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夫婦の絆を弱める、共同体験の欠如

妻から嫌われた男性たちの話を聞くなかで、一つの共通点があることに気がつきました。

それは、妻との共同体験の欠如です。

日常のなかで一緒に出かけない、家事をしない、食事すら一緒にとらない。

子どもが生まれても生活スタイルを変えず、妻と一緒に育児をせず、朝早く仕事に出かけ、夜遅くに帰ってくる。

そんな人が多かったです。

特に産後、育児に力を入れなかったケースは、全員に当てはまりました。

これは単に「育児を妻任せにした」という話ではなく、二人の絆を作るチャンスを見逃したことを意味しています。

ぼく自身、最初の出産(双子)では、子どもが生まれてすぐ社員旅行に出かけ、海外出張に毎月行き、妻との共同体験の機会の多くを失ってしまいました。

その結果、向こう岸が見えないほどの大河がぼくらの間に横たわり、どれだけ声を出そうとも奔流に掻き消され、ぼくの声が妻に届くことはありませんでした。

囂々と流れるその大河が消え失せたのは、子どもたちが3歳になってからでした。

なぜ、共同体験の欠如が夫婦を引き裂くのか?

そこには3つの理由が存在します。

相互理解タイミングの喪失

子どもが生まれるタイミングが、ちょうど仕事の頑張りどきだった。

経験を重ね、一通り仕事ができるようになってきた。後輩の指導も任せられるようになり、もう少し深く仕事に関わるようになれば、出世も見えてくる。

きっと、そんな人も多いと思います。

ぼくもそうでした。

転職したばかりだったぼくは、社内の信用と出世の道をつかむため、多くの人が敬遠する面倒な仕事を引き受け、国内外の出張にも進んで行きました。

信用を積み重ね、このまま数年頑張れば、出世もでき収入も増えるかもしれない。

最初の出産はまさにそんなタイミングだったのです。

まだまだ会社で信用を積みたい。家庭を言い訳に質の低い仕事をしたくない。

そう思っていたぼくは、双子が生まれてからも今まで通り仕事を続けました。いや、稼がないといけないと思っていましたので、今まで以上に仕事に精を出しました。

その結果、大きな仕事を任せられるようになり、社内での立場は安定しましたが、次第に妻とのコミュニケーションがうまくいかなくなり、お互いに「分かり合えない」と感じる機会が増えていったのです。

ぼくらの間にいったい何が起こっていたのか?

それが、お互いを理解し合う機会、相互理解タイミングの喪失でした。

当時、ぼくはほぼ残業をせずに家に帰っていましたが、それでも家に着くのは19時ごろ。そこから家事や育児を行なっていましたが、せいぜい3〜4時間程度です。

早朝の夜泣き対応を含めても、せいぜい5〜6時間。

妻は、睡眠時間(約5時間)を除く、約19時間を子どもと過ごしていました。

その差は3倍。ぼくと妻は、一緒に家事育児を経験する体験時間が圧倒的に少なかったんです。

一日中、子どもと一緒に過ごす感覚はどういったものなのか?

行けるところも少なく、駅前をベビーカーで徘徊する毎日がどういうものなのか?

トイレにも満足に行けず、子どもたちの悲鳴のような鳴き声を聞きながら、急いで用を足す感覚は?

子どもを風呂に入れるだけで精一杯で、満足に自分の体を洗えない感覚は?

子どもたちに授乳や離乳食をあげるだけで精一杯で、飲み込むように菓子パンを口に放り込む感覚は?

そういった妻の感覚を、ぼくが体感することはありませんでした。

土日は一緒に家事育児をしていましたが、週に五日間、朝から晩まで一人で子どもの面倒を見るのとはまったく違いますから。

そして、妻もまた、ぼくが何を感じているか知ることはありませんでした。

家庭で一人頑張っている妻に、ぼくの仕事の悩みなんて、あまりに小さすぎて話すことができなかったからです。

次第に妻は、ぼくが妻の苦労を理解していないことに不満を感じ、ぼくもまた、仕事上のプレッシャーを妻に話せないことに無意識の不満を募らせていきました。

ぼくらの不満は、雪のように音も立てず降り積もり、いったい何が悪かったのかわからないまま、ぼくらは身動きが取れなくなったのでした。

口を開こうにも、相手に触れようとも、冷たい雪の中に埋もれたぼくらは身動きが取れず、二人の感情も冷めていったのです。

それもこれも、本音をお互いに言い合えず、理解し合えないことが原因でした。

課題解決からの離脱が不信感を生む

子どもたちの予防接種、病院通い、食事作りなど、妻に任せっきりでした。

特に予防接種については、何をいつ打つのかさっぱりわからず、気がつけば妻が終わらせているほどでした。

子どもたちが1歳になった頃、彼らはよく風邪を引き、そのたびに妻が病院に連れていきました。

どういう診断がされたのか、どういう薬が出たのか、すべて妻任せになっており、家庭内の他のことに関しても、ほとんどの主導権を妻が握っていました。

ぼくとしては楽だったわけですが、妻の目には当事者意識のない夫としてうつり、頼りにされていない感覚をぼくは感じるようになっていきました。

寝かしつけには力を入れていましたが、そういった一部のことを除いて、ぼくは妻から信用されなくなっていたのだと思います。

19時にぼくが家に帰る時には、ほぼすべての家事は終わっており、育児において大変なことがあったとしても、妻としては「終わったこと」なので、「ものすごく、大変だったから」とは決して言いません。

「母だからやって当たり前」という意識が当時はあり、無理をしていたと最近になって教えてくれました。

妻に降りかかる日中の様々な課題を、空調の効いたオフィスで働いているぼくには知るよしもなかったのです。

そうやって課題から離脱したことで、妻からの不信感が募っていったのです。

失われるチーム感

本音を話すことができず、お互いに理解し合うことができない。

ともに課題に取り組まないことで、不信感が生まれる。

そんな状況では、夫婦はチームにはなれません。

ぼくらも「夫婦」として「家族」をやっていましたが、心の距離は大きく離れていました。

一方、仕事では、ともにプロジェクトに取り組む同僚とは強い絆で結ばれるようになりました。

上司や他部門からの圧力にも屈せず提案を押し通し、取引先と仕入れ費用に関して粘り強く交渉を続け、あまりにタイトな納期にも怯まず挑み、多くの人に商品を届けるため効果的なプロモーションに頭をひねる。

いくつもの関門を突破し、発売された商品があっという間に売れ、購入者からの喜びの声が届くと、ぼくらは手を取り合って喜んだものです。

ぼくらはチームでした。決して解くことのできない強い絆で結ばれたチームでした。

チームとしての結束感があるからこそ、困難な課題にも一緒に取り組むことができる。一緒に乗り越えることができる。

ですが、それこそが、ぼくと妻に欠けていたものでした。

ぼくらの物理的な距離は誰よりも近いのに、心の距離はあまりにもかけ離れていたのです。

愛情溢れる絆で結ばれた「夫婦」というチーム。

ぼくらはあまりにも、そこから遠く離れた場所にいました。

そして、妻との関係に悩む何人もの男性たちも、同じような境遇に陥っていたのでした。



この記事は「男性向け夫婦関係改善本」のための下書きです。

下の目次の(←ここ)とある箇所の記事です。記事を書き足していき、最後は一冊の本にします。

本が完成するまで記事を書き続けますので、応援していただけると嬉しいです。

第一部:なぜ、あなたは妻から嫌われたのか?

◾️第一章:恋から愛への移行不具合

恋のメカニズム
○産後の妻の変化への無理解
産後の妻の変化1:オキシトシン分泌によるガルガル期突入
産後の妻の変化2:肉体と精神がズタボロになる産褥期
産後の妻の変化3:産後女性の性欲減少メカニズム
産後の妻の変化4:圧倒的な社会的孤立
産後の妻の変化5:失われたアインデンティティ
○絆を構築する共同体験の欠如(←ここ)

◾️第二章:無から愛の生成不良

○「Who you are? 」ではなく「What you have ?」であなたが選ばれた場合

◾️第三章:夫への恨みの生成過程

○未完に終わった夫婦の発達課題
○非主張的自己表現の呪いから抜け出せない妻
○攻撃的自己表現によりエスカレートするネガティブループ
○妻の不信感を募らせる、夫の非自己開示
○時限爆弾となる「夫への恨み」
○増加する”婚外恋愛”願望

◾️第四章:セックスに関する無理解

○産後にセックスに興味を失う理由
○生理周期に伴う性欲の変化
○性に関する夫婦の話し合いの不在

◾️第五章:現状把握と事態の受け入れ

○妻の恨みの根幹を知る
○思い込みにとらわれず質問を恐れない
○客観的に自分たちを見つめる

◾️第六章:妻から嫌われる3つのパターン

○家庭より仕事を優先してきた
○家族の幸せより自己実現を優先させてきた
○妻への思いやりより自己の欲望を優先させてきた

第二部:では、どうするか?

◾️第一章:皿洗いをする前にやるべきこと

○夫婦の絆の土台となる”親密性”
○「受け止めてもらえる」安心感を妻に与える
○柔らかな感情の掘り起こし

◾️第ニ章:愛着の形成が二人の絆を作る

○柔らかな感情の共有
○相互理解という快感
○夫婦に恋愛は必要ない
○ドーパミンではなく、オキシトシンが愛を作る

◾️第三章:自分も相手も大切にするアサーティブコミュニケーション

→詳細考え中

◾️第四章:セルフコンパッションで関係改善の努力を継続

→詳細考え中

◾️第五章:セックスは愛の最終形態

○セックスは手段、目的は親密性への触れ合い
○性の話し合いを恐れない

第三部:フェニックスマンの特徴

○夫婦関係を改善できる男性の特徴とは?


ーーあとがきーー

ポッドキャスト「アツの夫婦関係学ラジオ」を更新しました。

3年4ヶ月間の夫婦関係相談を通して感じた、「誰かに寄り添うこと」について話しています。視聴&フォローいただけると嬉しいです。

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うちの長男、小学校3年生なのですが、ぼくが仕事から帰ると「パパー!」と玄関でぼくに飛びついてくるんです。

寝るときにはハグをしてくれて、すごく距離が近いんですね。

ここ1年くらいでそんな変化があったのですが、たぶん彼はケアバランスの調整をしているんだと思うんです。

ぼくと妻がどうしても4歳の三男の相手をすることが多く、三男はナチュラルボーン甘え上手なので、ずっとぼくにべったりなんです。

朝もぼくが抱っこして起こし、ぼくの膝に座って朝ごはんを食べ、外に出るときもぼくに抱っこされ、寝るときもぼくに抱っこされて布団に運ばれます。

さすが三男という感じで甘えん坊ですが、おそらく長男はそんな三男に押されて、甘える機会を失ってしまっていたんだと思います。彼はしょっちゅう三男の面倒を見てくれているので。

自分の中のケアバランスが崩れ、ケアの「テイク」が足りなくなり、精神的におかしくならないよう、ぼくからの「ギブ」を求めているのだと思うんです。

疲れていて相手をできないときもあるけれど、彼が「ケアバランスを調整しようとしている」と思うと、もうちょっとだけ優しくなれる気もするんです。

3兄弟育児、大変なことも多いけど、発見も多いですね。やっと最近、3兄弟育児に楽しみを見出せるようになってきた気がしています。

それでは、また!

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