SAKE DIPLOMA 試験対策を「超える」対策 その5 【日本酒における水】

こんにちは。

「あと」です。

今回は、日本酒と水についてです。

いきなりですが、日本酒の成分のうち、水が占める割合はどのくらいだと思いますか?



正解は、80%です。

水を知れば日本酒の事は80%分かったも同然、とはいかないのが難儀な所ではありますが、日本酒に水は欠かすことのできない要素であると言うことはできるでしょう。

今回も、SAKE DIPLOMA認定試験の教本をなぞりつつ、日本酒と水について考えていきたいと思います。


1.雑誌『サライ』2021年3月号 大特集 「日本酒」と名水を巡る旅 を読む

新型コロナウィルスの蔓延に伴い、我々の生活にはマスクが欠かせないものとなりました。外出時にはマスクの着用が必須となったことで、それにあわせてマスクケースも持ち歩いているという方も多いのではないでしょうか。

そんな中、とても可愛らしい猫の柄が入ったマスクケースが付録となっている雑誌がありました。それが、表題の雑誌『サライ』の2021年3月号。その可愛さに誘われて、お読みになられた方もいるのではないでしょうか。

付録のマスクケースの可愛さはさておき、当号に組まれた特集記事は、水という観点から日本酒を掘り下げたものでした。示唆に富んだ素晴らしい特集記事だったので、今回日本酒と水について考えていくに当たり、まずは『サライ』の記事の中から参考箇所を取り上げていきたいと思います。

特に勉強になったのが、地質学者の久田健一郎さんと唎酒師のあおい有紀さんによる巻頭対談『「水の生い立ち」を知り日本酒を楽しむ』でした。その素晴らしい対談内容は本誌を参照していただくとして、ここでは特に久田さんの2つの御発言を取り上げます。

まずは、水の硬度に関する御発言です。

「水は、雨が河川や地表から岩盤を通って滲み出したものです。そのため様々な鉱物の成分が水に溶け出し、水の硬度を左右します。たとえばフランスのパリ盆地周辺や地中海沿岸などには石灰岩の地層や岩石が多く分布しています。これはサンゴ礁が隆起したもので、カルシウムとマグネシウムの塊のようなもの。その地の水の硬度は大変高くなるわけです。」

冒頭の、「水は、雨が河川や地表から岩盤を通って滲み出したもの」という発言。当たり前のようでいて忘れがちな、本質的な部分を教えられます。つまり、水には土壌の成分が溶けだしているんですね。土壌が違えば、水質も変わる。これは忘れないように意識しておきたいところです。

フランスの例が挙げられたのち、次の発言では日本に関しての言及がなされます。

「硬度を決定するもうひとつの重要な要素が、水が地表を流れている時間や地下に溜まっている滞留時間の長さです。日本は島国であり山国で、河川は勾配が急な川が多いのです。かつて富山湾の3000メートル級の立山連峰から日本海へ一気に流れ込む常願寺川を見たオランダ人土木技師は、「これは川ではなく滝のようだ」と驚きました。急勾配の川は短時間で流れるため、岩石の成分をあまり取り込まず軟水になります。一方ゆったりと流れるヨーロッパ大陸の河川は硬水に。」

大まかに言うと、土壌の成分を多く取り込んでいれば硬水、少なければ軟水ということになります。

基本的な事ではありますが、こうした土壌に関する知識を念頭に置いておくと、日本酒における水の役割の理解を助けてくれることでしょう。

特集記事では、他にも水を切り口に、美味しいお酒が数多く紹介されています。雑誌『サライ』、ご興味のある方は是非ご一読下さい(出版社の回し者ではありません)。


2.宮水と御香水、そして三浦仙三郎

日本酒を造る名水としてまず名前が挙がるのが、灘の宮水と伏見の御香水でしょう。教本でも、この2つは「灘と伏見の水」という題で、独立して取り上げられています。

この2つが名水と言われるのも、水源地の土壌が豊かであるからです。灘の宮水が湧出するは 兵庫県西宮市の西宮神社周辺は、川や海も近く、加えて六甲山系からの伏流水の影響も受ける肥沃な土壌です。4本の河川が運ぶ土砂からなる扇状地で形作られる京都盆地に位置する伏見も、盆地を囲む丘陵部に振る雨が豊かな伏流水となったものであることが教本でも紹介されています(P.135参照)。

そして、灘の宮水は硬水、伏見の御香水はやや軟らかいものの中硬水に分類されます。硬度の差もあって灘の酒は男酒、伏見の酒は女酒とも呼ばれています。ただ、どちらにせよ古くから名醸地として栄えた灘と伏見で使われた水は、軟水が主な日本としては珍しく、硬水であったということになります。

この差にいち早く気付いたのが、当note『その2-4 【日本酒の歴史】』でも少し触れましたが、広島県の蔵人の方々でした。先達となったのは、これまた当note『その3 【吟醸酒の歴史と現在】』でも取り上げた、三浦仙三郎でしたね。硬水で醸される灘の酒の真似をしても、軟水の広島県では上手くいかない。軟水の地には軟水の地に合った酒造りがある事に気づいたのでした。それが、いわゆる軟水醸造法。吟醸酒へとつながっていく流れは、前掲のnoteで取り上げた通りです。

宮水から造られる男酒。御香水から造られる女酒。そして、軟水醸造法で造られる吟醸酒。

水の違いが、酒の多様化にもつながっていることがお分かりいただけるかと思います。


3.有効成分と有害成分

最後に、SAKE DIPLOMA試験対策をする上でも、個人的に紛らわしいと感じる点について触れておきます。

それは、酒造用水中に含まれる有効成分と、望ましくない成分(有害成分)の判別です。

最も有害とされているのが、鉄です。これはイメージがつきやすい。マンガンや重金属類も同様。また、マグネシウムやカルシウムは、これも何となくイメージ通りですが、有効成分とされています。

そして、ここからが紛らわしいのですが、マグネシウムとカルシウムの他にも有効成分の代表として挙げられるのがリンカリウムです。

リンは、化学肥料や洗浄剤にも使われていることから、何となく水中にあると有害なような気がしてしまうのは私だけでしょうか。カリウムも同様で、特に「硝酸カリウム」などと書かれてしまうと、有害感MAX!!のように見えてしまう・・・。しかし、水質によっては硝酸カリウムをあえて添加する場合もある程、これらの物質は有効成分とされているのです。

こういった漠然としたイメージや用語の語感などは、学習を進める上で大いに邪魔になります。自分の認識の癖を掴んだ時は、早めに対処しておきたいものです。


注)私は、まだまだ日本酒を勉強したての身であります。記載事項に関しては、自らのSAKE DIPLOMA認定試験合格の武器になったことは事実ですが、専門的見地からすると誤りであることも多々あるかと思います。その際は、ご指摘を頂けると非常に助かります。







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