんとか形にしたい。ま、ここから形にするのは、私ではないのだけれど。みんな頑張ってくれい!

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ATSUKINO(アツキーノ)

2006年〜日本でグラフィックデザイナーとして働いた後、2013年に渡英。スコットランドの The Glasgow School of Art で修士号(Communcation Design: Graphic Design)を取得。帰国後はアートディレクター、キュレーターとしてデザインディレクションとともに現代アートの展示企画制作なども行う。海外での生活、旅を通じて得られる新たな表現や人との出会いが次の可能性につながると信じて動く、旅するデザイナーでありアーティスト。現在は南米のボリビア、ラパスにてJICAボランティア活動中。デザイン教育環境の改善にあたっている。
http://nakanoatsuko.com/
https://shadow-candle.com/

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