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「夫に思いやりを向けられない。どうすればいい?」にお答えします。

夫がそばにいない時には良い関係に戻ろうと思えるのだけど、いざ夫と顔を合わせると心のシャッターが降りてしまう。過去、傷つけられたり裏切られた気持ちになり、無意識に傷つくことを恐れているのかもしれない。

そんなコメントをVoicyでいただいたので、「夫に思いやりを向けられない」場合どうすればいいのか、Voicyでお話させていただきました。

この記事では詳しい解説を書いています。合わせてお読みください。

夫に思いやりを向けられず苦しい思いをしている場合、いくつかの可能性が考えられます。

一つは、過去に夫から受けた心ない言動がトラウマとなっており、夫に接するたびにその感覚がフラッシュバックするというものです。

なんて大げさなと思う人もいるかもですが、夫に対する反応を見るとPTSD症状と重なることは多いのです。

一般的にPTSDは、災害や事件に巻き込まれることで起こりますが、その症状は驚くほど夫婦関係に悩む女性たちの特徴と合致しています。

まず、苦しみを感じた出来事が頭の中に入り込んでくるかのように、繰り返しよみがえり、コントロールすることができない侵入症状
女性たちの多くは、夫の思いやりに欠けた言葉が何度も頭の中をかけ回り、何年経っても忘れられず、ふとした瞬間に訪れるその思考に悩まされています。

次に、その出来事を思い出させるあらゆる物事の回避

夫に触れて欲しくない、会話もしたくない、夫が触れたもの(服や夫の部屋など)には絶対に触りたくないなど、女性たちの多くは激しく夫との接触を回避しようとします。

そして、感情が麻痺し、自分が他者から切り離されたように感じ、楽しみへの関心が薄れ、時にうつ病も伴うのがPTSDの特徴ですが、同じような感覚を感じた女性はきっと多いかと思います。

また、PTSDによって、問題の出来事に対する考えが歪み、自分や他者を責め、罪悪感、恐怖心、怒り、恥などネガティブな感情にとらわれ、幸福感を感じられず人を愛せなくなることもあります。

「夫への恨む」はいかにして生まれるのか?より

こういった症状が強く出る場合、トラウマ治療専門家のカウンセリングを受けることをお勧めします。自分一人では抱えきれないからです。

上の記事で、トラウマ治療専門家の矢野裕之さんが「夫婦の場合、トラウマを与えた加害者と受けた被害者が同じ家の中で生活し続けることになり、それは他のトラウマと比べると異常である」というようなことをおっしゃっていました。

災害や事件に遭遇した場合、毎日同じ目には合いませんし、加害者と会うこともありません。

だけど、言葉や肉体の暴力を受けた場合、加害者である夫と被害者である妻は、毎日顔を合わせ続けます。そう考えると普通のことじゃないですよね?

辛い記憶がいつまでも喚起され続け、心安らぐ日はなかなかやってきません。だけど、多くの人はその異常性に気がつかない。夫婦は同じ家の中で暮らすのが普通だから。閉じられた箱の中で、目に見えない暴力が永遠に繰り返される。

そんな日常、普通に考えて辛いだけです。

だからこそ、(夫婦関係のことなんて、誰かに相談するほどじゃないし…)と抱え込まずに、専門家の力を借りて欲しいのです。

もし、どうにもならないほどの感情に巻き込まれ、夫に対する憎悪、自分に対する罪悪感の渦が大きくなる一方であるなら、一度、トラウマ治療専門家の方を訪ねてみてください。

費用は多少はかかりますが、きっと何かしら得るものがあるはずです。

次に、もう一つの理由について説明しますね。

ぼくは以前、毎日終電まで働き、週に2回は徹夜する仕事をしていた時期があったのですが、失敗を誰かに押し付ける人が結構多かったんです。ぼくも同僚や取引先に優しくすることができず、夫婦関係もギクシャクしがちでした。

仕事や育児でものすごく忙しいと、同僚や子供たちに対して優しい気持ちを持つのって難しいですよね。自分の心が思いやりで満たされていないと、他の人に思いやりを向けることはできないんです。

だけど、ぼくらは他者から思いやりをしょっちゅう受け取ることはないですよね。そりゃあ、同僚やパートナーから毎日優しくされたら嬉しいけど、彼らもこちらと同様に「思いやりバンク」の残高がそんなに多くないですから。

それに忙しさとかパートナーの過去の言動への恐怖とか、そういった脅威を感じている段階から何か行動を起こすことは難しいものです。

人の心は、脅威システム(恐怖により、戦うか逃げるかの反応を取る)、ドライブシステム(何かをやろうとする反応)、スージングシステム(心を落ち着かせる)の三つに分かれていると言われ、脅威システムからいきなり行動してもうまくいかず、スージングシステムを迂回することで楽に行動ができるようになります。


では、具体的にどうするか?

ここで効果的なのが、自分から自分への思いやりです。心理学用語でセルフ・コンパッションといいます。これがスージングシステムを活性化させます。

ぼくはコンパッションを専門家の方から学んでいる最中なのですが、自分自身をコンパッション(慈悲や思いやりと訳される)で満たし、他者に対しても向けるために、三つのワークに取り組んでいます。簡単に紹介しますね。

一つはコンパッション・ビーム

なにそれ…?と思いますよね?ウルトラマン?って感じですよね。

これは、他者に対して思いやりを与える訓練でして、例えば仕事の打ち合わせが終わり、その人が帰った後に心の中で(あの人が幸せでありますように)と勝手に願うんです。思いやりをビームのように勝手に送るわけです。

怪しい…ですよね。ぼくもそう思いました。だけど、これが他者への思いやりに敏感になる訓練になるんです。パートナーに対する感謝の気持ちが芽生えやすくなります。

同時に、思いやりを与える時と受け取る時は、脳の同じ部位が反応していますので、自分自身も思いやりを受け取ったように感じ、癒しを得られる効果もあります。

二つ目は感謝のワーク。誰かから思いやりを受け取ったと感じたことを5つほど書き留めます。例えば、同僚からお菓子をもらった、落とし物をしたら知らない人が拾ってくれたとか、簡単なものでもOKです。

すると、他者からの思いやりに敏感になり、心がコンパッションで満たされやすくなります。

三つ目はスージングシステムを活性化させる具体的な行動を一日10分程度おこなうというもの。例えば、緑の中を何も考えず散歩する(ぼくはこれを1時間に一回やってます)、会社帰りにたまに美味しいおやつを食べて帰るとか。運動とか瞑想でもいいです。自分の気持ちがリフレッシュする何かですね。

「自分に優しくする」というと、自分を「甘やかす」と捉えてしまう人もいるかもだけど、自分で自分をいたわってあげることは甘えじゃないと思うんです。

夫婦関係が難しくなってくると、もっとも強い影響を受ける家庭の中で、安らぎや思いやりを感じられないわけだから、どんどん辛くなってきます。そんな状況ではパートナーに優しくすることは難しいですよね。

だからこそ、自分で自分に思いやりを向けるセルフ・コンパッションが効果的なんです。自分の心を思いやりで満たすためにも、パートナーに思いやりを向けるためにも。

セルフコンパッションの本はたくさんあるけど、これが一番わかりやすかったです。ビジネスマン向けに書かれてるけどコンパッションの概念を簡単に理解できる内容になっています。

もっと深く知りたい方は少し硬い文体だけどこちらがおすすめです。

少しでも参考になれば幸いです。

-本日のVoicy

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-夫婦関係学ニュースレター


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