見出し画像

Spotifyが映画に進出!?その戦略について考える

こんにちわ、

先週ニュースを読んでいると面白いニュースが飛び込んできました。

Spotify がアメリカの制作会社と提携したという話です。

これは何かというと、「Spotifyで扱われている Podcast を原作とした映像制作を推し進めていくということ」だそうです。

Spotifyのチーフ・コンテンツ広告ビジネス・オフィサーのダウン・オストロフ氏は「オーディオの驚異的な成長により、世界の優れたクリエイターを引き続き魅了し、ポッドキャストがオリジナルIPの最高の目的地になると考えています。Cherninとのパートナーシップのもと、世界中の様々な媒体のオーディエンスと共有し、素材としてのポッドキャストの新時代の到来を先導します」と述べる。

つまり、Podcast が「オーディオブック」というような扱いでIPとして見做されたということになります。

確かにspotifyをみてみると、実際にかなりの数のPodcast番組が展開されていることがわかります。

スクリーンショット 2020-10-02 23.47.53

スクリーンショット 2020-10-02 23.48.18

日本だとpodcastと聞くと、appleが始めた個人ラジオ(番組)みたいなものというようなイメージがありましたが、いつの間にか大きな市場に成長していたようです。

画像16

はじめに

 そもそもpodcastとはなんなのでしょうか?定義だけ整理しておきます。

A podcast is an episodic series of spoken word digital audio files that a user can download to a personal device for easy listening. (wikipediaより)

日本と英語のwikiだと微妙にニュアンスが異なったので英語の方をみてみます。「デジタルオーディオファイルで作られた一連の音声ファイルシリーズ」になります。そのため、最初に考えていた個人ラジオのようなイメージとそれほど違いはなさそうです。

では、Spotifyは、どのような取り組みをしてきていたのでしょうか?少し逆時系列で見てみます。

画像17

<2020年7月> Spotifyポッドキャストに国別「急上昇ランキング」と「トップチャート」が登場!

音楽コンテンツでは通常に実装されてたランキングとチャートのpodcastのカテゴリーが出現したようです。

日本だと、「トップ」と「急上昇」の2択だけですが、アメリカを選択するとカテゴリー別というチャートがあり、「アート」や「ビジネス」「コメディ」17のカテゴリーから選ぶことが可能になっています。

<2020年5月> 「世界1位のポッドキャスト番組を運営するコメディアンのジョー・ローガンと、独占契約を結んだとアナウンスした。」

ジョー・ローガン(Joseph James Rogan、1967年8月11日 - )は、アメリカ合衆国のコメディアン、総合格闘技コメンテーター、ポッドキャスト司会者である。2020年にローガンのポッドキャスト番組「ジョー・ローガン・エクスペリエンス」が、『フォーブス』の発表した、世界で最も稼ぐポッドキャスト配信者ランキング(2019年)で、年間3,000万ドル(約33億円)の広告収入で1位に選出された。『Apple』からは、月間ダウンロード数1億9000万件で、世界1位のポッドキャスト番組に認定されている。(wikipediaより)

<2020年2月>「スポーツ関連のポッドキャスト番組を配信する「ザ・リンガー」を買収すると発表した」

ザ・リンガーはスポーツ専門チャンネルESPNの元アナリスト、ビル・シモンズが運営する企業で、30以上のポッドキャスト番組を抱えている。
シモンズは昨年、フォーブスの「最も稼ぐポッドキャスター」の5位にランクインし、彼のポッドキャスト番組「The Bill Simmons Podcast」は、年間700万ドルを稼いでいた。

余談ですが、ビル・シモンズ出身のスポーツ専門チャンネルESPNというのは、現在はディズニーグループで、Disney+ でコンテンツを提供しています。

<2019年5月> 「Spotify、Parcast買収額が5,000万ユーロ(約62億円)だったことが明らかに」

2016年に設立された Parcast は2つの制作スタジオを持ち、Serial Killers、Female Criminals、Mind’s Eye といった人気のポッドキャストを12番組超制作してきた。
Parcastは提携パートナーから提供されるコンテンツを流通するディストリビューターとしてサービスを展開。SpotifyからすればGimletとParcastの買収を通じてPodcast制作スタジオから流通ネットワークまで、Podcast市場の川上から川下までを抑える戦略に打って出たといえるでしょう。

<2019年2月> 「スポティファイ、米ポッドキャスト大手「ギムレット」を買収か」

2014に創業のギムレット・メディアは「The Cut」や「StartUp」などの人気番組で知られている。同社はラジオ番組「This American Life」のプロデューサーを務めたAlex Blumbergと、元ボストンコンサルティンググループのMatt Lieberらによって設立された。

<2019年2月> 「Spotifyが黒字転換、Anchorなどポッドキャスト企業2社買収」

Anchorは2015年創業のニューヨークに拠点を置く非公開企業。昨年2月にポッドキャストの録音から配信までを行える無料アプリ「Anchor 3.0」を公開した。

これは誰でも気軽にPodcastができるアプリです。

この時から始まったんですね!!そして、このサービスを利用したポッドキャスト配信者向けサービス「Spotify for Podcasters」を2019年9月に開始しています。

ちなみに、このニュースを発表したと同時に下記のようなコメントをダニエル・エクCEOは述べています。

近い将来Spotify利用の20%以上が非音楽コンテンツになる見込みという。Spotifyは発表文で「ポッドキャストの配信は、目標到達プロセスの成長、ユーザーエンゲージメントの向上、解約率の低下、収益の増加、利益率の向上を実現するための重要な戦略だ」

<2019年1月> ESPNの「SportsCenter」のアンカーを務めたJemele Hillと独占契約を結んだ

今年1月にラスベガスで開催されたCESでスポティファイは、ESPNの「SportsCenter」のアンカーを務めたJemele Hillと独占契約を結んだことを発表し、3月から週2回、オリジナルのポッドキャスト番組の配信を開始すると述べた。(上記記事からの引用。発表のニュースは下記)

というような感じで、ここ1−2年で大きな動きが起こっていました。

 また、さらに最近では、イギリス・アイルランド限定ですが、フィットネス番組を最近始めたようです。音楽を聴きながら簡単なトレーニングを行う内容のものだそうです。競合的には「Apple Fitness Plus」が近いのでしょうか。

さらに、日本国内でも動きがありました。2020年6月のニュースです。

「YouTuberでモデルのkemioが6月18日、今週20日よりスタートする音楽ストリーミングサービス・Spotifyのオリジナルポッドキャスト番組「kemioの耳そうじクラブ」のオンライン記者説明会に登壇した。(中略)
第1回目のゲストはYouTuberのヒカキン。」

こうした形で調べていくと、「Spotify」の今後の大きな戦略は、「Podcast の拡大」にあることがわかります。

では、今回の流れについては、Spotifyの現状を整理しつつ、音楽アプリとの競合Appleとの比較をし、最後のどんな作品が生まれてきているのかについてまとめてみようと思います。

画像18

1 Spotifyの現状

 spotifyとは、2006年にスウエーデンのストックホルムからリリースされた音楽アプリです。当時は音楽アプリは、iTunesしかなく、CDと同じように購入するというのが通常習慣でしたが、それを定額で好きなだけで聴けるという新しいサービスを提案しました。

日本だと、CDを購入できない若者は、Winnyのようなファイル共有ソフト音楽を見つけていた時代です(※違法です)。

そして、2020年7月の有料会員数は1億3800万人、総会員数は3億人に迫るそうです。そして今も右肩あがりに伸びています。

 Spotifyを利用していない方向けにご説明すると、有料会員になると広告なしで聞くことができます。価格は1,000円程度(個人からファミリーなど複数種類あり)です。無料会員の場合は、YouTubeのようにコンテンツの合間に広告が流れることで音楽を聞くことができます。

音楽が好きな人は、大体有料会員を選択していると思います。特に大きな強みは、海外での音楽の幅の広さです。海外の有名アーティストからインディーズアーティストまで幅広く音楽を聞くことができ、また様々なプレイリストから新しい才能を見つけることがとても容易です。

2020年7月時点では、約6,000万の楽曲がアップされており、69万を超えるアーティストや団体が利用しているようです。

 なお、日本においては、進出が遅れました。サービスを開始してから10年後の2016年です。日本は音楽業界自体が世界の流れと比べ遅れており、定額ストリーミングサービスにおける理解に時間がかかりました。正確にいうとその流れに逆らえなくなったというのが正しいかもしれません。

 実際に決算資料から、現在の有料会員の内訳をみると、北アメリカが29%、中南米が21%、ヨーロッパが39%ということで主に先進国で使われており、アジアではまだ利用者が少ないことが伺えます。ただし最近ではインドやインドネシアなどでの展開を強化しているようです。

画像7

さて、7月末に行われた4半期決算のレポートからもう少し整理してみます。

画像6

総会員数は、299百万人(=約3億人)、有料会員は138百万人(=約1億3800万人)です。Q1と比べると会員数の増加率は104.5%なのでやや鈍化したのではという印象を受けます。売上も同様です(※年比較では29%増)。
※有料プランでは、ファミリープランが人気のようです。

 ただし、この鈍化した伸びは、コロナの影響で外出が控えめになっていることもあり、音楽を聞くという習慣が少なくなったのではないかと思います(通勤通学なら音楽や音声コンテンツを聞くが、家では動画を観る人が結構いるので)。
もしコロナでの外出制限が緩まってくれば、また音楽を聞く機会が増えていくのではないかと思います。

また、ロシアを含め周辺の12の地域で、7月よりサービスを開始したそうです。まだまだ広がっているという印象を受けます。

Q4 2020 Guidance: ※現在がQ2の発表
Total MAUs: 328-348 million
Total Premium Subscribers: 146-153 million

 そうしたこともあり、2020年度では、おおよそ3億2800万-3億4800万人のユーザー(内有料会員 1億4600万-1億5300万)を目指しているようです。ただし、昨年までの伸びを考えると少し伸びが鈍化していくようです。この要因としては、主要国での利用者がほぼ飽和してきているのでしょう。

画像19

今回は、ポッドキャストについてのまとめなのでいくつか補足していきます。

We continue to accelerate product innovation in order to enrich the consumer experience and serve the right content from the more than 60 million unique tracks and more than 1.5 million podcasts on our platform.

現在は、先述の6000万以上の楽曲に加え、150万を超えるボッドキャストコンテンツがあるようです。

Today, 21% of our Total MAUs engage with podcast content, up from 19% of MAUs in Q1 2020, and consumption continues to grow at triple digit rates Y/Y.(中略)Spotify’s podcast catalog has over 1.5 million shows, 50% of which launched in 2020.

また、現在では全体の21%のユーザーがポッドキャストコンテンツを楽しんでいるようです。そして、先ほどの150万の番組の内約半分が2020年に始まったそうです。まさにPodcast元年です。

そして、コンテンツのところに触れると、先ほどのニュース以外に2点記載されました。

Additionally, we announced a multi-year partnership with Warner Bros. and DC to produce and distribute an original slate of narrative scripted podcasts exclusively on Spotify.

え、、ワーナー・ブラザース及びDCコミックとパートナーシップを結んだの!? かなり意外なニュース、これはチェック不足だったので英語で探しました(翻訳しても良いニュースでは・・。)、先月から番組が展開され始めました。

Harry Potter at Home came to Spotify, an exclusive rendering of the Sorcerer’s Stone as read by notable actors, including Daniel Radcliffe, Eddie Redmayne, and Whoopi Goldberg.

なんとダニエル・ラドクリフ自ら読むハリーポッターコンテンツもあるようですwこれは、独占というよりも、一部の限定版を取り扱うようです。

上記のような感じで、Spotifyが広がっております。

 なお、Spotifyの歴史については、下記のような本が発売されているので、詳しく知りたい方はお読みください。ただ、自署伝ではなく、インタビューと推測での記事なので、経営視点を得たい方にはお勧めしません。歴史を知れるといった感じです。

画像20

2 Spotify vs Apple

 そんなSpotifyの唯一のライバルと言えるのが「Apple Music」です。そう最近では「Apple One」というサービスですべてのサブスクリプションをまとめたAppleです。

まず、なぜ2強なのかは下記のグラフをご覧ください。

画像3

 右のグラフは、音楽のサブスクリプション有料サービス会員の内訳です。2019年時点ですが、全体の3億人いる中で、spotifyが36%、Appleは18%と全体の50%を占めています

Podcast という名を広めたのは、Apple musicである点を踏まえるとこの2社の比較で良いかと思います。

最初に現在の会員数の比較です。

画像4

2020年の5月時点で、Spotifyが1億3000万人Apple Musicが7200万人です。倍に近い差があります。

(こうした背景もあり、Appleはサブスクリプションユーザーの離反防ぎも込めAppleOneというようなものをやったのかもしれません。)

次にコンテンツ数を比較してみます。

Appleのニュース記事(2020年9月)によると、現在は7,000万曲以上の楽曲があるようです。

Apple Musicは、7,000万曲以上の楽曲、何千ものプレイリスト、世界最高の音楽の専門家が厳選したその日のセレクション、画期的なApple Musicのラジオのほか、音楽に合わせて歌詞が表示されるなどの革新的な機能を利用できます。

ちなみに、前章で記載したように、Spotifyが6,000万曲だったので多少多いのかもしれませんが、カウントの仕方などが不明なので、ほぼ同程度と行っても良いのではないでしょうか?

続いてPodcastのコンテンツ数です。

この記事によると、どうやらSpotifyは、2019年秋ごろにAppleのコンテンツ数を上回ったみたいです。さらに下記の記事(2020年6月)によると、Appleのポッドキャストは75万だそうです。

Apple Podcastsだけでも750,000のプログラム、2400万以上のエピソードが存在し、155ヵ国で配信されています。

つまり、現時点でSpotifyが150万のプログラムがあるということでしたので、すでにAppleの倍近くのコンテンツがあることになります。

画像21

3 なぜPodcastか?

 次にでは、なぜSpotifyはPodcastに注力をするようになったのでしょうか?その理由は3つ考えられます。

① 独占的なオリジナルコンテンツでユーザー獲得
② 広告的価値の拡大(広告収入&新たな広告主)
③ 新しいメディア(IP)としての価値

では、1つずつ説明します。

① 独占的なオリジナルコンテンツでユーザー獲得

 音楽アプリにおいては、「どのような音楽が聴けるか」、そして「良い音質でリーズナブルに聴けるか」、また「新しい音楽を見つけれるか」ということが重要視されると思います。そして、そうしたことを考慮して、SpotifyとApple Musicを考えると、あまり差はないかもしれません

その要因として大きな点が、音楽というジャンルにおいては、プラットフォームの独占が映像コンテンツと比べて難しいです。

Netflix があそこまで伸びた大きな理由としては、オリジナルコンテンツや独占配信コンテンツの豊富さがあると思います。例えば、日本で「愛の不時着」や「梨泰院クラス」を見ようとするとNetflixに契約するしかありません。

Netflix がこのように独占作品を広げれた大きな理由としては、SVOD配信サービスが映像ビジネスの最後の出口になっていることが挙げられます。

 例えば、映画で考えると、ビジネスのファーストウィンドウが映画館になります。まず、そこで世界中の映画館で有料で公開されます。次に、パッケージのレンタル・セル販売(デジタル含む)、などを行い最後に配信(SVOD)と言う形で、Netflix や Prime Video に展開されます。そのため、既に観たい人は観ている状態なので、事業者としては、お金がたくさんもらえるなら独占にしても問題ないのです。また、仮に独占を先行してもそれに見合ったお金をもらえれば問題ないのです。

しかしながら、音楽側はいかがでしょうか?

 音楽の場合は、ファーストウィンドウが、Spotifyなどの音楽配信メディアになります。アーティストたちは自分たちの楽曲を、サブスクリプションサービス等で展開することにより、広告収入もさることながら知名度や人気を高めたいと思っています。そこで得た知名度を活かし、イベント・コンサート出演やグッズ販売などの収入拡大を目指します。

(ビジネス構造として、Netflixなどの動画メディアは、パッケージ販売などの2次収入メディアの立ち位置が入れ替わったのに対し、SpotifyはCDショップの1次メディア部分が入れ替わったためです。)

そうした事情もあり、ウィンドウを絞らず、あらゆる人に聞く機会を得た方がアーティストにとって得なのです。もちろんアレンジなどの独占という例はありますが、基本的に新曲を一つの音楽メディアで絞るメリットは少ないと思います。

 加えて、楽曲ではなくアーティストが軸になると考えると、自分たちの音楽をメディアごとに切り離して配信することはできないのです。

結果、Spotifyを筆頭とする音楽メディアは差別化が難しくなります。そうした背景も重なり、Spotifyを筆頭とする音楽配信メディアは、扱う楽曲の数やUIなどの使いやすさや価格での勝負をしていましたが、限界が訪れていました。

 そこで、Netflixのようなオリジナルコンテンツを作れるところはないかと探した時に、Podcastに行き着いたのだと思います。Podcastであれば、軸はアーティストではなくコンテンツになるので、それ単体でも扱えます。また、Podcaster(ポッドキャスター=ポッドキャスト配信主)は、コンサートを目指しているわけではなく、YouTubeと同じような広告収入で収益をあげるので、彼らにとってもスポンサー契約は嬉しいのです。

画像22

② 広告的価値の拡大(広告収入&新たな広告主)

 次に広告的価値の拡大について考えてみたいと思います。まずは広告収入について考えてみます。下記は、音声広告の市場規模の表です。

2016年~2019年の音声広告による広告収入の推移を米IAB社が発表しています。

画像8

2016年の音声広告による広告収入は11億ドルですが、2017年には39%増の18億ドルに増加しています。2018年はさらに23%増加し年間約22億ドルに、2019年は21%増で27億ドルに成長。引き続き音声広告への広告出稿は増えていくと考えられます。
また米IAB社の「IAB FY 2018 Podcast Ad Revenue Study」によるポッドキャスト広告収入に限ったデータでは、2018年の時点で約4億8000万ドル(約500億円)で、2021年には10億(約1000億円)を越すと予想されています。(以上:https://otonal.co.jp/blog/4934より)

なぜこのような兆候が起こり始めているかは、調べれておらず恐縮なのですが、アメリカにおいて、2016と比べると音声メディアは3倍の市場となり約3,000億円、Podcastだけでも約1,000億弱の市場規模となっております。

参考までにアメリカ国内での広告市場規模をみてみます。

画像9

 これによると、デジタル広告が約1,105億ドル(11.8兆円)あり、その中での「Video」と書かれているものが、動画広告市場とすると、約1,290億ドル(1兆3500億円)であることが推測されます。

そうすると、既に3,000億円の音声広告市場はかなり成長していることが言えます。ちなみに、ある調査によると2019年の日本の動画広告市場が2,312億円と言われていたので、アメリカでは音声広告だけで日本の動画広告の1.5倍の規模があることになります。

次に広告主の拡大も挙げられます。

こうした上昇に合わせて、ファッションブランド、雑誌、メディアなどのあらゆる企業が「Podcast」関連のサービスを展開しはじめました。

例えば、ファッションブランドの「Coach」は、若者をエンパワーメントするコンセプトで「Podcast」の発信を始めたそうです。

ちなみに、「Coach」の親会社である タペストリー(TAPESTRY)(NYSE: TPR)は最近CEOが変更になって注目の企業です。

下記の記事では、「LUSH」「ロレアル」などの美容ブランドも進出していることがわかります。

このように調べていくとどんどん出てくるのですが、様々な企業がPodcastが有力な顧客とのコミュニケーションツールであると認識しており、予算を投下していっているのです。

画像23

③ 新しいメディア(IP)としての価値

 最初にご紹介したニュースにも起因するのですが、今やオーディオブックが書籍と同じような役割になっていくのではなっていくのではないか、と思われます。もはや書籍で発表するよりも、オリジナルの物語をPodcastで発表することで、約3億人のユーザーに届けた方が人気が出ます。

そして、その物語を原案として映画化やドラマ化という流れが考えられるのではないでしょうか?それにより、Spotifyは、原作者として音楽メディア以外の収入を得ることができます。

 例えば、大人気Podcastの映画かとなった場合、売り上げに応じて原作収入(正確にはプラットフォーム窓口のような形)が、一定の割合であげることができるのです。

また、原作を聞きたいユーザーがSpotifyに登録するかもしれません。そうした出版社的な役割を担うことにより、Spotifyが発表メディアとなっていくのです。

これらの理由から、Podcast をより強化しているのではないかと考えます。

そしてPodcastコンテンツはすでに事例があります。

This is not the first time Spotify’s podcast content has been turned into movies or TV. The company today has nearly a dozen projects in various stages of completion, including the adaptation of “Homecoming“ for Amazon Prime Video, plus upcoming projects like “The Two Princes“ for HBO Max and “The Horror of Dolores Roach“ for Prime Video.

画像9

Prime Video で配信されているジュリア・ロバーツ主演の心理スリラードラマシリーズ「ホームカミング」もPodcast原作です。

画像10

ファミリーポッドキャストとして人気の「The Two Princes」のHBO MAXでのアニメ化などです。

画像11

 Spotifyが買収をした、ギムレットが制作していたポッドキャスト「The Horror of Dolores Roach」が、「ゲット・アウト」などのホラー映画を専門としている制作会社Blumhouse TelevisionとAmazonで組んでドラマ化を行っています(下の動画はロゴです。みたことありますでしょうか?)。

 そして、今回最初のニュースとして取り上げた「Chernin Entertainment」との提携です。Chernin Entertainment(チャーニンエンタテインメント)は、マッド・デイモン主演の「フォードvsフェラーリ」やヒュー・ジャックマン主演の「グレイテスト・ショーマン」などを手掛けた制作会社です。

どのような契約の内容かというと、ファーストルック契約をSpotifyと結んだということです。ファーストルックとは、映画やテレビ化の企画について最も最初に見ることができる権利です。つまり、SpotifyのPodcastの番組にたいして、まず、Chernin Entertainmentが、映像化するかどうかを言えることができるようになるそうです。

さらにそれに加え、Spotifyも開発に半額をだすとのことです。つまり、Spotifyも映画(テレビ番組)制作に乗り出すと同義だと思います。

 その提携に当たって、Chernin Entertainmentの代表が下記のようなことをコメントしていました。

“What’s impressed us is the innovation in storytelling on podcast platforms,” Chernin said. “They are telling stories with no images – just dialogue and sound effects.”

Podcastは、イメージなしで、物語と音エフェクトのみで話のストーリーを伝えていることが素晴らしいと話していました。制作側にとっては、書籍の映画化よりも、音声の方が、映像への完成イメージが近いので映像化しやすいのではないかと思います。

以上のように、単にPodcastを顧客を増やすオリジナルコンテンツや広告としてのコンテンツとしてだけではなく、それを通して、Spotifyのプラットフォームを超えた新しいIPビジネスにチャレンジしていくようです。

画像24

3 Podcastの聴衆者とは?

 では、実際にPodcastを聞く層はどんな人が多いのでしょうか?

まず時系列的に整理します。

画像15

2006年からアメリカ国内でのPodcastを聞いたことのある人の推移ですが、2018時点で44%(約1億2400万人)が接触しており、MAU(マンスリーアクティブユーザー)は、26%(約7300万人)います。2020年時点ではさらに伸びているでしょう。

では、デモグラフィックや、その視聴シチュエーションはどうなのでしょうか?下記に情報がまとめられていたので抜粋させていただきます。

(2019年)「REUTERS INSTITUTE」と「UNIVERSITY OF OXFORD」が行った調査「Degital News Report」のデータによると、「先月『Podcast』を利用したことがある人は?」という質問に対して、アメリカでは「18歳〜24歳」の54%が最も多く、「25歳〜34歳」が53%、「35歳〜44歳」が41%と、若い人ほど、「Podcast」を聴いていることがわかった。

画像12

「Podcast」を聴く場所としては、「家で聴く(35歳以下52%、35歳以上61%)」が最も多く、続いて、「公共交通機関(35歳以下30%、35歳以上20%)」。また、「エクササイズ(35歳以下20%、35歳以上12%)」中に、「Podcast」を聴く人もいるようだ。

画像13

「Podcast」を聴くシュチュエーションとしては、夜寝る前や朝起きた時などにベッドで聴く人、ランチなどの休憩時間、料理や洗濯などの家事の時間、犬を散歩する時間などをあげる人も見られた。
通勤時間、料理や洗濯、エクササイズの時間に、気軽に聴けるオーディオコンテンツである点、また、自分の興味があるテーマを選び、ダウンロードすることで、WiFiがなくてもどこでも聴ける点も「Podcast」の人気を後押ししているようだ。

画像14

「Podcast」を聴く、主要な理由として、35歳以上の人は、「何かを学ぶ」「アップデートのため」と学習や情報取得を目的にしているのに対して、35歳以下の人の多くが「楽しむため」と答え、全体の中でも最も多い。
テレビやラジオの放送スケジュールに合わせて視聴するよりも、好きな時に好きなエンターテイメントを視聴して楽しむ傾向にあるデジタルネイティブ世代のライフスタイルに「Podcast」が合っているようだ。

 ということで、アメリカでは、Podcastが大きく成長してきており、現在は若年層の半数がPodcastを聴くという市場になっているようです。少し日本では想像できないですよね。

では、そんな顧客層を捉えている作品はどのようなものなのでしょうか?少しPodcastの人気作品と、SpotifyのPodcast上位作品を少し調べてみます。

画像25

4 人気のPodcast 作品

 ***作品に興味のない方はこの章は飛ばしてください***

 Podcastの番組とひとえに言っても様々な種類が存在します。Lizz Schumer (The New York Times, HuffPostで寄稿)さんの記事によると、

・ニュースから料理まで様々なトピックについて話すコンテンツ
・特別ゲストにインタビューしたり、お互いに話すコンテンツ
・ストーリーをシェアするものや、朗読劇など

そして、それらをごちゃ混ぜにしたものなど様々あるようです。

さらにひとつの番組時間は、5分のものから何時間も連続して続くものも様々あるようです。つまり、音楽以外の音声コンテンツであればほぼPodcastと言ってもいいかもしれません。

ちなみに、アメリカでは、ポッドキャストの人気ジャンルトップは「ニュース・政治・時事」。次いで「コメディ」「ビジネス」「教育」「アート・エンタメ」ということです。

そして、「ニュース・政治・時事」で最も人気となった作品が、2014年に配信開始された「Serial(シリアル)」(This American Lifeで配信)です。ポッドキャストの中では伝説的な番組とされていて、アメリカ人でポッドキャストを聴く人なら、ほとんどの人が聴いた事があるという番組だそうです。

「Serial」は、The East Hampton Star、The New York Times、Baltimore Sunといった数々の新聞社で記者としての経験を積んだSarah Koenigによってはじめられた、調査報道番組です。

そうした番組をきっかけに、アメリカでは、ニュースを読むものではなく、聴く人の割合が増えているそうです。そんなトレンドに合わせてか、2020年、報道などの功績を称えるピューリッツァー賞で今年新たに「Audio Reporting(音声報道)」部門が設置されたそうです。つまり、Podcastが対象とされたのです。

そして、最初に受賞したのが「serial」を配信した「This American Life」でした。その受賞作は「The Out Crowd」と言う作品。中身は、トランプ大統領の「メキシコ残留(Remain in Mexico)」政策の現実に迫った作品です。

では、SpotifyとAppleの人気番組を調べてみます。

下記のサイトからそれぞれの上位を調べました(10月6日時点)。
最初に申し上げると、上位作品の顔ぶれはそんなに変わらず、コンテンツの違いはあまりみられませんでした。

Spotify 上位作品

1 NPR News Now(NPR)
2 Last Podcast On The Left(The Last Podcast Network)
3 Crime Junkie(audiochuck)
4 My Favorite Murder with Karen Kilgariff and Georgia Hardstark
5 The Daily(The New York Times)
6 Every Little Thing(Gimlet)

Apple 上位作品

1 The Michelle Obama Podcast(Higher Ground & Spotify)
2 Full Body Chills(Audiochuck)
3 Daily(The New York Times)
4 The Joe Rogan Experience(Joe Rogan)
5 Paper Ghosts(iHeartRadio)
6 Crime Junkie(audiochuck)

これらの番組の概要をみると、どちらともにニュース系が上位に入っています。

The New York Timesが提供する 「Daily」や、NPRが提供する「NPR News Now」などです。

次に事件や犯罪系の番組が多くみられました。

audiochuckが提供する「Crime Junkie」「Full Body Chills」また、The Last Podcast Networkが提供する「Last Podcast On The Left」、そして「My Favorite Murder with Karen Kilgariff and Georgia Hardstark(提供不明)」、iHeartRadioが提供する「Paper Ghosts」です。

実際に起こった事件からフィクションのものまで様々です。

他にはコメディ系がありました。Spotifyのニュースでも取り上げられていた、コメディアンJoe Roganが提供する「The Joe Rogan Experience」、そして、Spotifyが買収したGimletの「Every Little Thing」です。

最後に、インタビュー系の Higher Ground & Spotifyが提供するThe Michelle Obama Podcastです。

こうしてみると、アメリカ人の中でのPodcastは、まずは、ニュースとしてを情報を得るためのラジオ的な役割での利用が多く、その他にはコメディなどを楽しんでいることが伺えました。

今までのニュースなどを読んでいて期待して調べていたのですが、TOP作品群の上位はあまりバラエティに富んではいませんでした(spotifyがカテゴリーごとのランキングを作った理由が逆によくわかりました)。

そこで、もう少しエンタメ系などがないのかなと検索していると、下記のようなまとめがあり、とても参考になったので記載させていただきます。個人的には映画好きならわかる「A24」のpodcastがとても気になりました。

以上のような形で、Podcastの人気作品などをまとめてみました。イメージを掴むご参考になれば幸いです。作品に興味があればリンクを辿って聞いてみてください。

画像26

まとめ

以上、いろいろまとめてみましたが、Podcast がかなり面白いことになっていることがあります。

そこで、今回の気づきをいくつかまとめてみます。

■ 世界でのSpotifyの利用者は3億人。先進国では多くの人が音楽アプリを利用しており、成長スピードがやや鈍化。そこで Podcast が差別化の鍵となっている。
■Podcast専用のアプリなども登場し、発信側のコンテンツクオリティが高まるとともに、いろいろな人が発信できるようになった。
■「Serial」を筆頭とした人気作品の登場し、市場のポテンシャルは広がっている。
■ 視聴者の増加に合わせて、音声広告の市場規模が拡大!既にアメリカ国内では、Podcastだけでも1000億の市場となった。今後はさらに拡大の見込み!
■ 今後、集客できる番組を発信するPodcaster の人気はますます高まっていき、動画メディアのNetflix や Prime video のような形で、クリエイターが発進するプラットフォーム番組を選べるようになっていく。
■ 一方で、IP開発(映像化の元となる原作制作)という観点に置いて考えると、書籍よりも音声メディアの方が、SNSとの連携により話題になりやすい。また、書籍に比べ制作コストや流通コストが安い(※全世界で聴ける)。
■ Spotifyも音楽メディアだけでは限界があり、映像制作という領域に入っていくことによりコンテンツ提供会社としてのポジショニングを拡大していく。

*************

日本でも少しずつ音声メディアが拡大していくかもしれません。例えば、Radikoが1000万人を超えたようです。

ただし、個人的には、Podcastはまだまだ伸びにくいのではないかなと思っています。日本はモンストやパズドラといったスマホゲームなども人気であり、なかなか隙間時間を抑えていくことが難しいからです。

音声メディアが伸びるようになるためにそれらを凌駕するコンテンツ開発が必要です。1本でもみんな聞く人気作品が出れば変わっていくかもしれません。

今後、こちらの動向にも注目していきたいと思います。

最後に、もしPodcasterをやってみたい方がいらっしゃったら、ここにpodcasterへの道がまとめられてみました!ぜひまだ間に合うので自分のコンテンツを発信してみたい人はこちらをご利用ください!!

では、さようなら

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?