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【未来を考える】5Gの技術革新が迫る今、映画館再開の際に大事なこと

こんにちわ。

緊急事態宣言が解除され、徐々に映画館が再開されていきます。
先駆けて再開した韓国では、密を防ぐためにAIロボットを導入してみたりと、様変わりをみせています。

「コロナの影響」だけでなく、今年は(日本では)「5G元年」と言われています。そこで、改めて映画館の今後の方向性やサービス「改めて大事にしたら良いのでは」ということについて整理してみました。

はじめに

5Gによって、Netflixなどの配信サービスがますます隆盛を極めると思います。一方で、配信サービスだけが恩恵を受けるのでしょうか?
「映画館でも5Gを活用するプランもあるのではないか」と考えたのがきっかけです。

今回は、下記のような流れで考えました。

最初に「5G技術革新が映画館にもたらすことへの影響理解」についてアメリカの映画産業における記事があったのでそれを整理します。
その上で、日本における「映画館としての価値の再定義」を考えます。
次に、「価値の最大化」に関してある本から示唆を得たのでそれについて考えてみます。

1 5G技術革新がもたらす映画館への影響

2020年3月にアメリカのアクセンチュアが「5Gが映画鑑賞体験にどのような変化が起こりうるか」について発表しました。

その中で映画館を中心とした産業について下記のようなことを述べていました。

・アメリカ市場では、3Dや4DXなどテクノロジーによる映画館の来場者増を狙ったが劇場の興行収入増加への効果は出なかった。
・さらに、客層の回転率を高めるために(過去10年で)約350本の上映本数を増やしたが効果はなかった。
・加えて、劇場側も満足度を高めるために、デジタルチケット化、予約システム、座席の快適性改善、ケータリングオプションのなどのサービス拡張はしてきた。

実際にアメリカの興行収入を発表しているBox Office Mojoのサイトを見るとここ10年ほど興行収入が110億ドル(1兆2000億円くらい?)を推移しており、変わっていないことが示されています。
上映本数も、2019年には(2010年の650本から)908本と増加されているにも関わらずです。

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ちなみに、日本は、日本映画製作者連盟の情報によると、年間1,278本なのでアメリカより多いという驚き(興行収入は2,600億円)。

ここから言えることは、「映画技術や内容の工夫、映画本数の増加などの施策をしても興行収入は伸びにくい」と言う事実が伺えます。

・ハリウッドの映画スタジオも色々な投資を行い工夫を試みているが、それでも結びついていない。また、家で特別なコンテンツを楽しむということが成長しているということが数字で出ている。全体的に脚本のレベルも上がり、ますます内容の差別化が難しくなった。
・1000人以上のムービーゴーアー(映画館へいく人)にアンケートをとったら43%の人がデジタル視聴に興味を持っている状況。

そして、周知のことですが、家でのデジタル視聴という流れが出てきておりそのトレンドは止めることができないとしています。

一方で、当面の良材料としては、「映画を観に行く」という体験自体は変わらないということでした。

・3D映画やIMAX、4DXなど新しい映画体験が生まれてくるなか、「映画に行く」という基本的な体験は長年変わらず残ってきた。
・当面の間映画館で映画を見るという体験の価値は変わらないであろう(約50年以上の間そのように親しまれてきたので)。
・またメジャースタジオも現状大きなスクリーンでかける作品(例:アベンジャーズ)を前提に映画を作っている。

さらに、上記レポートに関連づけられている各映画業界関係者からのインタビュー記事から映画産業へのコメントもいくつか抜粋します。


・今後はホラー映画かイベント映画(アベンジャーズのようなビックタイトル)、オリジナルドラマのような、わざわざ映画館へ行くべき理由が必要。他作品は配信でも良いかも。
・インターネット配信により今までのスタジオシステムでは機会をえれなかった多くの女性監督が活躍していて嬉しい。
・我々は「ゴーストバスターズ」や「グレムリン」を観て育ったが、もしYouTubeを観て育ったらどんな映画を好むだろう・・・。
・ミュージカル映画のような暗いスクリーンに集中して楽しむ体験を鑑賞者はより望んでいる。
など・・

映画業界関係者としては、悲観的というよりも、時代の流れを受け入れてどうしていくのが良いかを前向きに考えているという感じです。
だからこそ大手スタジオチェーンは、新たな出口として配信は配信とした自分たちのサービス(Disney+など)をスタートさせているのではないかと思います。

以上のことから、今後の作品のあり方は下記のような考え方で作られていくと言えると思います。

・今後劇場で公開される作品は映画館向けの作品に絞られる(=どうしても映画館で観なければならない作品)
・一方でインターネット配信の良いところもあり、その場をもっと活かしていきたい
・YouTube等観ている若年層に旧来の映画作品の方向性を押し付けても仕方がないので新しい方法を考えていく必要がある

本レポートでは、5Gの技術を使って、映画館へ来ることの体験を最大化させることにより、作品だけでない「来ること自体」のエンタメ化を行なっていき、新しい未来を創出していこうという話をしています。

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5Gにおける技術革新としては3つのポイントが述べられていました。

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・「Ultra-high-resolution scan and capture technology」
・「Immersive experiences」
・「Real-time rendering and interactive AI」

5Gの特徴として「超高速」「多数同時接続」「超低遅延」があり、要は、これを組み合わせることにより、よりリアルな形でのインタラクティブな映像世界を現実になるという感じで受け取ればいいのかな。

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例えば、
「ポスターからキャラクターが飛び出して人の動きに合わせて動いたり」、
「鑑賞者の表情や雰囲気に合わせて、入り口のAIロボットが言葉を変えて喋ったり」、
「映画館自体が巨大なARとなっており、携帯をかざすと映画の世界の中に入れる」
ようになるかもしれません。

ということで、「映画館へ行くという体験」を他のレジャーと差し替えができないものにしていくということが、キーワードになっていくと思います。

ただし、5Gシステム導入は大手のチェーン以外は現実的には難しいのではと思います。
そこで改めて「体験」という軸から、映画館のサービスについて考えてみたいと思います。

2 「火花が散る瞬間」って?

映画館のサービスを考えるにあたり、今回は1つの本の1節から考えたいと思います。

それは、スターバックスコーヒージャパンでCEOを勤められた岩田松尾さんが書かれたもので、色々な経営学で語られている内容を具体的な実際の経験を踏まえながらわかりやすく語られている本です(集中すれば3時間ほどで読めます!)。

この本の中では、岩田さんが日産自動車時代にある上司から受けたエピソードのお話しです。

「火花が散る瞬間」っていつだろう?

それは車体の生産工場に一緒に出かけたときのことでした。上司は私を、溶接工場に連れて行ってくれました。ロボット溶接でパチパチッと火花を散らしてAパネルとBパネルがくっつく。それが繰り返されて行きます。そこで上司はこういったのです。
「いいか、岩田。このラインの中で、付加価値を生み出しているのは、火花が散っているあの瞬間だけなんだ。だからそれ以外、在庫管理をしたり、モノを動かしたり、打ち合わせをしたりするのはすべてが無駄だという目でみろ!」
要するに、何をするにしても本質的に付加価値を生み出している一番大切な瞬間を見逃すな、ということだと私は理解しました。

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その後、岩田さんは、キャリアの中でビジネスにおいての付加価値を生み出す瞬間は何かということを考えて行きました。

そして、スターバックスのCEOになった際に、スターバックスの「火花が散る瞬間」とは何か、、と考えました。

美味しいコーヒー、自信を持って送り出すパートナーの心からの笑顔、。素敵なBGM。スポットライト・・・。もとよりスターバックスのお店のコンセプトは「サードプレイス」。家でも会社でもない第3の場所。心地よい場所です。あのドリンクを渡される瞬間こそが、それを象徴するシーンだと思いました。
だから、あの瞬間にみんなの意識を向けないといけない。「いかにパートナーが輝いてドリンクを渡せるか」、それを考えるべきだ。

本を読みながら、なぜ岩田さんがその瞬間を選んだのだろうと思案しました。そしてたどり着いた結論として、イートインを目的にくるお客様も、テイクアウトを目的にくるお客様も最後のサービスとして共通に触れるものだと。

だからこそ「終わり良ければすべて良し」ではないけれども、最後まで心を込めてサービス/お客様によろこんでほしいと言う気持ちを伝えれる大事な場なのだと。そんな体験をしたお客様はまた来ていただけると。

つまり、「スターバックス」で最後に輝いて渡せるかは、ミッションでもあるように「コーヒーを通じてすべてのお客様へ最高のスターバックス体験(感動経験)を提供する」ことを体現しているのです。

そこで、「映画館の火花の散る瞬間」ってなんだろうと考えました。

3 映画館の「火花が散る瞬間」ってどこだろう

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まず、現在までの映画館が提供している価値について考えてみたいと思います。書き出してみました。

① 大画面で高画質の映像で楽しむことができる
② 最新の音響設備で楽しむことができる
③ 最新の映画を早く見ることができる
④ 楽しい思い出を作ることができる
⑤ 美味しい食事体験(ポップコーンなど)ができる
⑥ 時間潰しができる

こうしてみると、①〜③に関しては、配信環境の進化に従いますます価値は薄れてくると思います。また、⑥に関してもここでする必要がなくなっていきます。

そうした中で、明確に残っている価値は④や⑤といった部分で、第1章でもあげられた、「映画館へ行くという行為、場(コミュニティー)」だと考えます。つまり、ますます映画館のもつ空気感や、映画館という場所それ自体に面白さを感じて来るようになるのではないかと思います。

デジタル体験は一旦置いて、「スターバックス」の事例のようにスタッフと顧客接点という形で、映画館を整理してみましょう。(自分も昔働いていたので)現状このような感じだと思います。

① チケットカウンターでのチケット販売
② 売店(コンセッション)でのポップコーン、ドリンクなどの販売
③ 入場時のチケットのもぎり/チケット確認
④ 観賞後の出口(ゴミ収集などのご案内)
⑤ 映画館のグッズコーナー

以上の流れの中で、スターバックスのように、映画館に来てもらったことを最大限来てよかったと感じてもらえる場所はどこでしょうか?

それは、

④ 観賞後の出口(ゴミ収集などのご案内)

ではないかと思います。映画を観終わって、感傷に浸りながら映画館を後にする瞬間。そこが最も大事なのではと思いました。

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ただ、映画館に行った時のことを想像してみてください。
「観賞後の出口(ゴミ収集の案内)」がどんな風に行われたか覚えていますか?
残念ながら、僕はほとんど記憶にありません。

ちなみに、実際に過去業務をしていた自分の身としては、この瞬間はこんな感じで考えていました。

さぁ!早くお客様からゴミを回収し、シアター内の掃除をして、次回の上映(劇場開場)を滞りなく行うぞ!劇場内にゴミがそんなに散らばってないといいなぁ。

もちろん「ありがとうございました!」や「パンフレットやグッズのご案内」はしましたが、シネコンだと劇場の入れ替え時間は、15-25分くらいが相場です。なのでそちらに頭が行きます。

しかしながら、初心的な考えですが、ここが来場者と最後に接する点であり、もっと力を入れて良い場所かなと思いました(自分も大いに反省)。

来てよかったなと思ってもらうために、ここで更に感動体験の増加をさせることができれば、お客様は気持ち良くなって、また映画館に来ようかなと思うと思います。

例えば、「スタッフの人が心から気持ちを込めてお礼を言う」、だけでなく、「その映画のキャストコメントのお礼動画が出口で流れている」「出口特典としてお土産を渡す」など色々なアイディアはあると思います。
映画という商品だけでなく、「映画館で映画を見るという行為」を存分に楽しんでもらうということが、映画館のファンの増加や次回の観賞動機を向上できるのではと思いました。

4 事例紹介

例えば、最近の映画では「カメラを止めるな!」がありました。

これ、映画内容の面白さはもちろんそうですが、何がすごいかって、最初の上映の頃は、全ての上映の終了後に出演者の舞台挨拶があり、更に劇場出口で、出演者自ら「ありがとうございます!」と気持ちよく言っていました。

実際に当時観た感想としては、アフタートークの喋りも慣れていらっしゃらなかったですが、ただただ感謝の気持ちだけは伝わってきました。そして強く思い出に残りました。

そこまでされると、来た人はこの人たち頑張ってるな!今回気持ち良く映画を見れたから、応援しようかな、と思うようになるはずです(映画だけではなく、場所自体にも思い出になるはずです)。

その他の事例だと、小劇場などの演劇ではよくこの手法は使われているかなと思います。
ほとんどの演劇においては、出演者自ら出口に立って挨拶をします。(知り合いの招待が多いことはもちろんありますが)演劇をみせて終わるだけではなく、観ていただいた感謝とともに一緒に演劇を楽しんだという思い出を共有をすることを大事にしています。

まとめ

ということで、大事なこととして、

・環境の変化で映画館の価値が変わる今、今一度「映画体験の最大化」ができるような工夫が必要
・映画館での「火花が散る瞬間」は、映画観賞後にお客様が外に出るタイミング!
・そこで「また来たい」と思ってもらうために、映画観終わった後も感動の火種を燃やして最高の思い出作りのお手伝いをする

と考えます。
ただし、大手チェーンとミニシアターでは営業形式にも違いがあるので、今後について下記のような形で整理しました。

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「作品の方向性」は、上映作品です。5Gは同時接続という観点からゲームとの相性がいいのでオンラインゲームイベントもできますので、それも記載しています。一方でミニシアターは今後配信優先の流れが出てくる可能性があるので、「なぜその作品を選んだのか?」ということが大事なのかと思います。

ぜひみなさまも、価値の変化を見逃さずに、今一度「火花の散る瞬間」(最も価値を生む場所)を見直してみる機会に慣れば幸いです。

最後に思い出という観点から、ディズニーのような大規模なグッズショップがあると良いなと思ってます。例えば、劇場がライセンシーとなり独自のグッズも作ってもいいのかなと思っています。

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(画像引用:https://www.tokyodisneyresort.jp/tds/shop.html)

映画館の更なる魅力作りのきっかけ作りになれば幸いです。

では、さようなら。


(後述)週末はYouTubeでオンライン映画祭が始まりますね。こちらも楽しみです。



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