別れるべきはパートナーではなく、心のなかの「あの人」である。
妻には、もっとバリバリ働いて欲しい。
そう思っていたことがあるんです。
双子が生まれて経済的な不安におびえていたぼくは、なさけないと思われるかもしれませんが、フルタイムの共働きでガンガン稼ぐしかないと考えていたんです。
なんどかこの件は話し合ったのですが、妻としては子どもたちの成長を間近で見守りたいという思いがあり、その考えを尊重することになりました。
今の妻は、個人事業主として働きつつ、妊娠中に取得した資格を生かしたパートもしています。
今のぼくは、妻にもっとガンガン稼いで欲しいとは思わないのですが、結婚したばかりの頃や、子どもが生まれた頃にはそう思っていたんです。
なぜ、ぼくは妻にフルタイムで働いて欲しいと思っていたのか?
経済的な不安があったことは確かですが、3人目が生まれた今ではそう思ってないので、おそらくそれだけが理由ではなかったのだと思います。
おそらく、フルタイムで小学校の教員をしていたぼくの祖母の存在が、ぼくのなかの「家庭の女性のイメージ」に大きな影響を与えているんだと思うんです。
ぼくのなかにある「妻のイメージ」が変わったからこそ、ぼくと妻は、この件でもめることが少なくなったんじゃないのかなと思うんです。
誰もが心のなかに抱いている、夫婦や家族に対する「イメージ」や「価値観」や「思い込み」。
それはどこからやってきたのか?
それを理解するだけでも、夫婦関係は少し楽になるのかもしれないなって思うんです。
今回の「アツの夫婦関係学ラジオ」では、心のなかにある「夫婦のイメージ」を意識することによって、夫婦関係をより良いものにできるというお話をしました。
ぜひ、ポッドキャストと合わせてお読みください。
◇
ぼくの祖母はフルタイムで小学校の教員をしており、生徒や教師から慕われていた祖母の家(ぼくが生まれ育った実家)には、しょっちゅう誰かしらが遊びに来ていました。
ぼくの母はパートで働いていましたが、ぼくの実家では祖母の存在感がもっとも強く、ぼくのなかに「バリバリ働く女性」が「女性」のイメージとしてすりこまれたんじゃないのかなと思うんです。
ぼくと妻は、妻がどのような働き方をするかについて、少しずつ少しずつ、時間をかけてなんどか話し合いました。
今しかない子どもたちの成長を見届けたいという妻の思いや、子どもたちとの会話のなかで妻が感じていることを聞かせてもらうことで、ぼくの心も少しずつ変わっていきました。
経済的な不安を感じることもあるけれど、それはぼくがなんとかしようと腹をくくり、「フルタイム共働きでなければならない」という思いは、いつしか消えていったのです。
一時期は(なんで、こんなにぼくの言うことをわかってくれないんだ)と怒りを感じたこともあったのですが、ぼくがフルタイム共働きにこだわっていた理由は、ぼくの心のなかにある「女性のイメージ」に対する思い込みだったんだと思います。
夫婦・カップルのためのアサーションという本のなかにこういう一節があります。
アメリカの家族療法家であるフラモという方の言葉だそうです。
ぼくらは無意識のうちに育った環境の影響を受けていて、その影響によって、心のなかに「夫婦像」や「家庭像」を作り出すんです。
そして、その枠組みを自分の妻や夫にあてはめようとする。
でも、自分の親と自分のパートナーは別人ですから、その枠組みはパートナーにはあてはまらないんですよね。
ぼくの場合、祖母から強い影響を受けて育ったので、「フルタイムでバリバリ働く女性」に対する強い尊敬の念や、「女性像=フルタイムで働く人」というものが作られたんだと思います。
でも、妻はまったく違う環境で育っているので、ぼくとは違う枠組みを持っているんです。
ぼくが持っている枠組みは妻にはあてはまらず、妻が持っている枠組みもまた、ぼくにはあてはまらないんです。
ぼくらは、なんども話し合いを重ね、なんども心のなかを共有し合い、やっと、自分たちにとっての「夫婦像」を作り始めることができたなって思うんです。
それはまだまだ完成してないし、とても不安定で、他の人のイメージに揺さぶられそうになることもあるけど、ぼくらがお互いを見つめることを忘れなければ、きっと大丈夫なんじゃないかなって思うんです。
心のなかにある両親や祖父母の影響を断ち切り、自分たちにとっての幸せを、自分たちの価値観で作ろうとすることが、夫婦関係なのかもしれないなって、今のぼくはそう思うんです。
ポッドキャストでは、「夫婦・カップルのためのアサーション」という本をもとに、「別れるべきはパートナーではなく、心の中の親である」ことについて解説しています。
あわせて聴いていただけるとより理解しやすいと思いますので、ご興味ある方はぜひお聴きください。
■アツの夫婦関係学ラジオ
#447 別れるべきはパートナーではなく、心の中の親である。
※「アツの夫婦関係学ラジオ」は毎週月曜木曜の朝5時配信です。
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