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イクメンという言葉はなぜモヤるのか?

「イクメンですね」

ここ最近、そんなことを言われるたびに、戸惑いを感じていた。

三男の育休を取ったばかりの3年前は、自分がちょっと特別な人間であるかのように見られることが嬉しかったのだけど、いまとなっては、なんというか、その呼び方が自分と乖離しているような気がしているのだ。

おそらく、同じような思いをしている男性は他にもいるんじゃないかなと思う。

「イクメンですね」

「イクメンだね」

そんな言葉をかけられるたびに、その言葉自体には悪意なんてもちろんないのはわかっているんだけど、心の中の何かが拒否反応を起こす。

そんな経験があなたにもないだろうか?

なぜ、ぼくらは「イクメン」という言葉に拒否反応を起こすのか?

今日はそのことについて考えてみたいと思います。

みんな「イクメン」が嫌い

2019年10月に朝日新聞が行ったインタビューによると、「イクメン」という言葉が「嫌い」「どちらかといえば嫌い」と答えた男女は71%もいたそうです。

「イクメン」に対するモヤモヤを「見える化」するため、朝日新聞の紙面とウェブサイトを通じて、2019年9月~10月、「『イクメン』という言葉について、どう感じますか?」というアンケートを行ったことがあります。

1400超の回答がありました。その概要は、19年10月13日と20日の朝日新聞紙上(「フォーラム:『イクメン』どう思う?」)でも紹介しましたが、女性からの回答が55%、男性からの回答が41%、その他4%でした。

結果は、「嫌い」(44%)、「どちらかといえば嫌い」(31%)が7割超を占めました。「好き」(2%)、「どちらかといえば好き」(5%)は1割未満。「どちらでもない」(18%)を考慮しても圧倒しています。
出典:AERA dot.

みんななんとなくこの言葉にモヤモヤしているんですよね。男の女も。

記事の中でも書かれていましたが、男性がこの言葉にモヤる理由は主に二つあって、一つは「仕事も頑張っているのに、育児まで頑張らなきゃいけないプレッシャー」

もう一つは「育児を特別視することがおかしい」というもの。

父親が育児をするのは当然なのに、ものすごいいいことをしているみたいな過剰な賞賛を与えられているような気持ちになるってやつですね。

ぼくはこれなんですよね。

なんで、当たり前のことをしているのに、特別視されたり、他と違うような目でみられなきゃいけないのか?

多分、「イクメンですね」と言っている方には、悪気はないんです。ただ、他に変わる言葉がないんじゃないのかなって思うんですよね。

まだまだ、日本中の男性が北欧の男性(イメージでしかないので実態は知りませんが)みたいに、「父親も育児にガッツリ関わるのがデフォルト」みたいな風潮ってないじゃないですか?

男性の育休取得率も少しづつ伸びているけど、まだ12%ですので、10人に1人くらいなわけですよ。

10人に1人なら「みんなやってる」とはちょっと言えない状況だと思うんですよね。

でも、実際にガッツリ育児をしている父親としては、(なんで、こんなことで持ち上げられなきゃいけないんだ)という戸惑いを感じることも、また事実なわけです。

おそらくですが、「イクメン」という言葉はそろそろ役割を終えつつあるのかなって思うんです。

「イクメン」という言葉は役割を終えつつある

「イクメン」という言葉が生まれたのが2010年ですが、この頃の男性の育休取得率って1.38%だったんですよね。

100人に1人くらいしか育休を取る男性がいなかったので、めちゃくちゃ貴重な存在だったわけですよ。

なので、当時だったら「え!男なのに育休取るの?どういうこと?なんで?」ってなってたと思うんですよね。

「あなた、いったい何者ですか?」みたいな。

そんな時に「父親ですから」なんて言ったって、「いやいや!普通の父親そんなことしないから!」となってたと思うんですよね。

そんな状況だから、育児に積極的に関わる男性を増やすためにも、「イクメン」というワードの誕生は必要だったのかなって思うんですよね。

言葉がないと定義づけできないことってあると思うんですよね。現象としては存在しているけど、名前がないからその概念が広まらないみたいな。

なんちゃらエコノミーとかね。

名前をつけることで広まることってあると思うんです。

だから、当時はそれでよかったんだと思うし、素晴らしい施策だったんじゃないかなって思います。

でも、今はゆるやかながらも男性の育休取得率は上がっていて、きっとあなたのまわりの男性でも子どもと関わることが苦にならない男性って、増えてきていると思うんですよね。

下のグラフの赤い線が女性で、青い線が男性の育休取得率です。2020年は飛躍的に取得率が伸びているんです。

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出典:HUFFPOST

育休を取る男性が100人に1人だったのが、今では10人に1人になっている。こうなると、育児をする男性は希少種ではなく、少しづつ一般的になってくるんですよね。

さらに、2022年4月1日からは、妻が妊娠していることを会社に伝えたら、会社はその男性に育休制度を教えたり、「取れるけどどうする?」と確認しなきゃいけなくなります。

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出典:厚生労働省

これって、すごい大きな変化を生むと思うんですよね。

「会社に悪くて取れないな」とか思ってたけどそんなことないなと思いやすくなるし、「うちの会社は男性も育休取れるんだ」なんて思うようになる男性がきっと増えると思うんですよね。

ぼくも男性が長期の育休を取れるなんて、当時は調べないと分からなかったので、しかも国の制度だってことを知らない人は多いと思うんですよね。

さらに、2023年4月1日からは、従業員が1,000人以上いる会社は「うちの会社はこれくらい育休を社員が取ってます」ということを公表しなきゃいけなくなります。

スクリーンショット 2021-10-15 6.23.27

出典:厚生労働省

こうなると、就職先(転職であっても)を探すときに、男性の育休取得率や取得日数をすごく重要視する男性が増えると思うんですよね。

企業も公表するとなると、男性の育休取得に力を入れざるを得なくなるし。

こうなってくると、育休を取る男性が増え、「育児をすることが当たり前」と思う男性が増えて、ますます「イクメン」という言葉に違和感を感じる世代が増えてくると思うんですよね。

それから、ぼくは「イクメン」という言葉には、ある種の男性をダメにする効果もあると思っています。

「イクメン」は育児をする男性に盛大な勘違いをさせる

「イクメン」と呼ばれることで、周りから特別視されていると勘違いし、たいしたことをやっていないのに「やった気」になって、妻が求めていることをやらない人が増えてるんじゃないかなって、思うんです。

家庭の中で、なにをどこまでやるかって、夫婦2人で決めることじゃないですか?

なのに、子どものオムツを変える男性は偉いとか、子どもと一緒に遊ぶ男性は偉いとか、「父親の育児業務」の定義付けを外からの情報をもとに勝手に決めている男性って多いんじゃないかなって思うんです。

親業って、妻と夫が2人でやることだから、何をどこまで誰がやるのかって、2人で話し合って決めることだと思うんですよね。

それを、「俺はイクメンと呼ばれるくらい、これだけやっているんだから文句言うなよ。こんだけ(イクメンと呼ばれるくらい)やってるんだから、文句を言うお前(妻)の方がおかしいだろ」となるのは、ちょっと変だよねと思うんです。

こちらの記事にも書きましたが、ぼくも父親の「育児業務内容」の定義づけを外からの情報をもとに決めて、妻のケアをおろそかにしていたときもありました。

「俺はイクメンと呼ばれるくらい、これだけやっているんだから文句言うなよ。こんだけ(イクメンと呼ばれるくらい)やってるんだから、文句を言うお前(妻)の方がおかしいだろ」

たぶん、こんなことを言っちゃっている男性とか、こんなことを夫から言われて困っている女性って多いと思うんです。

ぼくの質問箱にも、同じようなことを夫から言われて困っている女性からのお便りが届いています。

「父親としての業務内容」って、社会から決められるものじゃなくて、夫婦2人で決めていくものだし

妊娠も出産も育児も女性側の負担が大きいのだから、女性の意見を尊重しながら決めていった方が夫婦の軋轢は少ないって、子育て7年目を迎えてしみじみ思うんです。

誰かから「これやったらかっこいいよ」「これやったら父親って呼べるよ」って言われて、それをただこなすんじゃなくて、父親としての自覚って、親としての自覚って、自分の内側から溢れてくるものだと思うんですよね。

まだ、そう思えないなら、育児の本当に大変なところを経験してないだけじゃないのかなって思うんです。

そして、その大変なところは、もしかしたらあなたの妻が1人で背負っているじゃないの?って思うんです。

かつてはぼくも妻に背負わせてしまっていましたから、なんとなくわかります。知らない間にそうしてしまっているということが。

そして、その事実に気がつくのには時間がかかるってこともわかります。

そして、育休取得率が12%を超えた今では、「イクメン」という言葉が、夫に「親としての自覚」や「夫として妻になにをすべきか」ということを気づきにくくしているんじゃないのかなって思うんです。

Podcastでもこの話をしているので、聴いていただけると嬉しいです。

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