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木綿は綿の花から

麻は木の繊維から

毛は羊やウサギの毛からつくるもの

綿も麻も毛も

つくりだすために

生き物のいのちを

根っこから

なぎ倒すことはない


けれども絹は違う

蚕が作る繭は

蚕を包んだまんま

火にかけた熱湯に浮かぶ

蚕のいのちは

人によってもぎとられる

絹は蚕のいのちの糸だ


持てば重く纏えば軽い絹と

持てば軽く纏えば重い化繊

昔の人はよく言ったものだ


蚕のいのちを孕んでいる絹の着物は

畳んであると重たく感じるのに

絹ずれという言葉の通り

身に纏えばひらりとかえり

人の動きに悪戯することはない

いのちをとられてなお

人を思いやる蚕の優しさ

石油でできている

化繊には

到底真似できない

恨みごとを言わない

蚕がはこんでくれる絹は

美しい魂で輝いている



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