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”男女脳”ではなく”妻の脳”にフォーカスを

(なんで、そんなまわりくどい言い方をするんだろう…?)

妻との会話でそう思うことがたびたびあるんです。

ぼくになにかをお願いするときに用件をはっきり言わずに、メッセージを匂わすようにぼんやりとした話をするんですね。

ぼんやりとした霧のなかにある妻のメッセージに気がつけないと「もういい!」と怒られてしまったり、「なにが言いたいの?」と詰め寄ってしまったこともあります。

もやもやした霧に隠れたメッセージを気がつくこと。

これは”察する”とも呼ばれますが、一般的には女性の方が男性よりも得意だと言われますよね。

妻とのコミュニケーションで起こるこの現象を、ぼくは察することが得意な女性とそうでない男性の”脳の差”によるものだと以前は考えていました。

でも、夫婦関係に悩む方たちのお話を聞くなかで、そうではないことに気がついたんです。

平均的な男女の脳差は存在するけれど、大切なことは”自分の妻の脳”に合わせて独自のコミュニケーションを取ることだったんです。

性差はある。だが女脳/男脳は存在しない。

「男女の脳には差がない」という話がありますが、正確には”脳の使い方”に男女で差があることがわかっています。

人間には右脳(感情をコントロール)と左脳(論理的思考をコントロール)のふたつの脳がありますが、男性はどちらか片方の脳だけを動かす力が強いと言われているんです。

そのため、男性はいったん怒り出すとヒートアップしやすかったり、理屈を言い出すと止まらなくなったりします。

妻との口ゲンカで、正論を言い続けたことがある人はきっとぼくだけではないはず。

右脳が動き出したら右脳しか動かず、左脳が動き出したら左脳しか動かなくなるんです。

逆に女性は、右脳と左脳を結びつける力が強いためマルチタスクに向いていると言われます。

うちの妻は料理をしながらポッドキャストを聞いていますが、ぼくが同じことをしたら料理をまる焦げにする自信があります。

この男女の脳差の話は、2014年にペンシルベニア大学の研究者が949人の男女の脳を分析してわかったデータをもとにしています。

よく言われる男女脳の話ですよね。「話を聞かない男、地図が読めない女」という本が2000年に出版されて以来、日本でもよく耳にするようになりました。

でも、これって本当なんでしょうか?

いったん怒り出したら手がつけられない女性もいるし、理屈っぽい女性もいるし、話を聞かない女性もいますよね?

地図が読めない男性(ぼくのことです)もいるし、共感性が高い男性もいますよね?

「男はこう、女はこう」なんて、一概に言えないんじゃないのって思いませんか?

その疑問に答えたのが、2021年に出版された「ジェンダーと脳ーー性別を超える脳の多様性」という本です。

本書ではこう述べられています。

”性差はある。だが女脳/男脳は存在しない”

ぼくは、ここに妻とのコミュニケーションの問題を解決させる鍵があると思っています。

モザイク状の脳

性差はあっても、いわゆる男性脳、女性脳が存在しないとはどういうことか?

本書の著者らが男女の脳を調べたところ、平均的には男女の脳差があることがわかったのですが、彼らはさらにひとつひとつの脳を詳しく調べていきました。

すると、人の脳は男性的な特徴と女性的な特徴の両方をあわせ持った”モザイク”のようなものであることがわかったんです。

「ジェンダーと脳ーー性別を超える脳の多様性」より

この図の青い部分が「際立って男性らしい」ことを意味していて、ピンクが「際立って女性らしい」ことを意味しています。

横一列分が、その被験者の脳の構造なのですが、すべてピンクの人もすべて青の人もいないですよね。

男性の特徴と女性の特徴もみんなあわせ持っているけど、全体を遠くから見ると男性は青が多く、女性はピンクが多いように見えます。

これを乱暴にくくると、「男性は男性要素が強いから男性脳だ。女性は女性要素が多いから女性脳だ」という主張になってしまうのですが、ひとりひとりの脳の構造はみんな異なっているということなんです。

それを考えると、自分の妻とどういうコミュニケーションを取ったらいいかという答えは、平均的な答えはあるけれど(共感を示そうなど)、完璧な答えはどんな本にも書いてないということなんです。

あなたの妻は青い部分が多い人かもしれないし、ピンクの部分が多い人かもしれない。

自分の妻の特性を理解して、自分の妻に合わせたコミュニケーションをオリジナルに編み出していく必要があるんです。

”女性”はひとくくりにできない

以前、妻との関係に悩む男性からこんなことを言われたことがあるんです。

”「妻のトリセツ」などの夫婦関係本を何冊か読んだのですが、自分の妻にあてはまらないんです。どうしたらいいんでしょう?”

女性の話は黙って聞こう。家事や育児をどんどんやっていこう。

それはそれで合ってはいると思うんですが、それだけじゃない”なにか”があるんですよね。

女性的と言われるような特徴だけじゃなくて、男性的と言われるような特徴を持っていることもありますよね。

ぼくは野球にまったく興味がないんですが、ぼくの妻は野球が好きで出産のために入院していたときも、病室でずっと甲子園を見ていました。

バスケットボールとサッカーとバレーボールが得意で、空間認識能力がぼくより優れているのは明らかだと思います。ぼくはサッカーをするとボールがどこにあるのか、すぐにわからなくなるので……。

車の駐車もぼくより得意なんですよね。

そんな男性的と言われるような特徴もあるんですが、ぼくになかなか言いたいことを言えなくて遠回しに伝えてきたり、「言わなくてもわかってよ!」と、女性的な面もあったりするんです。

まわりの人を見渡すと、仕事に夢中になるキャリア志向の女性もいれば、責任が少ないパートの方が合っているという人もいます。

「察して欲しいなんて言ってたら、何考えているか永遠にわからないよね」と言う女性もいます。

以前、こんな記事を書いたのですが、読んでくれた方の反応が、「(ぼくの妻の気持ちが)わかる」という人と「わからない」という人にわかれたんです。

(あ、そっか。”女性”といってもいろんなタイプの人がいるのか……。)

と、あたりまえのことにその時気がついたんです。

(気持ちを察して欲しい)と望む女性もいれば、そうではない女性もいる。

となると、それぞれの女性に対するコミュニケーションの方法も異なってきますよね。

妻を”女性”という記号でくくらない

呉服屋で販売員をしていたときに、たくさん褒めて欲しいと望む人もいれば、わざとらしくなく必要最低限に気持ちを理解して欲しいという人もいました。

自信のない自分を勇気づけて欲しい人もいれば、ただ話を聞いて欲しいだけの人もいました。

”女性”という記号でひとくくりにできないほど、多様な女性であふれていたんです。

購買心理というマニュアルはありましたが、ひとりひとりに合わせてこちらのコミュニケーションを変えていかないと、高額な呉服を買っていただくことはできなかったんです。

妻とのコミュニケーションも同じだと思うんです。

自分の妻はなにに興味があるのか?
なにが好きなのか?
なにが苦手なのか?
そして、どういうときに幸せを感じるのか?

そこを突き詰めて考えることで、妻を”女性”という記号でくくらずに、自分の妻だけのオリジナルのトリセツが作れるようになるんだと思うんです。

男女脳の話は女性に対するコミュニケーションのベースとして参考にはなるけれど、もっとも大切なことは、自分の妻をしっかりと見つめることなんだと思うんです。

自分の妻を見つめることで、妻の脳のクセが理解できるようになり、それによって、どうすれば妻が幸せを感じることができるかもわかるようになると思うんです。

ちまたに溢れる男女脳の話にまどわされすぎずに、「これを買えば、これを読めば、妻との関係が改善する」という話を鵜呑みにせずに、しっかりと自分の妻を見つめることが大切なんだと思うんです。

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