スクラムの構造とそのメカニズム#6

こんにちは、あとうです。
雨も降り始め、梅雨の季節が来ました。

トップリーグが終わり、大学の春季大会、各県の高校ラグビー大会(高校総体、各地域の大会(ex.関東大会)、そして日本代表戦も開催されます!

そうこうしていると菅平の季節がやってき、あっという間に本番がやってきますね。こうして1年中ラグビーを楽しめるようになった環境に感謝です。

本投稿も6回目を迎え、静的構造(動きがない)の話から、動的構造(動きが加わる)の話にシフトしてきています。

前回までの話を以下に要約します。
1.スクラムはアーチ橋である → 静的構造
2.スクラムは回転するもの  → 動的構造

本日は2の点を掘り下げて、スクラムが真っすぐ押せるようにはどうしたらよいかをお話ししたいと思います。

前回はスクラムが回転する理由をお話ししました。
これが、回転せずにまっすぐ押すにはどうしたらよいのか(逆に返せば、押されずに済むのか)を解説します。

スクラムはバインドの手が同じ手であれば回転する力が打ち消されて、安定します。しかし、ルールでは逆の手でお互いをバインドしなければならない為、首と首が重なる点を中心に左手でバインドした側(1番)が時計回りに、右手でバインドした側(3番)が、反時計回りに回転するように力が加わります。※以下の図を参照。(手は省略)

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これは自然な姿です。
ではこれを防ぐには、どうしたらよいのか。

フロントローは3人一組でですので、この3人で回転しないように押す方向をコントロールする必要があります。

スクラムが回転するのは、3人で組んでも同じです。

スクラムのコーチングを受ける際には肩のラインを真っすぐにしなさいとよく言われますが、これはスクラムを組む前の話であり、バインドをしてしまうとこの形は崩れてしまいます。
従って、いくら肩のラインを真っすぐ揃えてもスクラムの回転を抑えることはできません。

この回転する力を活用して押す方向を揃えることが大切なのです。

スクラムは構造上1番側から回転させることが優位にできています。
1番側の左側はフリー(相手の肩がない)な為、3番の下側に潜って3番のセンターラインを横方向から力を加えることができるからです。

なので、エンゲージ(組んだ直後)までの一連の肩のラインは以下のようになっています。
〇は味方同士のバインド、△は相手をつかむことができるフリーな手を表しています。

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エンゲージ直後の3番の方は右肩が若干前に出ているためにスクラムの内側向きにならざるを得ません。しかし、1番側は常に左肩が前に出ているため、潜り続け回転させようすることができます。

この後は2通りのパターンに分かれます。
Aパターン:3番が相手に組み勝った場合
Bパターン:1番が相手に組み勝った場合

Aパターンの動きを見ましょう。

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3番が1番と2番よりも前におり、かつ内側に押せる形になっています。この場合、1番と2番のバインドが中心点となり、3番側から大きく回転するようになります。
この際、1番側が前に出ることができないと、スクラムは単純に回転し、ホイールで組みなおし、もしくはNo.8 が回転側にボールを持ち出し攻撃的に不利になります。
その為、2番は3番が回転してきたら、赤丸の点を前に押し出し2番と3番のバインドを回転の中心点に変更する必要があります。
結果、3番は内向きからスクラムの外向きに肩のラインを変更し、1番や2番からくる力を束ねる役割を担います。そうすると、スクラムは真っすぐ押せるようになります。

では、Bパターンを見ましょう。

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Aパターンの逆ですね。
1番が組み勝っていますので、1番が2番や3番より前にいます。従って、回転の中心点は2番と3番のバインドになります。1番と2番が前にいますので、1番側から前側に出てくる力が強いです。この際、3番は無理して前に出るのではなく、内向きに力を加え続けます。相手の1番も同様に回転させようと横から力を加えてきますが、ここは耐えてください。
1番側から回転が始まると、相手の1番と2番のバインドが崩れ始めますので、そのタイミングで力を外向き(肩のラインを外向きにします)すると、中心点が前に出てくる為、スクラムは回転せずに右側に真っすぐ押すことができます。

回転の中心点がどこにあるのか、そのポイントをどのように動かしてやると真っすぐ押せるのか、ご理解頂けたと思います。
※YOUTUBEのスクラム特集をこのポイントで見て頂ければ理解が深まるかと思います。

まとめ
スクラムは回転するもの。3人で組む時は、回転する力を利用して真っすぐ押すことができる。
その為にはスクラムの肩のラインと回転の中心点があることをまず理解する。さらに、1番が組み勝った時と3番が組み勝った時で、中心点の位置が変わる。中心点の場所を変える、または中心点を前に動かしてやることで、スクラムは右方向に真っすぐ押すことができる。

次回は5対5で組む時のポイントをお話ししたいと思います。
皆様のスクラムコーチングにお役に立てれば幸いです。

ご意見、ご感想を頂ければ幸いです。


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