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夏の夜、“切なさ”の理由。「旅と旅行」のちがい。“1人”という贅沢。

8月も後半に入る。夜。切ない風がふいている。そう、夏の夜は言おう無しに、“切ない”。毎年毎年、それはもう小学生から現在にいたるまで。夏の夜は、“切ない”。

なぜ、“切ない” か、考えてみた。「プラマイ0」だからだ。気温と体温。夏の夜は、暑すぎず、寒すぎず、ちょうどいい。ちょうど良すぎる。すると、「あっちぃなぁ〜」とか「ザムイッ」という感覚が一切なく、「本来、考えなくてもいい思考」が頭の中に流れこんでくる。

この「本来、考えなくてもいい思考」こそ、「切なさ」の正体だ。生きるか、死ぬかの瀬戸際であれば、まぁ、必要ない。しかし、“生きるか、死ぬか状態” がそうそう起きない日本で生きている以上、「切なさ」とうまくつき合うことは、ある意味、日本へのリスペクトなのだ。

というわけで! 昨日中止になりました、たまがわ花火大会で打ち上がらなかった花火よ。お前の意志を私が引き継ぎ、ここに咲かせよう。夏の想い出。

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大学生。中高と描いてきたエロ同人を、「こんなん描いてたら、モテなくなる!」ってのを理由にペン置き、メイン趣味をバイクにした。もちろん、バイクにまたがったからって、モテないんだけど、「モテない大学生」に「本当にモテる方法」をレクチャーしたところで浸透しない。とにかく夏は、中古のHONDA STEEDという、足伸ばして乗るアメリカンバイクにまたがり、1人旅ツーリングによく出ていた。

ちなみに、ツーリングは「ツアー・イング」の意味。その上で、私は「1人旅」にこだわってきた。

「旅行」と「旅」は異なる。ちがいはなんだろう。

私は、「明確な目的があるか、ないか」だと考える。「旅行」は、「ここに行って、これをする」という目的がある。しかし、「旅」は、「この辺りに行ってみようかなぁ」とか「こんなことしてみようかなぁ」といった、ざっくりとした予定のみで、それが真の目的ではない。「1人旅」、そして、「ツーリング」は、「出発地からだいたいの目的地までの、『移動途中』で起きること、感じること、考えること」こそ、目的であり、醍醐味なのです。

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大学2年の夏。昨年の夏と同じく、彼女も友だちもいない僕は、1人でツーリングに出ていた。テントと寝袋をバイクにくくりつけて、だいたいの目的地を決めて、ぐるぐる回る。そんなスタイル。だいたい2週間くらいかな。今回は行き先は、“東北”。それだけだ。あとの目的は、何もない。

バイクの良さは、外の空気と一体になって、風を感じること。音を感じること。その土地の空気、におい。すべて、「移動中に味わう」ことができる。どうだい? 贅沢だろう?

東京から山形に向かい、秋田、青森、岩手と右周りに上り、下ってくる。いつものことだけど、テント、寝袋生活が続くと、旅の終盤はかなり疲れがたまる。僕は宮城県内の国道を走っていた。夜9時前。その日は、ぶっ続けで移動していたこともあり、眠気もあった。

朦朧とする意識の中、本来、右折をしなければならない道を間違え、直進してしまった。

「あぁー! やっちまった!!!!!」

車線が何本もある大型国道は、道を間違えると非常にめんどくさい。何メートルも、何キロも走って、軌道修正しなければならない。疲労とイライラ。このまま走っていると、ちと危ない。ふと目に入った、国道沿いのミスタードーナツ。ここで休憩しよう。

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「いらっしゃいませー」

旅途中の小汚い格好で入店したのにもかかわらず、店員の女の子がやさしく、それはそれは、かわいい声で挨拶をしてくれた。黒髪ロング、色白。おめめがぱっちり。

「(……ひょっとしてこの子、オレに気があるんじゃないか??)」

人との会話に飢えていると、愛想良く挨拶してくれただけで、この考えに至る。本当に危険。あぶない、あぶない、この子は仕事をしているだけだ……と気を取り直し、エンゼルフレンチとホットコーヒーを頼む。

「あのー、さっき、大きなバイクに乗っていた方ですか?」
「えっ? あっ、はい、はい!」
「そうなんですね! ここから見えたんで」
「あっ、ツーリング中で、東京からきまして」
「えぇ! 東京から! すごい!」
「あはは、いや、どうも」

まっとうな女性との会話が、何日間もブランク状態での声かけられ。ドライアイスに熱湯をかけるようなもんだ。ブクブクブク。あわあわあわ。そりゃあ、キョドルだろう。カタカタとトレーをならしながら、席につく。ちょっと女の子が見える位置を確保。どうだい? 気持ちわるいだろう?

エンゼルフレンチをもぐもぐ食べながら、3分前の出来事を思い返す。

「いくら店内が暇だからって、客にあそこまで親しく声かけするか?」
「いやいや、それがこの土地では普通なのかもしれない」
「ん〜、普通にも、普通なりの基準があるから、オレはその基準値の合格ラインを飛び越えたというわけか」
「あと、かなり会話への食いつきがよかった(気がする)し…」
「ひょっとして、ひょっとしない? ひょっとして……」

とにかく眠い。眠い中での考えは、答えには辿りつかない。ウトウトは、気づけば、着席突っ伏しスタイルでの居眠りに入っていた。

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…………ハッ。寝てた。何時だ? 身を起こし、カウンター上の時計を見る。10時2分。さっきの女の子がいない。これは……10時上がりのバイトだな。高校生がマックス働けるように、夜10時を夜勤/深夜バイトの切り替えにしている店が多いことを知っていた。バイト上がり、ということは、もうすぐ店の外に出てくる!?

偶然(を装って)、店外に出るタイミングが同じであれば、またさっきの会話の続きができるかもしれない。いや、しなくては。彼女になるかもしれないし! 僕の勝手な妄想は、バイトと客との会話から、東京〜宮城の遠距離恋愛、という飛び級革命が起きていた。

いっそいで準備をし、小走りで店の外に出る。

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……あぁ! 間に合った! さっきの子がいた! その横に、オレンジ色の髪の毛をしてらっしゃる、“彼氏らしき男” もいた!

僕は小走りの勢いをとめず、バイクのもとにかけより、またがってエンジンをふかす。そのまま、国道へGO。

「僕に気があるのでは」と勘違いしていた相手には、バイト終わりに店まで迎えに来る彼氏がちゃんといて、その男がこっちを小汚い目で見てくる感じも、女の子が苦笑いで見てくる感じも、自分の勘違いも、そもそも、大学2年の夏っていう、めちゃくちゃ男女でエンジョイすべき時間に、1人で夜な夜な知らない土地を走ってる今も、全部ひっくるめて “切なく” なって、大声で「GOING STEADY」を歌いながら、走った。とにかく、走った。地図なんか、見なかった。

そもそも。そもそも、こんなにも “切ない” のは、夏の夜のせいだ。ちくしょー! でも、気持ちいい。気持ちよすぎる。大好き。ゆえの、上かぶせの、ちくしょー!!!!!

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あっ、夏の想い出、以上でーす。夏がくる度、思いだしまーす。ダサい自分。不甲斐ない自分。でもでも、そんな自分もひっくるめて好き。「リアルに体験したこと」と「想い出」は、「今の自分」を構築する、マストな要素。

おい、1人で切なく過ごしている、そこのお前! その “切なさ”、将来、何かしらの “武器” になるから! ん? 何の武器かになるか? 知らん! 自分で考えろ! その考える時間をじっくりと確保できるのも、1人ゆえ。贅沢だなぁ、こんちくしょう。

ってか、日本にいて、日本人として生きているだけで、それはもう、この上ない贅沢だと、最近考えているんだ、ぼかぁ。

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