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極楽試写会

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新作映画の試写会の案内もオンラインでの試写が増え、 気軽に自分なりに選んだ作品の試写をしております、 極楽気分で。 そんな中、皆さんにも見てほしいなと思った作品を紹介したいなと
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番外編:「国立映画アーカイブ展示・日本映画と音楽」

日本映画と音楽 1950年代から1960年代の作曲家たち | 国立映画アーカイブ 銀座線京橋の駅からすぐのところにある 国立映画アーカイブでは 時々興味深い企画展がされていて 今までも何度か足を運んだことがある。 今回はタイトル通り戦後から60年代の日本映画の音楽に焦点をあてた展示。 当時は日本戦後映画の発展期で それこそ、黒沢、小津をはじめ多くの名監督による名作が誕生した時期だ。 こうした黄金期ではあるが 僕個人的感覚では その時期の音楽に関しては、どうしても、当時のハ

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「人間の境界」

映画『人間の境界』公式|5月3日(金・祝)公開 https://transformer.co.jp/m/ningennokyoukai/ 映画を作る目的には何種類かあると思う。 当然、エンタテイメントをするものがその主をしめることは確かだが そのほかに 世に対して問題意識の提示や警鐘、啓蒙をも目的とするものも多い。 そして、ある意味ジャーナリズムの観点から 現在起こっている事実を世界に広く伝えることをそれとするものも。 本作は「知っているようで知らなかった」悲劇の『事実』を私たちに伝えるという事を目的とし 衝撃的事実を明白にしてくれている。 ヨーロッパ各国ではシリアをはじめアラブ諸国やアフリカから多くの難民の流入が大きな問題となっていることは メディアで多く取り上げられているから、皆も認識しているだろう。 それは移動の困難さや入国後の生活困窮にフォーカスされれいることが主である。 もちろん、それはそれで大きな問題ではある。 実はそれだけではないメディアでは伝えられていなかった、悲劇的事実があった。 この作品がそれを私たちに伝えてくれている、それが映画の役割の大きな役割の一つだった、と。 今もベラルーシとポーランドの国境では ポーランドへの亡命を望むもの、またはそこを通り過ぎ他のユーロ諸国への亡命を希望する難民たちでであふれている。 しかし、ここでは、亡命受け入れどころか、通過するだけでも、両国軍により実は多くの命が奪われ はてには、亡骸さえまるでごみのように、相手国へ投げ込みられるという 現実的悲劇が行われている。 もちろん、そんな場でも彼らを救おうとするボランティア団体の活躍も。 ともかく こうした事実を映像物語として伝える本作の重みは、とんでもないレベルである。 監督は、3度のオスカーノミネート歴を持つポーランドの巨匠アグニエシュカ・ホランド。 本作では2023年ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門で上映され、審査員特別賞を受賞。 2023年9月にポーランドで公開され、当時年間最高となる異例の大ヒットとなった。 ただし、公開にあたっては この事実が明るみに出ることを良しとしない政府による大きな圧力があったとのことだ。 2024年5月3日 公開

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「ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ」

「ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ」公式サイト|5.3(金)よりROADSHOW !! https://www.zaziefilms.com/kurnaz/ この事実を題材に取り上げた時点で十分かと思いきや・・・ 2001年、アメリカ同時多発テロ9・11の直後。 ドイツのブレーメンに暮らすトルコ移民一家の長男が旅先で“タリバン”の嫌疑で あの過酷なグアンタナモにある米軍基地の収容所に収監される。 アメリカ本土ではない(キューバにあるアメリカ収容所)地区、 長男はドイツに長期滞在だがいまだにトルコ国籍 そして舞台はドイツ、裁判はアメリカ と 三重にも四重にも絡まった国際要素も事を複雑にする。 しかし無実の息子を救うために奔走する母親。 本作はこうした信じられないような事実と複雑さ、困難さをベースにした物語。 ではあるが、なんと、それを コメディー仕立てで組み立てている。 当に「ドイツのオカン」というべきふくよかなの母 奔放というか型破りな明るい性格、 食べることがすべての解決策とでもいう主義、しかも超甘いもの好き。 こうした設定が 時には現実の厳しさをやわらげ、 時にその厳しさ過酷さを観る者により強く訴える。 本作は この事実を題材に取り上げた時点だけではなく、 それをコメディーとして仕上げることで 見事に勝負がついたと言える。 戦争や迫害などのつらさを ユーモアを交えて描いた有名な作品に 「ライフ・イズ・ビューティフル」 https://eiga.com/movie/50458/ があるが もちろん、苦難の中身、コメディー仕立てなのかの違いはあるが どちらも苦しさの中に笑いを求めて描いている。 そして本作は 苦しさを笑い(ユーモア)で「和らげる」のと それを笑い「飛ばす」のとの違いに 気づかせてくれた。 資料から 監督を務めたのは、『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』(18)などで知られるドイツの俊英アンドレアス・ドレーゼン。 主役のオカンはコメディアン メルテム・カプタン。 トルコ系ドイツ人でありアメリカでミュージカル俳優として活動したのち、ドイツで人気のコメディアンとして活躍。 本作は、第72回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(主演俳優賞)受賞。 さらにベルリン国際映画祭では銀熊賞(脚本賞)のW受賞も果たし、 更に、ドイツで最も権威のあるドイツ映画賞では作品賞、主演女優賞、助演男優賞の3部門で受賞した。 題材である2001年のテロ そして ウクライナやパレスチナでの戦火を見る今 かつてテロリストを排除するべく強行に出たアメリカの行動が 改めてどうだったのか、考えさせられる作品でもある。 2024年5月3日 公開

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「悪は存在しない」

映画『悪は存在しない』公式サイト - EVIL DOES NOT EXIST|監督:濱口竜介×音楽:石橋英子 https://aku.incline.life/ 僕はこう思う、、、 君はどう? と、 観た後に思わず問いてしまいたくなる作品。 試写案内には抽象的な事柄ばかりで 本来のストーリーなど内容が分かることは 全くと言ってよいほど書かれていなかった。 ???一体なんなんだろう? と思いつつ、試写。 自然が豊かな高原別荘地 都心からも近く、移住者も増えつつ地元の人々たちとの共存も進み穏やかな生活がそこにある。 そんな地で代々暮らす主人公の巧(大美賀均)とその娘・花(西川玲)は、 自然に囲まれながら湧き水を汲み、薪を割るような生活を送る。 その地にある日、グランピング場を作る計画が持ち上がる。 それはコロナ禍の助成金を目当にした、本来このような事業に理解も経験も無い芸能事務所の計画だった。 そうした事業主の未経験かつずさんな計画に森の環境や町の水源破壊を危惧する住民、そして巧。 双方の思いと思惑がくりなす自然保護ドラマかと思いきや・・・・ 物語はこれだけではない、 むしろその裏に流れるうねりのような題材と人間模様を 僕たちは観ることになる。 そして、先に書いた、試写案内にも公式HPにもこれ以上のことが書かれていない その理由も。 何なんだろう、この作品力は。 ともかく観てください。 監督の濱口竜介 前作「ドライブ・マイ・カー」でカンヌ映画祭脚本賞など4冠、アカデミー賞国際長編映画賞を受賞。 その彼の次作である本作が 第80回ヴェネチア国際映画祭では銀獅子賞(審査員グランプリ)を受賞 見事にその重圧を押し返してくれたと言える! 本年「極楽映画大賞」グランプリノミネート! 2024年4月26日 公開 PS そうそう、観終わってすぐに思ったもう一つの事 昨年(2023年)の 極楽映画大賞受賞作のスペイン映画 「理想郷」 との類似性だ。 それは、単に上辺が似ているということではなく ストーリー展開、裏に流れる問題意識、全体を覆うテイスト そして監督の力量すべてに。 映画『理想郷』公式サイト https://unpfilm.com/risokyo/ PSS 冒頭に エンディングの解明になる布石をおいているところも さすがです、さて貴方はそう思うか?気が付くか?

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「プリシラ」

映画『プリシラ』公式サイト https://gaga.ne.jp/priscilla/ しっかりした映画。 実力も評価も高いソフィア・コッポラの最新作。 どう評してよいのか最初の言葉選びに慎重になった。 これはあくまでも僕個人の力量の問題かとは思うのですが ソフィア・コッポラとの最初の出会いが (これもまた評価はすごく高かった)「ロスト・イン・トランスレーション」。 ロスト・イン・トランスレーション : 作品情報 - 映画.com https://eiga.com/movie/1507/ だが、僕にはどうにもその面白さがよく分からなかった。 そして、今回満を持して臨んだ。 そして感想として第一に浮かんだ言葉がこれ。 父親フランシスの後姿を見て育ち 映画製作というスキルをそれこそとんでもないレベルで学んで自分のものとした彼女だからこそ その作りには寸分の隙も無いしっかりした作品に作り上げている それが本作なんだろう。 まぁ、理屈はともかく ストーリーはいたってシンプル。 プレスリーの妻になるプリシラ 14歳の可憐な少女プリシラがエルヴィスと出会い若き妻となり、来る別れを描く。 彼との重ねられる生活の中から その揺れる想いや心の変化を 僕たちにもまるでその目撃者のごとく体感させてくれる。 真のスーパースター、エルヴィス それを取り巻く状況に、通常こうした映画でありがちな(ある意味過剰な)表現描写が抑えられることにより 逆にこちら側への影響力が増すことをコッポラは狙ったんじゃないかな。 過剰な表現描写は抑えられていると書いたが 実はヴァレンティノ、シャネルをはじめ、プリシラを飾る、そのビューティー表現には 「やはり女性監督!」とうなずいちゃいましたね(昨今こういう表現はなんですが・・・)。 また 音楽だが コッポラの夫トーマス・マーズのポップロックバンドPhoenixが担当している。 作中では以外にもエルヴィスの曲はほとんど聞かれず エンディングではカントリーシンガーのドリー・パートンが1973年に発表した 「オールウェイズ・ラヴ・ユー」。 この曲をラストに使用したという監督の狙いは当たったと思う。 余談だが 一般的にはこの曲映画『ボディガード』の主題歌として ホイットニー・ヒューストンがカヴァーしたのがなじみ深いと思う、まっ。 ボディガード(1992) : 作品情報 - 映画.com https://eiga.com/movie/49405/ プリシラ役のケイリー・スピーニー ベネチア国際映画祭最優秀女優賞を受賞、ゴールデングローブ賞主演女優賞(ドラマ部門)にもノミネートさ 若い才能に期待。 そして エルヴィス役のジェイコブ・エルロディ これがまた何とも言えずに良いのですよ。 プレス資料には 【コッポラは、プリシラの相手役には、数えきれないほど映画やテレビ、文学で描かれてきたエルヴィス像からはみ出すことを厭わない役者を求めていた。 コッポラはこう指摘する。 「プリシラ目線のエルヴィスですから、彼の人物像は完全に彼女の話を元にしています」 「エルヴィスのプライベートな部分、ステージの上とは違う、他の誰も目にしたことのない側面です。 この物語には、彼のパフォーマンスシーンはあまりありません。 この役で重要なのは、プリシラとふたりで家にいる時の姿や、彼女が目にした傷つきやすさ、疑念、弱さです」】 この通りの役を見事に演じている!僕は好きだなぁ。。。 【ソフィア・コッポラ監督からのコメント】(プレス資料から) プリシラ・プレスリーの回想録を読み、彼女のグレースランドでの体験に心を動かされました。 私が表現したかったのは、エルヴィスの世界に飛びこみ、紆余曲折を経てやっと自身の人生を見つけたプリシラの心情です。 私はモノづくりを行う人間として、先入観ではなく、登場人物の目を通して世界を見せることに尽力しています。 アイデンティティや主体性、変容といったテーマには、常に関心を持ってきました。 この映画では、プリシラがいかにして今の彼女となったのか、そして彼女とその後の世代にとって、 女性であることがどのような意味を持つのかを紐解いていきます。 確かに、プリシラが置かれた環境は、とても壮大で一般人とはかけ離れたものです。 でもプリシラも多くの女性と同じように、色々な経験を積みながら大人になりました。 プリシラの人生は、類い稀であると同時に、私たちが深く共感できるものでもあります。 ということで 改めて 誠にしっかりした映画であります。 2024年4月12日 公開

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「COUNT ME IN 魂のリズム」

2024.3.15(金)公開『COUNT ME IN 魂のリズム』公式サイト https://countmein.jp/ すみません 100% 面白い 100% 理解できる 100% 同感  300% で、極楽映画大賞特別賞枠でノミネート 最初に何で謝ったかというと ・・・僕も実はドラマーの端くれだった、勿論プロじゃなかったけどね(この「端くれ」ってのが良いねぇ、)・・・ 冷静な目で観れなかったし、たぶん、そうじゃない人(ドラマーじゃない普通の人)には 彼らが語ることが、どこまで理解されるのか、どこまで理解されるのか、どこまで面白いのか が判断できないからなんだ。 内容はいたってシンプルで 生の本当の一流ドラマーたちが その魅力について語るだけ。それで十分すぎるんだ! 登場者は ロジャー・テイラー(クイーン) イアン・ペイス(ディープ・パープル) ニック・メイスン(ピンク・フロイド) スチュワート・コープランド(ポリス) ニック・“トッパー“・ヒードン(ザ・クラッシュ) テイラー・ホーキンス(フー・ファイターズ) クレム・バーク(ユーリズミックス/ブロンディ) ニコ・マクブレイン(アイアン・メイデン) ラット・スキャビーズ(ザ・ダムド) ボブ・ヘンリット(ザ・キンクス/アージェント) ジム・ケルトナー(トラヴェリング・ウィルベリーズ/エリック・クラプトン/ライ・クーダー) エミリー・ドーラン・デイヴィス(ザ・ダークネス/ブライアン・フェリー) ベン・サッチャー(ロイヤル・ブラッド) エイブ・ラボリエル・ジュニア(ポール・マッカートニー/スティング) ジェス・ボーウェン(ザ・サマー・セット) ドラムはバンドの錨 同感300%の85分 そして最後は4 人によるドラムSoloセッション ・・・・常に僕は思うんだけれど、良いドラムSoloは「歌っている」ということ、 歌うように叩くのではなく、ドラミングから自然にメロディーが聞こえてくるんだ・・・ そしてこのラストのセッションはその結晶と見れた。 2024年3月15日 公開 PS 見ていて気が付いた! 素晴らしいドラマーは皆 「口ドラム(口でドラミングを表現する)」ことがうまいんですよ。

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「ブルックリンでオペラを」

映画『ブルックリンでオペラを』公式サイト|2024年4月5日(金)公開 https://movies.shochiku.co.jp/BrooklynOpera/ ハイカルチャーなラブコメディー と、でもいうのでしょうか。 主演がアン・ハサウェイ、更にこの脚本にほれ込んで自身がプロデューサーも務める。 舞台はブルックリン、 スランプに落ち込むオペラ作曲家の夫が愛犬の散歩に出たことで始まる出会いと展開のストーリー。 ディズニー映画「101匹わんちゃん」の 舞台をロンドンからNYブルックリン、主要な役どころを売れない作曲家からのオペラ作曲家に変え 時間が現在になると、こういう物語に代わるんじゃないかな、とも、勝手に思えた。 物語は 2つの家族、夫婦 ・・・といっても、これがまた今風なのか、それぞれ離婚を経て今は違う伴侶のもとで、それぞれが連れた高校生の子供がおり、 かたや 学歴コンプレックスのつまらない法廷書記官の父、いまだに市民権を得られない移民の母 かたや アンが演じる、潔癖症気味で強くキリスト教を信じる精神科医の母、ピーター・ディンクレイジ演じるスランプに落ち込んでいるオペラ作曲家の父 そこにマリサ・トメイ演じるブルックリンの港を行きかうタグボートの船長 こうした途上人物が繰り出すラブコメディー。 そして このストーリーの軸になるのが、オペラ作曲家がスランプを脱する出会いと、それを題材にしたそれら作品が舞台上で演じられるのだが それが ハイカルチャーなラブコメディー、と表したゆえんであります。 船長を演じたマリサ・トメイ、さすが、法廷コメディ「いとこのビニー」 いとこのビニー : 作品情報 - 映画.com (eiga.com) https://eiga.com/movie/42455/ で第65回アカデミー助演女優賞を受賞した実力がここにも。 すでに名優といえるアン・ハサウェイは、プロデューサーも務めたからか、 ちょっと肩に力が入り過ぎてないかな、とも、勝手に思ったが、 それほどこの作品に力を注ぎ込んだのだろう、きっと。 監督のレベッカ・ミラー数多くの作品を送り出している監督とのことだが あの「セールスマンの死」他多くの名作で知られる劇作家アーサー・ミラーの娘という事はやはりお伝えしておきたい。 そうそう 音楽、というかエンディング音楽に 唐突にブルース・スプリングスティーンが登場するのがなんとも意外で、、、、 (Pとしてのアンが動いたんでは?などと邪推してしまった) ところで、いつものようについつい、 この機にブルックリンについて調べてみた。 名前の由来は1600年代から入植を始めたオランダ人が、母国の地名Breuckelen(ブルーケレン)という名前を付けたことから。 地域の特徴は かつてはハーレムやブロンクスと並ぶニューヨークのなかで治安が悪いとされるエリアとなっていた (僕がこの時期によくNYに行ってたんだが、確かにこのイメージが強く足を運ばなかった、古い話です) が 1990年代後半になるとギャラリーなどが続々とオープン、アートフェスティバルも開催されるようになり エンターテインメント産業の場ともなり、今は新しいカルチャーやトレンドを生み出す注目エリア。 最後に。 本作も最近のハリウッドに良く見受けられる、 いろいろな点で多様性の存在を取り込んでいるんだろうな、という姿勢は分かる。 本来のストーリーや展開に無理感を出すまでいかないように・・・。 2024年4月5日 公開

番外編:北極に行ってきた・・・「野性の叫び声」

写真:僕が今回撮ってきた極地の風景 「野性の叫び声」 野性の呼び声|映画/ブルーレイ・DVD・デジタル配信|20世紀スタジオ公式 前回ここで「私事だが・・・」と北極に行くことを記した。 で、目的を果たし先日帰国した。 その話を友人にしたら 今回の作品を観ることを勧めてくれた。 2020年公開の過去作品なので もちろんいつもの試写ではなくAmazon videoの配信で鑑賞。 コロナ禍の真っ最中の時期だから見逃した方も多いのでは、 良ければ皆さんも配信でご覧いただけますので

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「ゴッドランド/GODLAND」

https://www.godland-jp.com/ デンマークとアイスランドの映画。 北欧好きの僕としては それだけで魅かれてしまうの、 と書きつつ デンマークもアイスランドの映画も 今まで見たことがなかったので これが初体験、で、その体験は 十分すぎるほどの重さだった。 アイスランド は第二次世界大戦前まで 長い歴史の中で周辺国の植民地で 最後は北欧の王国デンマークに支配されていた。※ この地にデンマークから若き牧師である主人公が教会建設というミッションで 辺境の村に送られるところから物語は始まる。 過酷な自然を乗り越え目的地を目指すだけでなく 領主国デンマーク嫌いのガイドとの対立、 事はそう素直には進まない。 自然の猛威:素晴らしい自然 神を愛する立場:地域的、民族的な偏見 それを象徴するかの如くの言語の溝(デンマーク語とアイスランド語は全く違うとこの作品で知った)。 これらが入り交じり ストーリーとは一言で言い表せない多くの混沌、映像の世界をベースに そこに 「人間」という神秘を見事に表現した。 ・・・こうした内容が 一般的にポピュラリティーを得られるか難しいと思うが 観た後に心の中にドシンと重いものが残ることは確かだ・・・ と、 「何書いているの?意味わからなーーい??」 と批判されるのはわかるが それしか言いようがないんだ、 「見ればわかる」という禁句さえ浮かんでしまう、です。 そしてそして 製作陣が揺るがずに作る視点を定めた結果だろう、 監督・脚本はアイスランド生まれでデンマークで育った気鋭フリーヌル・パルマソン、 2022年・第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品されたほか、世界各地の映画祭で数々の賞を受賞した。 主演の牧師役にデンマーク系アメリカ人のエリオット・クロセット・ホブ 気難しいガイド役にアイスランド映画の名優イングバール・E・シーグルズソン ともかく 監督はじめ皆僕には初顔だった、で、皆素晴らしかった。 特にイングバール・E・シーグルズソンには惹かれましたな! ※調べてみた: 13世紀以降はノルウェー(1262年 - )およびデンマーク(1397年 - )の支配下に置かれる。 デンマーク王国は1550年にアイスランドにルター派を強制的に導入。 1918年にデンマーク国王主権下の立憲君主国、アイスランド王国として独立(同君連合)。 第二次世界大戦でデンマークがナチス・ドイツに占領(北欧侵攻)。 1944年6月17日に共和国として完全な独立を果たした。 PS 私事だが 近々、北極に行くので、 アイスランドよりさらに北の北極点直近のスバールバル諸島、 この作品の映像はまた格別の思いが浮かんだのだと思う。

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「RHEINGOLD ラインゴールド」

映画『RHEINGOLD ラインゴールド』公式サイト https://www.bitters.co.jp/rheingold/# アキン監督にまたやられてしまった、 これは日本でもヒットするよ、きっと。 深く刺さった! まずよくこの題材、事実を映画にした、出来た という時点で勝負の半分は決まったと思うし それを一級のエンタテインメント作品に仕上げる手腕、参りました! ドイツのクルド人移民の貧困の子供が ・・・実はアラブの世界では上流のクラシック・マエストロの家庭に生まれたのだが イスラム世界の混乱でドイツへ逃れ移民となったんだが・・・ ストリートで生き抜いていくためにボクシングを覚え 自然、麻薬の密売、さらには金塊強盗、投獄 更にさらに、シリア政府に拉致されての拷問からドイツ監獄への移送と ジェットコースター並みの流転の人生。 投獄、有り余る時間を父親からの助言で音楽制作へと充てる。 ここで生まれたラップ作品が現地ドイツで大ヒットへと。 もちろんストーリーには多くの装飾がなされているとは思うが 根本的なところの実話、唸りますよ。 監督のファティ・アキン/Fatih Akin 1973年8月25日、ドイツ、ハンブルク生まれで 自身の両親はトルコ移民。 僕としては 第66回ベネチア国際映画祭審査員特別賞を受賞した 「ソウル・キッチン」(09) ソウル・キッチン : 作品情報 - 映画.com https://eiga.com/movie/55195/ で頭を後ろから叩かれ カンヌ国際映画祭で主演女優賞、ゴールデングローブ賞外国語映画賞を受賞の 「女は二度決断する」(17) 女は二度決断する : 作品情報 - 映画.com https://eiga.com/movie/87200/ で前頭葉を叩かれた経験から 本作では 真正面からパンチを食らった感だ! 本国ドイツで1000万ドルの興行収入を上げた大ヒット作の日本上陸 普段はラップに疎い、というか意識的に距離を置いている僕だが 本作のテーマ、実際にドイツでヒットした曲は (僕からするとよくあるドタバタトうるさいラップ音楽ではなく) メロディーも美しく、かつ彼らのルーツでもあるアラビア音楽のエッセンスが光る 素晴らしい「音楽」だ、と言いたい! 資料によると 主演のエミリオ・ザクラヤ/Emilio Sakraya は子供のころから活躍する役者で、 かつミュージシャンでもあり 映画内でも素敵なラップシーンを演じている。 そのほか、 元売春婦の女性ラッパー、シスター・エヴァを本人が演じていたり、 ラッパーSSIOを若手ラッパーのイーノが演じ、リアルラップを披露している。 ヨーヨー、ミゴタエアルヨー 尚 タイトルの 「ラインゴールド」とは ワーグナーの『ニーベルングの指環』4部作の「序夜」のことのようです。 2024年3月29日 公開

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「パリ・ブレスト 夢をかなえたスイーツ」

映画『パリ・ブレスト 夢をかなえたスイーツ』公式サイト https://hark3.com/parisbrest/# 綺麗な映画。 お菓子って綺麗だったんだなとあらためて気づかせてくれる作品。 ストーリーはフランスの貧しい青年が パティシェとして世界大会で栄誉を勝ち取る 事実に基づいた物語。 それは 単に職人としての成功物語ではない。 母親がアラブからの移民で 過酷な環境下で育ったにもかかわらず 里親の愛情、パティシェのシェフや同僚に支えられ 才能を開花させる。 作品はこうしたヒューマンストーリーをベースに 芸術的美しさを表現した「お菓子」の映像 この2つの要素が溶け合って 独自の映画の世界を作り上げている。 表題の「パリ・ブレスト」とは フランス菓子の一種であるという事をこの映画で知ったが 改めて調べてみると??? 「パリ・ブレストで決まっているのは、リング状のパイ・シュー菓子というだけで、細かい制作方法は決まっていない。」 とあるのだが 映画の中ではリング状のパイシューは使っていないし??? パリ・ブレスト - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%AA%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%88 まっ、いいか。。。 ともかく 本作、原題は「A La Belle Etoile(直訳:美しい星)」 素敵じゃありませんか、 お菓子が「美しい星」であり 苦行の末、我が道を勝ち取った若者が「美しい星」なんだということを 本作は謳ってくれているんだ。 監督はセバスチャン・テュラール/SEBASTIEN TULARD SFXアニメーターとしてキャリアをスタートさせ 2015年に監督した短編映画『1950 DA』で、ヒューストンのNASA映画祭、ロサンゼルスのハリウッド短編映画祭での受賞。 また多くのアーティストのミュージックビデオなどを担当。 アラブ系の主演を演じるのは リアド・ベライシュ/RIADH BELAÏCHE アルジェリア出身、フランス在住で 映画というよりYouTube動画などで活躍し 自身も登録者数142万人のチャンネルを運営 という ・・・監督も主演も僕は知らなかったし・・・ 活動する場も映画本来の場というより 新しい市場であり 新手というか次世代の胎動を感じさせる。 ・・・・でもさぁ いつからケーキやお菓子がスイーツで お菓子職人をパティシェと 呼ぶようになったのか? 雑学として知っておきたいなぁ。。。 2024年3月29日 公開

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「テルマ&ルイーズ 4K」

映画『テルマ&ルイーズ 4K』オフィシャルサイト https://unpfilm.com/thelma_louise/ リドリー・スコット監督の1992年アカデミー賞作「テルマ&ルイーズ」 監督自身による4K映像でのデジタル修復版、レストアで再公開 まっ、この作品に関して 僕がいまさらどうこう書くのはなんですので・・・ デジタル技術によるコンテンツ周辺の話題は 去年のビートルズの Now and Thenを筆頭に 昨今話題が豊富です。 音楽のリマスターに関してはいろいろな意見が聞こえるけど 映画のレストアに関しては反対する人はまずいない(と思う)かなと。 僕自身の経験では 先日、黒澤明作品の「生きる」をこれで観た。 生きる(1952) : 作品情報 - 映画.com https://eiga.com/movie/4446/ ずいぶん前になるが、レンタルDVDでオリジナルを観た時は 映像が古いのはまだ我慢できたとして ともかく音声がひどくて、役者が何を言っているか大げさではなく4分の1ぐらいはわからなかった (特に伴淳三郎はもともともじゃもじゃセリフを言うので聞こえない筆頭でしたが、、、でも、作品としてのすごさは伝わってきたが)。 そして今回 改めて音声も修復されたものを観たら その感動は何倍ものものだったと。 こういう風に デジタル化による秀作のレストアは正に歓迎されるもの。 ・・・・と言っても、何でもかんでも、そうかとはいかないと思うけどね。 2024年2月16日 公開

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「落下の解剖学」

映画『落下の解剖学』公式サイト https://gaga.ne.jp/anatomy/ ミステリー小説と 裁判小説とを下地にした舞台演劇 というのだろうか、 僕にはそう感じた。 フランスの山中のロッジで起こった 転落事故?事件? 被害者で夫の妻が容疑者として逮捕され 現場の証人は視覚障がいのある11歳の息子だけ。 果たして、事件なのか、事故なのか、はたまた自殺なのか。 場面はほぼこの現場と、審理が行われる裁判所。 見ていて、あの名作 シドニー・ルメット監督 ヘンリー・フォンダ主演の「12人の怒れる男」 十二人の怒れる男 : 作品情報 - 映画.com https://eiga.com/movie/15997/ を思い出した、、、ちょっと言い過ぎですな。 まっ、それはそれとして 本作のポイントは時代性なのか「国」だと僕は思う。 共に小説家であるドイツ人の妻、フランス人の夫 ドイツでの苦しい経験からイギリスにわたり夫と出会い わけあって夫の国フランスの、しかも人里離れたロッジに移住する。 子供が生まれ、それだけの理由ではなく 家庭内での会話は英語という なんともグローバルというか、、、、。 そして、妻の裁判ではフランス法廷で当然フランス語での審理。 妻は時々、英語での発言を求めたり。 審理の行方を楽しむのが本筋なのかもしれないが 僕はどうしてもこの、国籍、言語にかかわる伏線に(ではないかもしれないが)は惹かれてしまった。 そして 視覚に障がいのある息子がカギを握る、そこには「言葉」しかない。 監督はジュスティーヌ・トリエ 長編4作目である本作で 2023第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で最高賞のパルムドールを受賞したということだ。 主演はサンドラ・ヒュラー。 (すみません、二人とも知らなかったし、資料がなかなかなく、紹介に至りませんでした) 2023年2月22日 公開

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「コヴェナント/約束の救出」

映画『コヴェナント/約束の救出』公式サイト - 2024年2月23日公開 https://www.grtc-movie.jp/ アメリカが犯した国家的契約違反。 これは一級の作品。 コヴェナント:契約 という意味。 本作品は アフガニスタン戦争の戦闘を劇的に描いた映画ということ以上に アメリカが犯した国家的契約違反を 痛烈に、過酷に訴えた力作といえる。 アフガン戦争でアメリカ軍は約5万人の現地通訳を雇っていた、 このことは僕を含めて多くの人は知らない事実だった。 しかも彼らへの雇用条件にはアメリカの永住ビザ発給という契約が含まれていた。 2021年のアメリカ軍全面撤退時に取り残されまいと命を懸けて旅客機にしがみついていた人々のニュース映像を私たちも見た。 そう、彼らの大半がアメリカ軍に協力したアフガニスタン人であり、その多くにまさに通訳契約をした人々が含まれていたんだろう。 事実その後タリバン政権樹立後に300人の通訳が処刑され、今でも数多くのこうした人々が命かながら逃避の生活を続けているという。 本作は そうしたアフガニスタン人通訳とアメリカ軍人の友情、絆を描いた。 ミッションを遂行すべく現地に向かったジョン・キンリー、彼らの通訳として雇われたアーメッド 待ち伏せに巻き込まれて生死をかけた逃亡、そしてそれだけでは終わらない。 これ以上書くと観る人の興をそいでしまうのでストーリーはここまで。 監督はイギリス出身のガイ・リッチー 長編処女作の犯罪群像劇「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」(98) 続く第2作「スナッチ」(00)にはブラッド・ピット、ベニチオ・デル・トロら大物俳優が参加して話題を呼ぶなど、 スタイリッシュなアクションが評価を得た。 僕としては 「シャーロック・ホームズ」(09) シャーロック・ホームズ : 作品情報 - 映画.com https://eiga.com/movie/54174/ 「キング・アーサー」(17) キング・アーサー : 作品情報 - 映画.com https://eiga.com/movie/83996/ あたりが印象深い。 そうそう あの女性歌手マドンナの元夫ということで、私生活でもなかなかハードな人のようだ。 主演のジェイク・ギレンホール 僕の印象では何でもこなす演技派。 事故犠牲者の事件発生8分前の意識に入り込み、その人物になりすまして犯人を見つけ出すという 「ミッション:8ミニッツ」 ミッション:8ミニッツ : 作品情報 - 映画.com https://eiga.com/movie/56216/ (この作品 余談だが監督のダンカン・ジョーンズは あのデビッド・ボウイの息子だったと先ほど知った。。。) 地球規模の大災害を描いた「デイ・アフター・トゥモロー」 デイ・アフター・トゥモロー : 作品情報 - 映画.com https://eiga.com/movie/1047/ そしてなんといっても2006年アカデミー賞作品賞の カウボーイ同士の愛を描いた「ブロークバック・マウンテン」では助演男優賞にノミネート 本作でも大いに満足できる演技だといえる。 そして 助演のダール・サリム 1977年、イラク生まれ。デンマークに移住した経歴で 役者としてはあまりなじみがないが リドリー・スコット監督の『エクソダス:神と王』(14)はじめ多くの作品出演しているようで、 本作が彼の代表作になると僕は思う。 本年早くも 極楽映画大賞ノミネート作。 2024年2月23日 公開